僕は目に見えない「形のないモノ」を信ずることが出来ない。
例えば「愛」がその最たるもので
僕にとって「愛」は保証であり「婚姻届」と同義であり
「愛」を書面化して貰わねば信ずることが出来ないのだ。

映画監督のルカ・グァダニーノも
「愛は保証」と考えるひとりであると僕は思っている。
以前ルカ・グァダニーノ版「サスペリア」…。
通称「ルカぺリア」の2次創作同人誌「To Die」の
レビューを書かせていただいた折,次の様な考察を行った。

(引用開始)
ですがルカ・グァダニーノの根底には「人間に対する信頼」がなく
ジェシカ・ハーパーは「サスペリア」の最後に
エレナ・マルコスを殺して強奪した「力」を
現行のスージー・バニヨンに継承する「事務手続き」の為に
登場した様に思えるのです。
「事務手続き」に「愛情」だの「救済」だのが
関与する余地などありません。
「ルカぺリア」に於ける魔女は官僚主義の化身であり
「事務手続き」が何より尊ばれているのではないでしょうか。

前スージー・バニヨンから「力」を継承した
現行のスージー・バニヨンが「最初にした事」は
クランペラーの記憶の抹消です。
何故なら今やクランペラーの「正妻」は現行のスージー・バニヨンであり
「元妻」のスージー・バニヨンの記憶を真っ先に抹消し
クランペラーは「私の所有物」であると
「事務手続き」を行ったのではないでしょうか。
婚姻関係が変化した場合,「最初にやる事」は役所への届け出で,
「権利関係」を明確にしないと後で必ず問題が起こります。
「事務手続き」大事の
「ルカぺリア」に於ける魔女らしい考えだと僕は思います。

「人間に対する信頼」と官僚主義とは
相容れない概念だと愚考する次第です。
(引用終わり)

ルカ・グァダニーノには「人間に対する信頼」がないが
「To Die」を執筆された皐月臨さんにはソレがある。

ソレが皐月さんの「人間的に未熟なところ」と思い
ずっと彼女を見下し蔑んでいたのだが…。
彼女が信じて疑わない「愛」とは一体何なのか…。

その皐月さんに
「愛とは一体何なのですか」「愛のある作品を例示して下さいよ」
…と相当意地悪く皮肉交じりに尋ねたところ,
彼女が「愛とは炎である」と主張され
その愛の証明として紹介して下さったのが
この…「ノケモノと花嫁」なのである。

「ノケモノと花嫁」は「コドモの国」の話で
コドモが革命ゴッコに明け暮れ
カケオチゴッコをして
キワドイカッコをして
キワドイセリフの遣り取りが延々繰り返される漫画である。
オトナから見ればケツを引っ叩いて
「さっさと寝ろ!マセガキ!」
と一喝すれば,ソレで済む話なのだが…
コイツ等…ガワはコドモの癖に「中身」はオトナで…。
幼児体形のマセガキがエロい格好して
蠱惑的なセリフを並べ立てて来るのである。
「エロのないエロ漫画」とでも言えばいいのか…。

オンナの本質とは永遠のメスマセガキで
未来永劫キワドイカッコして
キワドイセリフの遣り取りを続けたいイキモノなのだと!
ソレがオンナの主張する「アイ」なのだと最初は思ったが…。

そうではなかったのである。

「コドモの国」は「生の国」であり「死」を忌避していると思っていたが
コドモはオトナによって無限に殺され続け,なれど死ぬ事を許されず
継ぎ接ぎになっても生かされ続ける「死人の国」だったのだ。

玉梓「ワタシたちは老いも知らず死も知らず」「何度でも甦る…」

「里見八犬伝」の死人の国の女王・玉梓の
「永遠の命」は無限の若い女の命の犠牲が担保になっていた。

「ノケモノと花嫁」の「コドモの国」はオトナによって殺され続ける
無限のコドモの命の犠牲の上に成り立った「死人の国」であり
コドモはオトナの人形でニンギョウがオトナの真似して
キワドイカッコしてキワドイセリフの遣り取りしてるんじゃねえの…?

「こんな醜悪なモノ」に…僕は劣情を催していたのか…?

愛は炎であり
人によってロウソクのようにゆっくり燃えたり燃え盛ったりする。
暖かかったり焼き尽くしたりする。
恋は命と天秤にかけられるもの。

…と皐月さんは主張されているが…。
ソレはウソでしょう?

本作に於ける「愛」は!
オトナによって無限に殺され続ける
継ぎ接ぎだらけのコドモの死体が!
人形が!
愛の言葉を囁き合う死姦であり!

斯くの如きものを「愛」と主張する
皐月臨なる人物の正気を疑わせるに十分なのである。

死んだ人間が囁く「愛」だけが「良い愛」である。

コレが本作の主張であり
皐月さんの「愛は炎である」との主張は建前・綺麗事であり
「死んだ人間同士の「愛」だけが「不滅の愛」である」
が皐月さんの本音であると断定する。

つまり…「ノケモノと花嫁」は…。
皐月さんのだーいすきな死姦を取り扱っており
それ故に皐月さんのハートをキャッチしたのである。