見出し画像

ラグビー#15|プレミアシップを制覇したキッキングストラテジーを調べてみた!

2021年のプレミアシップを制覇したのは、Harlequins(以下クインズ)。

ラグビー界ではとても有名で、歴史のあるチームです。


クインズ対グロスターの試合を見ていたら、キックを使ってボールを再獲得し、TRYをしたシーンがありました。


そのシーンがこちら。

状況はハーフウェイラインでの7Manラインアウト。
クインズボールです。
(4色ジャージがクインズ、赤ジャージがグロスター)

画像1


グロスターの15・11番が、深めの両サイドに張っていました。

クインズ10番マーカス・スミスの、精度の高い両サイドへのキックをケアしてだと思われます。


マーカス・スミスはディフェンスラインの裏にスペースがあると判断。

ショートパントを上げ、クインズの12・13番がチェイス。

ボール再獲得、リゲインに成功しました。

画像2


グラウンド中央付近にできたラックから、マーカス・スミスは右サイドにスペースがあるのを見つけます。


右サイドにアタックして、そのままTRY。

画像3


1stフェーズからスペースを見つけてキックを使い、再獲得。

2ndフェーズでさらにスペースへボールを運び、TRYまで。

いいトライだな〜。何て思って見てましたが・・



待てよ・・

なんでクインズはこのようなアタックの配置なんだ?

グロスターのディフェンスは、何でこんなに寄ってしまったんだ??




いいトライには、何かしらの要因があります。

僕なりに、そこを少し紐解いてみました。


なぜキックを使うのか

キックを使う理由は、このような感じでしょうか。

・空いているスペースへボールを落とす
・自陣から、大きくエリアを挽回する
・コンテストキックでリゲイン(再獲得)を狙う

まだ色々あると思いますが、こういう理由もあると思います。

・相手のディフェンスを乱し、崩す


ボールを再獲得することが前提となりますが、キックを使って相手のディフェンスを崩すことができると思います。



セットピースからのディフェンスって、しっかり整備されていますよね。

正確なキックを使い、そのボールを再獲得。
相手ディフェンスにプレッシャーを与えることで、少しカオスな状態に持ち込むわけです。

イメージで言うと、机の上にきちんと並べている駒があったとして
机を横から『ドンッ』と叩いて、駒をズラす感じでしょうか。

駒がズレた分、ギャップやスペースができます。
そこに対してアタックを仕掛けるようなイメージです。


クインズはこの考えを活かし、しっかりとしたキッキングストラテジーを準備していたのではないかと僕は思いました。


要は、再獲得した後のことまで考えていた。
再獲得した後にできたスペースを見つけ、そこを攻めるための『布石』も感じました。


1stフェーズへ戻ります。

マーカス・スミスがショートパントを蹴った時、ブラインドWTBの14番はオープンサイド(順目)に動いていました。

これが1つ目の布石。

画像4


ブラインドWTBが順目に動いたのは、グロスターディフェンス陣の目に入ったはず。

クインズに再獲得をされてしまった後も
『次のアタックは順目に来るんじゃないか』

と少なからず臭ったと思います。

ラインアウトに参加していたFW陣も順目サイドに多くまわり、ラックサイドに固まってしまいました。

画像5

グロスターFW陣の気持ちになってみると、ラインアウトが終わって状況をみると、ショートパントでリゲインされている状態。

マジか!と、実際焦りますよね笑


まずはラックサイドを固めて、ディフェンスの再構築を進めるはずです。

ちょいとした緊急事態なので、少しカオスな状況になると思います。

ボールウォッチ、ラックサイドに寄る・・
さらに順目の傾向が相手アタックにありそうなら順目に回る

などの状態になりがちです。



真ん中にラックができた後のセカンドフェーズ。

クインズの2つ目の布石は

画像6

4・8・5番が、しっかり右サイドに準備してセットアップしていました。

再獲得した後のことまで、1つのストラテジー(戦術)として構築されているのを感じました。

右側にセットアップしていたそのFW陣と10番マーカス・スミスが、相手のスペースを突いてトライとなったわけです。


これはキレイにハマったパターン。

じゃあ、もしクインズの右側のFW陣にグロスターのディフェンスが気づいていたら??


どこにスペースがあるかを探す


ここからは僕の仮説と妄想の世界です笑

グロスターのディフェンスが、逆サイドもあるんじゃないかと気づいて、ブラインドサイドの人数を増やしたらどうなっていたでしょうか。

画像7

グロスター10番がブラインドサイドに戻るパターン。

1stフェーズ後に10番がブラインドへ動くディフェンスシステムがよくあるので、このような状況を勝手に作ってみました。


そうなれば、10番マーカス・スミスは左方向へのアタックに舵を切ると考えます。

画像8


クインズの左サイドには11・15・14番と、良いランナーが揃っています。

グロスターの15番が我慢できず上がってきたら・・

画像9

14・15番あたりから、もう一回バックスペースを狙うのもありですね。



左側を攻めたとして、左エッジにラックができたとします。

逆の右サイドに残っているのは、チームで1番の長身を誇るロック陣。

布石その2の再発動です。

身長のミスマッチを狙い、10番からコンテストキックを使うこともできますね。

画像10



ここまでが、僕の勝手な妄想です笑
(お付き合いいただき、ありがとうございました)


クインズのコーチ陣に聞いたわけでもないですし、僕の仮説も入っていますのでこれが正解かは分かりませんが、要所にしっかりとしたオプションが準備されているのを感じました。

さすがプレミアを制したチーム。
クインズのキッキングストラテジー、恐るべしです。

キックを使った戦術で大事なことは?

まず何より、キックを蹴る人の精度がとても重要です。

コンテストキックであれば、しっかりと再獲得できる位置にキックを落とさなければなりません。


次に、キックの後のことまでチーム全員が理解しておくこと。

アタックになった場合はどう動くか、トランジションでディフェンスになった場合はどうするかを、全員が意識して動くことが大事だと思います。


最後に、10番の状況判断。

10番はゲームドライバーなんて言われ方もします。

要は司令塔で、チーム全体の舵取りをする人。

キックをどこに落とすべきか、リゲインに成功した場合どこにスペースがあり、どこを攻めるのか。

その判断がとても重要ですね。


これらのことができた時、キックを使ったストラテジーは強い力を発揮すると思います。


とあるTRYシーンから妄想話までとなりましたが、また1つ勉強になりました。


いいTRYなどには勉強になることが隠れているので、ぜひ皆さんも発見してみてください!


今回はプレミア優勝チーム、クインズのキッキングストラテジーについてでした!

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?