村を燃やす

丸山るい・岡本真帆による短歌ユニット / @mura_moya

村を燃やす 自選短歌 / 丸山るい・岡本真帆

村を燃やす 自選短歌 / 丸山るい

揚々と電話を切ってそのあとはさみしいいかだとなって過ごした

真夜中を素手で歩めば向こうからけものそれからおおきなけもの

戸外は春 その明るさに騙されて百葉箱を開けてしまった

あれはダリ、あれはカトレア あと五百メートルほどで火葬場に着く

真っ青なれんげあかるい中華粥もうなつかしい事件の話

一度だけ抱きしめられて内臓の位置はまるごと変わってしまう

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村を燃やす10-12月/「振り返す手」「ラットレース」

振り返す手 / 岡本真帆

いつの日か殺人犯になったとき使われそうな免許の私

ハンガーにコートを掛けるそれくらい些細なことでほしい肯定

夜は更けて時間は止まる凍てついた明治通りにタクシーは来ず

窓の外みぞれ交じりの雨降って誰もが外へやがて出て行く

すいません、開いてますよと地下鉄で声をかけられ振り向けば羽

落ち着いた声のあなたがうれしくて思わず話しかけた留守電

犬 朝食 同級生の愛娘 

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村を燃やす 9月 / 「テルミーワンダー」「星のかたち」

テルミーワンダー / 丸山るい

なんとなくすべて終わりになりそうな朝に輝く蚊柱がある

共有部みたいなこころ次々とあらたな土足を迎え入れては

ゆるやかに裾はさまれていたことをプラットホームに着いて気がつく

ゲオだってつぶれてしまう駅にある風土と呼べるもののいくばく

親指と小指でつくるコンパスが遥かな島の長さを測る

すばらしいミモザ抱えたなら走れ少女漫画のト書きのように

家猫よすべて飛び

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村を燃やす 8月 / 「ジェネリック夏休み」「化石づくり」

ジェネリック夏休み / 岡本真帆

遠雷の夢が終わって寝返りをうてば私は犬を飼ってる

透きとおる水を揺すって水出しのパックは底へ沈む静かに

すぐに手を探して握るひとの手をうなずきながらゆっくり解く

生卵まただめになる さびしいと言わない身体また硬くなる

お風呂から10分くらいまだ歩くけれど4人はパジャマになった

ぺんぎんのかき氷器を抱きしめてバスで眠れば会える気がする

水たまり何度小石

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村を燃やす 7月 / 「手紙」「桃」

手紙 / 丸山るい

ため息の距離であなたと暮らしたい奇数の花を花束にする

暗緑にレイヤーされる雨だけが視えるつめたい土曜日の窓

こんなにも湿度の高い七月よ延滞のイラン映画を返す

百年の遅配の果てにやってくる暑中見舞いを誰も読めない

猫の毛がかすかにそよぐ真夜中にきみが延伸するプラレール

部屋のもの武器と以外に分けてゆく靴べらあたりでつかれてしまう

開かれず差し戻された封筒のように真白

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