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高橋留美子先生原作&押井守監督脚本の「うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー」レビュー「押井守監督の強い作家性を主張しながら97分でキチッと終わらせる手腕が素晴らしいのです。邦画の癖にね。」

友引高校は明日の文化祭を前に生徒は学校に泊まり込んで準備に大わらわ。
あたるの担任の温泉マークも監督の任の重さ故か疲労が極みに達し
保険医兼巫女のサクラは一時帰宅し休息を取るよう指示する。
温泉マークが安下宿に帰宅すると
部屋はカビやキノコ等の菌類に沈み
あたかも数十年・数百年経過しているかの様だ。
温泉マークはサクラに「途方もない妄想」を語り始める。

我々は何十年も何百年も「文化祭前日」を繰り返し過ごしている
浦島太郎であり友引高校は竜宮城なのではないか。
竜宮城から下宿に帰った私(温泉マーク)だけが
現実には何百年も経過している事実を知ったのではないのか…と。

サクラは温泉マークの「妄想」を一笑に付すも,
引っ掛かるものを感じ生徒に強制的な帰宅を促す。

だがあたるとラム以外は正しい経路選択をしてる筈なのに
どうしても自宅に帰れず,ふりだし(友引高校)に戻ってしまう。
「友引町の外に出られない」のだ。

なんだコレは一体…。

面堂のハリアーに同乗したサクラ,あたる達が
友引町上空で見たものは
友引町全体が巨大な石の亀に背負われ
「世界」が錯乱坊と温泉マークの石像によって支えられている姿だった…。

一体誰が何の為に「こんなこと」をしたのか…。
そしてサクラは次の様に考える。
「この世界は…真実を知ろうとする者を人柱にして
「抹消」しようとする悪意の産物であり…」
「恐らく「次」に人柱にされるのはこの私なのであろう…」と。

BS松竹東急が開局2周年記念として
「映画の人気シリーズの第2作目だけ放映する」
と言うイカレた企画を立ち上げ絶賛放映中なのが
「ゴッドファーザーPART2」「ターミネーター2」
「ゴーストバスターズ2」…。
そしてこの「うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー」なのだ。
何と字幕対応で「光の激しい点滅」も可能な限りそのまま収録されてます。

高橋留美子先生の漫画「うる星やつら」がTVアニメ化され
劇場版アニメが何作か作られました。
TVアニメと並行して劇場版アニメを制作すると言う無茶を強行してる訳で
本作は劇場版アニメの第2作で押井守氏が監督・脚本を担当されてます。

本作の劇場公開時に僕は高校3年生・受験生で
僕は推薦入試で10月に大学への進学を決めていた後で
翌年2月という公開時期にも関わらず
地元の映画館に複数回観に行く事が出来た次第です。

本作の後半で友引町が荒廃してるのに
あたるの家だけは電気・ガス・水道が供給され新聞も配達され,
近所のコンビニエンスストアは無人営業中で
物資が何故が補給され続けている…。

面堂に言わせれば

日常生活に不都合が無いと言う点を除けば…
否,日常生活に不都合を無くす為に徹底的に最適化された…
この世界は実にいい加減に
殆ど言語道断と言っていい程
デタラメに出来ている…。

僕は「この世界」を観てロメロ監督の映画「ゾンビ」を想起しました。
自分達が快適に過ごす為に「世界」を徹底的に最適化して行く所と
その「最適化」を確保する為に
物資が無尽蔵にあるショッピングモールを想定する
「実にデタラメな所」がとても良く似ているのですよ。

本作を久しぶりに鑑賞して思ったのは
先ず手描きアニメの偏執病的な描き込みの凄さ。
背景ごとグリングリン良く動き
「アニメは作画が綺麗なのが最上ではなく良く動いてナンボ」
と言う基本中の基本を教えられた思いが致します。
次に邦画の分際で
邦画のアニメの分際で
尺が97分しかない所。
尺が3時間ないと言いたい事が言い切れないのは
監督がヘボだからと痛感させられます。

押井守監督には非常に強い作家性…「癖」があるのですが
その「強い作家性」を尺を3時間にする
言い訳にしてない所が素晴らしいのです。

後は…画質が良いという点。
あのさ。
本作のDVDもブルーレイも画質に難があって
1度観ただけで嫌になって手放すレベルなのですよ。
やっとBD-Rに焼いて保存したい気持ちが湧いて来ました。

押井守監督は今や神格化され「取り巻き」が鬱陶しくて
本作を観るのを敬遠する程ですが
本作は素直に面白いと思います。
押井守監督作であって同時に「うる星やつら」でもある。
この…奇跡の様なバランスが素晴らしいのです。
高校生の頃…なんで何度も本作を観たのか?
ソレは「面白いから」に他ならないのです。



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