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映画「ムカデ人間2」レビュー「普段見下され踏み付けにされて来た発達障害者が健常者の優位に立ち,猛反撃する描写は「ホラー映画の使命」を如実に表している。」

地下駐車場の警備員室でノートパソコンで
映画「ムカデ人間」を何度も何度も繰り返し再生するひとりの中年男。
その中年男の名はマーティン。
オドオドしたギョロ目,ハゲ頭,太鼓腹,低い身長,薄い頭髪,喘息持ち,
発達障害者故に言葉を喋ることもままならない。
おまけに以前父親から強引に「関係」を結ばれ
その父親は然るべき「施設」に入っている。
母親は彼を常に頭ごなしに叱りつけ
父親が「施設」に入ったのはお前のせいだと言い募る。
母子ふたりが住んでいるアパートでは上の階のスキンヘッドが
常に大音量で音楽を聴き会話すらままならない。
天井を箒の柄で叩くとスキンヘッドが殴りこんできて
彼に殴る蹴るの狼藉を働く。
そんな彼のままならない人生において
映画「ムカデ人間」を視聴しているときと
飼っているムカデにエサを与えるときだけが救いの「ひととき」なのだ。
彼は映画「ムカデ人間」のハイター博士を心から敬愛し
その感謝のしるしとして映画「ムカデ人間」では「3連結」に留まった
ムカデ人間を「12連結」にする計画を立てた。

後は「実行」あるのみだ…。

「ムカデ人間」の「ム」の字も知らない方に
「ムカデ人間の作り方」を解説しよう。
先ず何人かの「素材」を集めて,脚の腱を切る。
コレは逃亡を防ぎ,ムカデの様に這って貰う為だ。
次に素材Aの肛門と素材Bの口とを外科手術で縫合する。
素材Aの口から入った食物が素材Aの体内で消化・吸収され排泄されるが
その排泄物を素材Bが食べて消化・吸収し排泄するのだ。
コレが「ムカデ人間」の2連結と呼ばれるものだ。
3連結となれば素材Bの排泄物を素材Cが食べて消化・吸収して排泄する事となる。
「ムカデ人間」のハイター博士は3連結に留まったが
マーティンは12連結に挑戦しようと言うのである。
しかもマーティンはハイター博士の様に医師免許を持っておらず,
無免許で外科出術を強行しようと言うのである。

マーティンの手術器具はこんな。
「バールのようなもの」で頭を殴って昏倒させるのが「麻酔」。
ホチキスで口と肛門を止めるのが「縫合」となります。
彼のDIY(=DO IT YOURSELF)精神に痺れますね。

マーティンの得物は拳銃と「バールのようなもの」だ。
拳銃で獲物の足を止めて「バールのようなもの」で昏倒させる。
彼は,彼に鬱屈を与えたすべての人間を何のためらいもなく
絶命させるか「12連結」の「素材」とする。

12人の「素材」が集められ裸に剥かれた彼等12人の健常者が
恐怖に震えながらひとりの発達障害者を見詰める光景は
普段健常者から見下されて来た発達障害者が健常者の優位に立つ
「逆さまの光景」が実現される瞬間なのだ。

「ホラー映画の使命」とは最底辺を這いずって生きる者共が
一瞬だけキラキラと光り輝く様を活写する事に尽きるのだ。

「縫合手術」に邪魔だからってんでカナヅチで歯をコンコンと
全部折る場面が見てて痛過ぎて流石の僕も目を覆いたくなる。

本作品は21世紀の作品だが通常版がモノクロなのは当然だろう。
こんなんカラーで観たら卒倒する事請け合いである。
まあ僕は物好きなので
カラー版が収録されてるブルーレイBOXを購入したけどね。

12連結が完成した後は先頭の
素材Aにドッグフードを食わせて腹に下剤を注射する。
先に説明した通り「ムカデ人間」は先頭以外,
前の人の排泄物を食う仕様なので「外科手術」以上のキツイ描写が続く。
コレをカラーで観ようと思う人間の正気を疑う内容だ。

「21世紀のホラー映画」はゴア描写に於いて
「20世紀のホラー映画」を超える事は無いと思っていたが
大変な誤謬であった。
初見の際,高熱を発し三日三晩魘された大変な作品である。

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