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映画「薔薇の名前」レビュー「中世のシャーロックホームズ」。

14世紀の北イタリアの,とある修道院で「ヨハネ黙示録」の
「喇叭(ラッパ)を吹く天使達」に見立てられた連続怪死事件が発生した。
事件の早期解決を望む修道院長は頭脳明晰にして
論理的思考力の持ち主であるバスカヴィルのウィリアム修道士
(ショーン・コネリー)に事件の捜査を依頼する。
ウィリアム修道士は依頼を受け弟子であり友でもある
メルクのアドソ(クリスチャン・スレーター)と共に捜査を開始する。
だが捜査には「制限時間」があり早期解決できなければ
異端審問官ベルナール・ギー(F・マーレー・エイブラハム)による
「異端者狩り」が行われ「異端者」と見做された場合,
拷問による自白の強要と火炙りの刑が待っているのだ…。

本作品はウンベルト・エーコの同名小説を映画化したものである。
ウィリアム修道士の呼び名の一部が「バスカヴィル」であり
彼がアドソに対して「初歩的な推理だよ」と語りかけた時点で
シャーロック・ホームズとワトソンの関係を
連想しないことは極めて困難であろう。
しかも「ホームズ」を演じるのは「ジェームズ・ボンド」であり
連続怪死事件の「有り様」は横溝正史諸作品を連想させる。
また決して超自然現象に頼らずミステリ映画として論理的破綻はなく
検死あり隠し扉あり暗号解読あり巨大迷宮のような図書館探索ありと
ミステリファンの僕を愉しませるために作られたかのような
極上の映画である。

異端審問官を嬉々として演じるのは「アマデウス」(84年)で
アントニオ・サリエリ役を演じ第54回アカデミー賞で
主演男優賞を獲得したF・マーレー・エイブラハム。
監督はデビュー作「ブラック・アンド・ホワイト・イン・カラー」(76年)で第49回アカデミー賞で外国語映画賞を獲得し後に「スターリングラード」(2001年)を制作したジャン=ジャック・アノー。

僕はBDで本作品を視聴したが画質音質ともに問題なく愉しめた。
特典は従来のDVDの特典に加えてジャン=ジャック・アノーの
英語およびフランス語による2種類の音声解説が搭載されている。
喋っている内容は全く視点が異なるので両音声解説ともに愉しめた。

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