産科入院ご飯 質素な食事VS豪華な食事

ツイッターにハッシュタグ #産婦人科ご飯の写真撮ってた人見せて があがっていて,さまざまな写真が投稿されています.完全に二極化していて「高級ホテルの食事と刑務所の食事がある」と一部では揶揄されています.

質素な食事vs豪華な食事,というのは,病院のサービスの質とか経営努力とは別の話です.ご存じのとおり分娩にかんする費用は自費です.食事に力をいれようとして,専門の料理人を雇い材料にお金をかければ,いくらでも豪華なものを提供できます.そのかわりその分だけ高い金を請求すればいいだけの話です.

しかし高度な医療をおこなう総合病院では保険診療が中心であり,入院患者もそういった重症なひとが中心です.保険診療における入院患者の給食は,一食あたり460円と決まっていて,そのなかでなんとかやりくりせざるをえません.もちろん食事も治療の一環ですが,460円でまともなものがつくれるはずもなく,給食部門は多くのところで赤字になっています.そういった体制で,分娩患者は自費でいくらでも請求できるからといって,別だてで特別な食事をだすことはむずかしい.他科から苦情がくることでしょう.

豪華な食事をだせる産科専門の個人病院と,入院患者に共通の食事をださざるを得ない総合病院はまったくちがう役割をもっているので,それらを食事だけで単純に比較することはできません.ハイリスクやさまざまな合併症をもつ妊婦,先天性の病気をもつ胎児を妊娠している妊婦などは,専門的な管理が必要なため,前者の病院から後者の病院に紹介されます.診療自体におおきな手間と医療費がとられるので,食事のみを云々するのは別な問題と考えるべきです.

そういえば東日本大震災のあと,福島原発から20キロの南相馬市で事故後早い時期にお産を再開したクリニックがありました.そのときあらたに生まれてくる赤ちゃんはおおきな希望となり,地域の人々をどれだけ勇気づけたことか.しかし再開当初は病院スタッフがなかなかそろわず,入院している産婦さんや褥婦さんに,院長自らがほか弁から弁当を買ってきて,それを食器にもりつけてだしていました.

もちろん食事がおいしいにこしたことはないし,お産という大事業をなしとげた女性にはおつかれさまという気持をこめて,すこしでもおいしいものを食べてほしい.赤ちゃんにたっぷり母乳をあげるためにもです.最近一般化している「お祝い膳」などはそのためのものです.でも「グルメ競争」になると,なんとなくそれはちがうなあという感じですね.

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