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ジョン・カーペンター監督の「ニューヨーク1997」レビュー「字幕翻訳も中原昌也氏の解説もクソなので僕が「正しいレビュー」を書いてやるッ!」

1997年,ニューヨークのマンハッタン島は巨大な監獄に改造され
300万人の囚人が好き勝手に暮らしていた。
テロリストにジャックされた大統領専用ジェットは
マンハッタンのビル群に自爆テロを敢行するも
大統領(ドナルド・プレザンス)は脱出用ポッドで辛くも脱出し
ポッドはマンハッタン島のド真ん中に落ち,
大統領の身柄はストリートギャングの手中に落ちる。
ギャングの首魁デューク(アイザック・ヘイズ)は
大統領の身柄と引き換えに島の囚人全員の釈放を要求。
警察長官のホーク(リー・ヴァン・クリーフ)は一計を案じ,
元特殊部隊隊員で数々の武勲で「英雄」と呼ばれながら,
その後「犯罪の帝王」と呼ばれる様になり武装強盗の罪で
マンハッタン島に収監される予定だった
スネーク・プリスケン(カート・ラッセル)に
大統領を救出させる任務を与える。
スネークの頸動脈に注射でカプセルを打ち込み
24時間以内に帰還しない場合,カプセルが溶け,
内容物が血液と化合して極小規模だが
彼の頸動脈を吹っ飛ばすには十分な爆発を起こす。
スネークは後に本当の自爆テロで吹っ飛ぶ事となる
世界貿易センタービルの屋上にグライダーで着陸し,
大統領の行方を探し始める…。

初見。吹替と一部字幕で視聴した後に
中原昌也氏のブックレットを読んだ感想は…。
中原と字幕制作者はクソで
吹替を構築した人間は「神」だと言う事である。

中原クンの自分に酔っぱらうだけで
本当に解説すべき事項を一切解説しないレビューに絶望し,
また本当に翻訳すべき事を翻訳しない字幕制作者の無能に激昂し…。
どうやら斯かる無能者共に
「正しいレビューの書き方」「正しい字幕の作り方」
を教育してやらねばならん様だ。
やれやれ。
僕の様なオイボレの務めとは「説教」と覚えたり。

本作が作られたのは1981年だがマンハッタン島のビル群に
自爆テロを敢行するテロリストの存在は多分に予言的であり
優れた創作物の特徴とも言えるのだ。
2001年…21世紀最初の年に世界貿易センタービルに
自爆テロを敢行するテロリストが本当に現れ
貿易センタービルは瓦解し,この世から消え去っている。
その貿易センタービルの屋上に
スネークがグライダーで舞い降りる場面は…。
勿論カーペンターと言えども他意はなかったのであろうが
2024年になって初めてこの映画を出会う僕にとっては
スネークの存在が
架空と現実との狭間を行き来している様に思えるのである。

スネークのもうひとつの特徴は
ゴルゴ13やジェームズ・ボンドの様にセックスしない事。
ボンクラ中学生にとってセックスは憧れではあるが
自分達には一生縁のない恐怖と憎悪の対象でもある。
童貞にとってゴルゴやボンドは手の届かない存在だが
スネークは素直に憧れを表明出来るのだ。

スネークの声の出演は青野武さん。
コレは「要塞警察」の
ナポレオン・ウィルソン(ダーウィン・ジョストン)の
日本語吹替が青野氏である事を受けている。
ナポレオンがスネークのプロトタイプ(ひな型・原型)であると
見抜いてなければ絶対この配役とならない。
日本語吹替制作スタッフが「神」である由縁のひとつだ。
青野さんの「俺」は「オルルェ」と聞こえ
「スネェェェクと呼べェ…」の独特の滑舌に痺れるのだ。

本作で大統領役を務められたドナルド・プレザンスは
勿論「ハロウィン」のルーミス医師だが
(ブックレットでも流石に触れている),
本作のナレーターを務めているのが
「ハロウィン」でローリー役を演じた
ジェイミー・リー・カーティス。
(クレジットには表示されてない…が「声」を聴きゃあ明々白々)

中原クンはこうした基本的でしかも絶対に押さえるべき点を
ブックレットに書かねえのである。
だんだん彼が授業で脱線するだけ脱線して
生徒に「三平方の定理」すら教えねえ無能数学教師に思えて来るよ…。

デュークの声の出演は小林清志さん。
勿論デュークが銃の精密狙撃の達人である事を踏まえている。
この…日本語吹替制作スタッフの…。
痒い所に手が届く「分かってる」ぶりが堪らねえのである。

デュークの配下を演ずるフランク・ダブルデイは
「要塞警察」でアイスクリームを交換に来た幼女を
真正面から撃ち殺したストリートギャング。
しかも役名が「ロメロ」なのである。
全く…「ゼイリブ」といい本作といい…。
カーペンター君は本当にロメロ大好きっ子なんだから…。

またスネークの頸動脈にカプセルを打ち込む科学者を演じる
ジョン・ストロベルの役名はクローネンバーグ。

全く…カーペンター君の「好み」と僕の「好み」が
完全に一致していて,こんなのスキになるしかないじゃん…。
エンドクレジットでも「ロメロ」「クローネンバーグ」と
明確に表示してるのに字幕では一切両者の名前が出て来ない。

バカじゃないの?

カーペンター君の「真心」を…「純情」を!
字幕翻訳出来ない翻訳者は死ねッ!

その点日本語吹替では
キチンと「ロメロ」「クローネンバーグ」と訳してて…
もうね。
素っ裸になって日本語吹替制作スタッフに抱かれたい心境である。
コレが心を訳す…「正しく訳す」ってコトなんだッ!

国務長官を演じるチャールズ・サイファーズは
「要塞警察」でストーカー警部を演じている。

デュークの知恵袋・ブレイン役を演ずる
ハリー・ディーン・スケルトンは
「エイリアン」でブレット役を演じている。

イエローキャブ(タクシー)の運転手役が何とアーネスト・ボーグナイン!
「イエローキャブ」は後に
「誰でも乗せる黄色いタクシー」→「誰とでも寝る日本人女(=黄色いサル)」
の蔑称・隠語として使われる事となる。

…以上のレビューは中原昌也氏が全く触れなかった事柄で構成されており
氏が「全く触れなかった箇所」全てが
僕にとっては「絶対に触れて欲しかった箇所」の結晶であり,
氏が書かねえと言うのなら!
誰も書かねえと言うのなら!
僕が書くしかねえと拙レビューを執筆した次第である。
我ながらじっつっに「正しいレビュー」が書けたと自負している。

本作は15年後にセルフリメイクされる事となる。
間もなくスティングレイ社よりブルーレイの出る
「エスケープ・フロム・L.A.」である。
今度は監獄島と化したロサンゼルスに大統領の娘を救出に行くスネーク。
映画内時間でも15年経過してて,カート・ラッセルの精悍だった肉体は
見る影もなくブヨブヨとなっている。

しかし…「くたびれたオッサンが頑張る映画」として最高であり,
「エスケープ・フロム・L.A.」を「多分にマンガ的」と腐す中原クンとは
未来永劫同じ天を仰ぐ事は出来ないとの思いを強めるのである。

近年本作はTVゲーム「メタルギア・ソリッド」の元ネタとして
擦られる事が多いが,その考えは間違っているよ。

幾ら「ベルサイユのばら」が傑作でも
シュテファン・ツヴァイクの「マリー・アントワネット」を
「ベルばらの原点」と呼ぶのが間違っている様に
「ニューヨーク1997」も「マリー・アントワネット」も
いちいち「メタルギア」や「ベルばら」に補助されなくとも名作なのだ。

仮に「源氏物語」の新訳が出たとして
帯に「あさきゆめみしの原点」とか書かれたら「ハア?」って思うでしょう?
全く…歴史的名作に対して不敬なのである。



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