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あと1回

今年の歌舞伎座公演があと1日になりました。

第一部、猿之助さんの「新版 伊達の十役」もラストです。
完走が見えて少しホッとしています。

久しぶりの10役はどうだったのでしょう。猿之助さんご本人に聞いてみたい。初役の政岡や仁木弾正の話も聞いてみたい。

前半に登場する政岡~節之助~弾正の三役。伽羅先代萩では三人の役者がそれぞれ演じます。澤瀉屋の「伊達の十役」では一人で演じます。これだけ鮮やかに演じ分けができる役者は猿之助さんしかいないと思う。特に、政岡と弾正という大役の二役をこれだけ別人のようにできるとは。

これは今のタイミングだから素晴らしいものが観ることできたと思っています。猿之助さんはもともと女方だから政岡はイメージできても、襲名直後あたりだと弾正はイメージができなかったからです。四代目になり、先代が演じてきた立役をするようになって、今は立役も板についてきたというか、観る側も慣れてきた(笑)

とても良いタイミングで両方のお役を見ることができました。で、ますます「伊達の十役」を全部通しで観たくなりました。もっともっとじっくりお芝居に浸れるし、もっともっと激しい早替りを観ることができます。満足度はこんなものではないのです。

世の中の空気を読み、お客が楽しめるものを。。自分ができることで。。と、ここ一年は早替りを取り入れたものを上演する機会が増えました。お家芸をかけることで、お弟子さんや一門の皆様の仕事にも繋がります。自分だけ舞台に上がっていればいいと思う猿之助さんではありません。早替りには大勢の裏方スタッフが必要ですから。

それに他のお家と同じことをする必要はない、というようなことを昔に話していたのを思い出します。それぞれ得意分野で勝負していけばいい、みたいな。生きる時間には限りがあり、突然に終わりもくる。もちろん古典や新作、舞踊。。と全て力を注げるのは理想だけど、時間が足りない。それは今でも猿之助さんの変わらない部分だと感じています。

最近は、猿之助さんの演出力に改めて惚れ直しています(笑)上演時間の制限がある中で、いくらお家芸と言っても毎回ほぼ新作を作っているようなものです。ただの短縮版でなく、新たな芝居として確立させて、本筋の’肝’になるシーンやセリフは絶妙な具合で入っているところがすごい。だから満足感がある。

猿之助さんの頭の中が知れて嬉しい。
この人、ホントに頭いいなぁ。。いつもながら感動です(笑)

特に、今月の’新版’は斬新で、こうきたかー!
想像を遥かに超える演出に心震えました。

あと1回です。
演じるほどに本人がスリムになっていく芝居を観るのは久しぶりです。見た目のことはあまり言いたくないし、本人は否定すると思うけど(笑)澤瀉屋のハードな芝居は想定内の出来事。でもまだまだ余力ありそうです。千穐楽はどんな伊達十を観ることができるでしょうか。

私の歌舞伎納めは猿之助さんです。
無事に幕が開きますように。


aya

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