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ナミダドロップス 進化

観終わった後に興奮が収まらなかった。

初日はなんだったのだろうというくらい進化していました。もちろん初日も熱演でした。でも昨日(日曜夜の部)は言葉が私の心に落ちてきた。それに全員の全力感がバンバン伝わってきました。

芝居のどこにも「救い」がないのでは?と感じた初日。それが、一筋の希望の光が私には見えました。猿之助さんのこういう姿が観たかった。これは全くの私の好みの問題。それに二回目というのもあるし、最後列で全体を見ながらだったので冷静に観ることもできました。

今日は、猿之助さんが変化をしたら物語が違って見えたお話。公開でお話します。


猿之助さんがアクセルをさらに踏んで本気を出してきた!そういう時の猿之助さんに出会ってしまうと、私は体の中で血が沸騰するような興奮状態になってしまう。

日曜夜の部のチケットを急きょ購入。最後列の10列目は傾斜(今回の公演のために設置)のおかげで視界良好でした。残念なことに私の前は3列くらいほぼ空席。。全体の3分の1は席が空いていたと思います。なので余計に見晴らしがいい。

そんな光景はもちろん役者さんからも見えているだろうなと。そして、そんな光景を見てしまった時の猿之助さんの凄さよ(笑)足を運んでくれた人たちに、全力でプレミアム感満載の芝居をしてくれます。


二回目の観劇です。初日観劇後のモヤモヤが一転、同じ芝居なのかと思うほど興奮状態になりました。私的には廻りくどい言葉も未だ感じるのですが、一番には猿之助さんの芝居が違って見えた。。いやいや違っていたからです。

ご本人の気持ちはわかりません。観る側の私の印象としては、猿之助さん自身が’できること’を前面に押し出してきたように思います。トランスジェンダーの役が、歌舞伎の女形&立役ができる’兼る役者’を思わせるような表現になったような印象でした。

衣装は可愛らしい現代風ですが、着物姿も想像できる。。と言えば伝わるでしょうか。時代設定がないので、逆に着物でもおかしくないくらい異次元な演技でした。

大きく変わったと思ったのは後半部分。

想う人を守るため、恩人に背き、自分の世界だった鐘楼堂を破壊する決心をする清日古。恩人であるタテワキが自分に刀を向けて殺そうとしてきたことがきっかけになり、気持ちがヒートアップしていきます。

初日、刀の存在がわりとぞんざいな感じがしたし、目立っていませんでした。もとになっている「金幣猿島郡」にも登場する源氏の重宝・村雨丸という刀です。歌舞伎でもあまり考えないで観ても支障がないと言えばないのですが、初日は、何でわざわざ登場するのだろうと思うくらい印象が薄く感じました。

それが!猿之助さんの演技が刀をフューチャーさせているような感じに!ストーリー的には変わっていないのに、扱い方、刀への気持ちのこめ方。。見せ方で場面の壮大さが違っていました。村雨は、持つべき者が持つと雷鳴がとどろき龍神が現れる。清日古が持った瞬間、雲が立ち込めるのです。そこから一気に鐘を撞く綱を斬り、決心を語り、傘で運命の鐘を撞く。畳み掛けるような展開に瞬きできないくらいでした。

ちなみに、金幣~では、村雨の放つ光で盲目だった清姫の目が開きます。見たのは好きな人の恋人、七綾姫でした。そこから清姫は嫉妬に狂い七綾を追いかけ命を狙う(笑)あまりの激しさに自ら鐘に頭突きする場面があって「いたたた」となる可愛い猿之助さんを思い出します。あ、でもこの場面は全く反映されていません。でも今回、刀を持った清日古の心の目が開いたような感覚はありました。

九つ目の鐘が鳴った時、火矢が放たれ業火に包まれます。赤い幕が、歌舞伎公演の時と同じでテンション上がります。歌舞伎では、鬼になった忠文と、蛇体になった清姫が怨念で合体する場面だったかと。

今回、業火の幕の前で猿之助さんが刀を持って、独特な舞をします。幕の前に立った時、猿之助さんの表情から、初日は全く感じなかった「希望」を感じたのです。私は「ああああ、清日古は生きていくのだ」と胸がいっぱいになりました。

(歌舞伎のように怨念が合体したのではなく)清日古と内なる清姫が合体して個性になり、本来の自分になって外の世界へ歩き出すのだと思って泣きました。でも、そこには「鐘」があって。。道成寺物の舞踊と同じように鐘を意識して踊る猿之助さんからは「それでも人間は繰り返してしまう」そんな戒めも感じました。私の中では鐘は輪廻転生も浮かんでくるのです。

どんな中でも希望を感じさせてくれるのが猿之助さんだと信じています。人間は、愚かだということを受け入れ、自分を受け入れ、いつからでも生きていける。そんな感じ。


そして、人生が変わるほどの出会いってある。私も猿之助さんと出会ったことで、歌舞伎を知り、人生が楽しくなったから。清日古の、想う人を’守りたい’という気持ちがわかる。

’猿之助と愉快な仲間たち’の公演でしか観ることができない猿之助さんがいます。毎回そうだった。仲間たちに進む道を示す姿、歌舞伎座では観ることが叶わない姿。初日を観た時、猿之助さんが関わる意味が少しわからなくなってきたと思ったけど、仲間のために全力で芝居を進化させていく姿に改めて感動しました。これからも観ていきたい。

この日は猿之助さんだけでなく全員の気持ちが熱かった。そのお話は次回にayaMAGAで。明日は(もう今日ですが)東京公演千穐楽です。しっかりと目に焼き付けてきます。


aya


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