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映画「燃えよドラゴン」レビュー「本作は「俺は荷物持ちじゃないし黙って腹も蹴られない」って東洋人が白人に宣言した画期的で後の世に全く引き継がれない文字通り空前絶後の映画なのだ。」

テレ東系で昨日吹替放映された
映画「燃えよドラゴン」の録画データを視聴。

映画「ドクター・ブッチャー」(1980)で東洋人の役割は白人の荷物持ちで,
食人族に真っ先に殺されて腹を裂かれる役。
映画「エボラシンドローム」(1996)で
アパルトヘイト下の南アフリカで
一番偉いのは白人で次いで黒人,一番差別されるのは東洋人だって
アンソニー・ウォンの台詞があった。

1980年代も1990年代も東洋人の扱いはそんなもん。
1970年代の映画「燃えよドラゴン」でも
東洋人の船員の少年が白人格闘家に意味もなく腹を蹴り上げられる。
だがブルース・リーはその白人格闘家にやり返す。
「やられたらやり返す」って当たり前のことを彼はやったのだ。

「燃えよドラゴン」で白人と黒人を抑えて
東洋人が主役になるって事が如何に「異常な出来事」で
後の時代に全く引き継がれていない事が分かるだろう。
ブルース・リーという不世出の俳優が産んだ空前絶後の時代の奇跡なのだ。

また吹替で観る「燃えよドラゴン」には思わぬ余禄があるのだ。
例1.ハンの島の女支配人が女達を引き連れて
ローパー(ジョン・サクソン)のもとを訪れる場面。
「何の為に?」なんて聞くな!

字幕
ローパー「どの子も美人だな」
吹替
ローパー「これはこれは。いずれ菖蒲(あやめ)か杜若(かきつばた)」

吹替は日本特有の言い回しを学ぶ場でもあったのだ。

例2.結局ローパーは女支配人を選ぶのだが
女支配人の反応は"WISE DECISION"

字幕
女支配人「賢い選択だわ」
吹替
女支配人「お目が高いわ」

翻訳ってのは正しく訳せばいいってもんじゃない。
字幕翻訳は間違ってないから100点だが,ただそれだけだ。
吹替は「ワタシはこの島で最高の女」って
女支配人の自尊心まで「翻訳」した
100点満点で200点の出来なのだ。
つまり離れ技を連続して出す必要があるのだ。

コレが翻訳ですよ!

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