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漢方のすすめ❗️夏に備えたい漢方薬3選

梅雨明けが待ち遠しい今日この頃ですが、皆さんいかがお過ごしでしょうか。今回は夏に起きやすいトラブルにうってつけの漢方薬3選をご紹介させていただきます。

五苓散(ごれいさん)


まずは、「登山のすすめ!富士山編」でも取り上げた『五苓散』です。水を調整する面白い漢方です。水が余った浮腫の状態では利尿作用を、水が足りない脱水状態には抗利尿作用を発揮します。適応症状は、「むくみ、頭痛、下痢、嘔吐、めまい等」、適応病態は「熱中症、下腿浮腫、二日酔い、ウィルス性胃腸炎、めまい症、高山病等」と多岐に渡ります。

夏に生じやすい病態


夏には暑さや湿度のため、下記の様な水分のトラブルが起こりがちです。
①   下腿浮腫:ついつい水を取り過ぎて脛(すね)がむくんでしまう。
②   胃腸障害(下痢等):冷たいものを摂り過ぎて胃腸の機能が落ちる。
③   二日酔い:ビールを飲み過ぎてしまい、次の日に頭が痛い。
④   熱中症:水分摂取が遅れてしまい、脱水となってしまう。
こういった様々な病態に対応できるのが、漢方薬『五苓散』の強みです。西洋薬は単一の成分の効果を強く出すピンポイントの治療であるのに対して、漢方薬は身体の全体のバランスを整える守備範囲の広い治療です。例えば、フロセミドという利尿剤は身体に水が余った浮腫に対して投与しますが、投与中に脱水に傾いてしまっても、ブレーキはかからず、更に脱水を助長してしまいます。特に、夏場に脱水になりやすいご高齢の方には利尿剤<<<断然、五苓散です。

五苓散のメカニズム

五苓散の作用イメージ(漢方医学より抜粋)

近年、アクアポリンと呼ばれる細胞膜の水チャネルを阻害する作用が解明されました。上記の様に細胞表面のアクアポリン(ACP)を阻害して、不適切な水の流れ(漏れ)を抑制して、浮腫を改善する事が分かったのです。五苓散は主にACP4を阻害する事から、それが分布する脳(頭痛、めまい、高山病、二日酔い)、腎臓(浮腫)、消化管(嘔吐、下痢)の症状に効果を発揮する事も理解できますね。発見されました熊本大学の礒濱(いそはま)洋一郎准教授の解説を下記リンクに載せましたので、詳細を知りたい方はご参照下さい。
「五苓散のアクアポリンを介した水分代謝調節メカニズム」漢方医学Vol.35, No.2, 2011年掲載

アクアポリンの体内分布(漢方医学より抜粋)

ちなみに、五苓散はツムラの売上No.5のようです。私も良く処方します。是非、ご家庭に常備しておきたい漢方ですね。

清暑益気湯(せいしょえっきとう)

ツムラHPより抜粋

「漢方のすすめ❗️風邪対策で持っておきたい漢方薬3選」で登場した『補中益気湯』の夏バージョンが『清暑益気湯』です。
清暑益気湯は読んで字の如く、暑さを清め(冷やし)、気の不足を益す(補う)漢方です。9つの生薬から構成されますが、下の参考図にあるように、「補中益気湯」とは6つの共通項があります。清暑益気湯は気を補い、胃腸機能を高める共通の生薬に、熱を冷ましたり、滋養に効果のある漢方が追加されています。

漢方のきぐすり.comより抜粋

対応症状:ほてり感、だるさ、喉の渇き、食欲不振、下痢など
対応病態:軽い熱中症、暑さが原因の夏ばて・夏やせ(胃腸障害)

類似処方(補中益気湯・六君子湯)との使い分け

清暑益気湯:ほてり感・口渴など脱水状態がある時
補中益気湯:倦怠感が強い時。冷房で冷えてだるい時(暑さの影響:少)。
六君子湯:胃の機能の低下(食欲不振、嘔気や胃もたれ)が主な時

銀翹散(ぎんぎょうさん)

大鵬薬品・プレスリリースより抜粋


日本で漢方の風邪薬といえば「葛根湯(かっこんとう)」が特に有名ですが、現代の中国ではあまり使われていないようです。中国で風邪薬といえば、この銀翹散が有名です。ただし、日本の保健医療には対応していませんので、薬局での購入となります。
口が渇いて熱っぽく、ノドが腫れて痛むカゼ「風熱(ふうねつ)型」やインフルエンザなどのウイルス性のカゼに効果的です。
中心的な生薬は、金花(キンギンカ)と連(レンギョウ)で、清熱・解毒作用を持ち、銀翹散の名前の由来にもなっています。

葛根湯との使い分け


風邪の急性期に効果的な「葛根湯」と「銀翹散」の使い分けです。「葛根湯」は身体を温める成分の「麻黄」「桂皮」を含んでいるため、悪寒を伴う咽頭痛、頭痛の症状の風邪(青い風邪)に有効です。対して、「銀翹散」は熱(火照り)を鎮める生薬:金銀花(キンギンカ)、連翹(レンギョウ)、薄荷(はっか)を含んでいるため、熱感を伴う咽頭痛の風邪(赤い風邪)に有効です。逆に、寒気がある人には適しません。下記の日本中医薬研究会で行われている風邪の分類「青い風邪・赤い風邪」が分かり易いですね。

漢方専門 福田漢方薬局HPより抜粋

銀翹散は保険診療で処方できませんので、クラシエの「銀翹散エキス顆粒A」松浦の銀翹解毒散エキス細粒を購入して下さい。

夏に活用したいハーブ(生薬)


夏にオススメな成分は、メントールです。生薬の薄荷やハーブのペパーミントに含まれます。メントールは清涼感があり、体表の熱を冷ます効果、消炎・鎮痛、気持ちを落ち着かせる効果があり、湿布、お茶、カクテル、ボディーソープ、バスソルト等にも使用されています。夏はシャワーのみで済ませる人が多いと思いますが、寝る前の温めのお風呂は副交感神経が刺激され、よく眠れます。そして、熱帯夜では、メントールを含んだバスソルトとボディーソープを使うと、お風呂上がりも涼しく快適でオススメです。

夏に気をつけたい事


例年、猛暑で辛いですが、暑いからと言って身体を冷やしすぎない方が良いです。特に、夜の温度管理は大切です。冷房を強く掛けすぎると、寝冷えして、風邪を引いたり、自律神経の乱れから体調を崩してしまいます。タイマーを活用したり、温度設定を高めにしたり、ドライにするなど工夫してみて下さい。
また、身体の中からの冷やしすぎにも注意です!冷たい飲物や食べ物を過度に摂ると、胃腸の機能が落ちてしまいます。腸には免疫細胞の70%が集中しているとも言われておりますので、免疫機能も落としてしまいます。
身体の冷やしすぎに気をつけて、暑い夏を乗り切りましょう!!

最後に


最後まで読んで頂き、ありがとうございました。漢方薬は素晴らしい薬です。また、身体全体のバランスを整える優しい治療です。西洋薬にはない、過不足両方を調整するような漢方薬もいくつかあります。夏に体調を崩しがちな方は、上記3漢方を処方してもらうか、購入して夏に備えると良いと思います。近々、漢方のマガジンを作成予定です。定期的にまた漢方薬の魅力をお伝えしていきたいと思います。右下の♡(スキ)やフォロー、シェアで応援頂けますと、励みになります。よろしくお願いします。

参考HP
ツムラ
漢方薬のきぐすり.com
開気堂薬局 漢方職人「東海林さん」の漢方メモ

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