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阪元裕吾監督の映画「ベイビーわるきゅーれ」レビュー「スタントウーマンが特撮ヒーローの仮面を脱いで怪人と戦う!全身の血液が沸騰する燃える展開に痺れます!」

「仮面ライダーガッチャード」や「王様戦隊キングオージャー」で
ライダーや戦隊メンバーを, 何て名前の役者さんが演じているかは
毎週顔を見てるから知っているかもしれないが,
実際にアクションシーンを演じられている
スタンマンやスーツアクターの方々は
,第1話から最終話まで1度も顔を見せる事は無いから
名前も知らない方が殆どだろうと思う。
「機界戦隊ゼンカイジャー」の最終話でスーツアクターさんの
お名前がテロップ表示された事でさえ前代未聞の出来事だった。

何でこんな話してるかと言うと,
本作で殺し屋を演じられている主役のおふたりの内,
深川まひろ役を演じられている伊澤彩織さんは現役のスタントウーマンで, 今まで「影の存在」で「顔見せ」の無かった彼女に
初めて脚光が当たっているからなんです。
特撮番組で言ったら,今までライダーなり戦隊メンバーなりの
「仮面」を被って, アクションシーンを演じ続けられ決して
顔を明かす機会の無かった方が, 仮面を脱いで怪人と戦い始めたんですよ!
それだけで体内の血液が沸騰する設定じゃないですか!

深川まひろはコミュ障で他人と正常なコミュニケーションを取る事が出来ず, 相方の杉本ちさと(高石あかり)に依存しているが人を殺す場面になると
途端に水を得た魚の様に生き生きと輝き始める。
これは例え演技でも人に愛想は振り撒けないけど
アクションシーンになると自信に満ち溢れる伊澤さんを,
最初から想定された脚本なのではないかしら。

特典映像を観ると,伊澤さんは
「アクションシーンになるとホッとする」
と発言されていて,
普通の俳優さんの様な演技が苦手である事を告白されている。

一方高石あかりさん演じる杉本ちさとはメイド喫茶の面接場面で1発合格し,
メイド喫茶の従業員たちとも直ぐ仲良くなれる社交性を発揮するものの,
クライマックスの銃撃戦は
音声解説で高石さんが「雑な銃撃戦だね~」と笑われている。
おふたりの短所を互いに補い合っている意味でバディ映画となっている。

高石さんが陽なら伊澤さんは陰。
陰と陽とが太極図の如く絶妙に入り混じった感じが本作のキモなのだ。

特撮ファンの端くれとして今まで陽の当たる事の少なかった
現役スタントウーマンに脚光が当たり,
最後の壮絶な対決場面を「誰かのスタント」ではなく,
伊澤さん御自身が顔を見せて演じられている事が
泣く程嬉しい事は言うまでもない。

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