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ジョージ・A・ロメロ監督「マーティン 呪われた吸血少年」ブルーレイレビュー「クーダがマーティンに「殺すと約束したな?」と玄田哲章声で凄み,マーティンを「最後に殺す」のが見所ですね。」

夜行列車でピッツバーグにやって来た若者・マーティン(ジョン・アンプラス)をクーダ(リンカーン・マーゼル)と名乗る厳めしい老人が迎える。
クーダはマーティンを吸血鬼(ノスフェラトゥ)と呼び忌み嫌い
「(孫娘)クリスティーナ(クリスティーナ・フォレスト)に手を出したら殺す」「町の人間に迷惑をかけたら殺す」
と釘を刺し,マーティンの同居を許し雑貨店の手伝いをさせる。
マーティンに言わせると彼は80代でクーダとほぼ同年齢で,
年取ってない様に見えるのは自分が吸血鬼であるからだと言う。
そして
「若い女の血を吸わねば生きて行けない」
との強迫観念から彼は凶行に及んで行く。
彼はラジオの悩み相談で
「僕吸血鬼なんですけど,どう生きたらいいんでしょう?」
と電話相談して名物男になったり,70年代に流行した小型のギロチンのオモチャでクリスティーナの気を引いたりと等身大の若者のパッとしない青春が描かれて行く。

…イヤイヤイヤちょっと待ってくれ!
有体に言ってオマエ連続暴行吸血殺人魔じゃん!

そんなある日,荷物を届けに行ったサンティーニ夫人(エレイン・ナデュー)とマーティンは肉体関係を持ち,彼は初めて「誰か」に受け入れられたと感じ満たされた日々を送る。
だが罪の意識に悩むサンティーニ夫人は自らの命を絶つのであった…。

あのさあ。
「マーティンの所業」を挙げるとさあ,
1.夜行列車で一人旅の若い女性の寝台列車の個室に忍び込み,
女を睡眠薬で眠らせて血を吸い,女を死に至らしめる。
2.自宅で人妻が間男と浮気中と知らず,
住居不法侵入して人妻の血を吸おうとして間男と鉢合わせて格闘,
間男を死に至らしめる。
3.別の人妻と肉体関係を繰り返し,
件(くだん)の人妻を良心の呵責から自殺に追い込む。
で彼は少なくとも3人の命を奪ってるロクデナシなのである。
ラジオの人生相談に
「僕はどう生きたらいいんでしょう?」
とか聴いてる場合じゃないじゃん!
彼は良心の呵責がゼロで童貞を捨てた解放感から
パレードを眺めながらブラブラ散歩してるのである。
本作を青春残酷物語と呼んで
「マーティンが可哀想」
っておセンチな感想書いてる人がいるけど
僕に言わせれば「ハァ?」なのである。

マーティンを罰する役目を担うのが我らがクーダであって
本邦のブルーレイ製作スタッフは
「そこのところ」を百も承知の上で,
クラウドファンディングでお金を集め,
クーダの声の出演を玄田哲章氏に務めさせ
マーティンに向かって
「殺すと約束したな?」
って台詞を言わせ,
マーティンを「最後に殺す」ファンサービスぶりなのである。

マーティンが本当に80代なのか吸血鬼なのかは最後まで分からない。
2つハッキリしてるのは
吸血鬼であろうとなかろうと
心臓にぶっとい木の杭を打ち込まれたら死ぬしか無く
マーティンは畑の肥やしになって
生まれて初めて人様の役に立ったという事である。

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