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ジャニーズの闇は日本社会の縮図

現在問題になっているジャニーズの問題は,結局のところ事務所のトップが,歌や踊りのスキルを教えデビューの生殺与奪権をにぎることで,アイドルをめざしている少年たちに全人格的な隷従を強いてきたというところにあります.それによって性的な収奪を自由におこなったわけです.

しかし,下の者にたいして精神的な隷従を強いるというこのような構造は,日本の社会のあちこちにみられます.たとえば社会人になってからの勉強,いわゆる OJT (On the Job Training) は日本の企業の特質ですが,ろくな教育システムがないところで,上から下に口頭伝承でおこなわれることになっています.そこではノウハウを握った先輩にたいして,なにもしらない新入社員は頭をさげながらいちいち教えを請うことになります.

つまりスキルのある人が,そのスキルで勝負してその成果を受け取るのではなく,スキルの足りない人が,スキルを持っている人の命令と支配を受けながら,頭をさげつつスキルを教えてもらうという構造です.これではまさに精神の奴隷です.まともな人間のおこなうことではありません.そしてそのようにしてまで学んだスキルが,ほんとうに現在ベストのものなのか,また会社の外でも通用する普遍的なものなのかはあやしいところでしょう.

このことは中学高校での運動部の部活動でもよくあります.たかだか1年か2年先に生まれた「先輩」に,「後輩」は徹頭徹尾隷従を強いられるのはよくみる光景です.練習でのスキルの伝承のみならず,その練習する機会すら先輩の意のままにあやつられて,屈辱的な隷従が求められるのです.全寮制のもとでの陰湿ないじめや自殺事件などは,こういった日本特有な精神的な隷従のなかに生まれてきます.

この点ではわたし自身も中学からの10数年間,被害者であったと同時に加害者の立場にもたっていたわけで,深刻な反省がせまられていることを告白しておきます.こういったスキルをもつ上の人間が,それをもとに下の人間に君臨し隷従を求めるいかにも陰湿な構造は,江戸時代の社会でもよくみられていたようです.藤沢周平の小説などを読むと城中のなかの身分制にもあたりまえのように描かれているところをみると,日本の伝統的な宿痾のように思えます.浅野内匠頭などはその最たる被害者でしょう.

それはどこにでも潜んでいます.医学部を卒業したばかりのレジデントが翌年には教える側に回る,いわゆる「屋根瓦方式」と呼ばれる研修システムを,有名な臨床研修病院がよく謳っていたりします.しかし実は教育にかかる費用と手間を単にケチっているにすぎないこのやりかたを,上記の理由からわたしはゾッとしない思いでみています.


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