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菊宴月白浪 第二幕の話

そのうちに気温40度になる日が来るのではと恐ろしくなります。暑い日は芝居で納涼したいです。

歌舞伎座 昼の部「菊宴月白浪」は中日を過ぎて折り返しです。第一幕は酷暑を忘れて雪景色で涼むことができました。そうそう、猿之助さんと言えばアクション部、BOSの皆様が登場しています。中車さんの花道の引っ込み。ワンピースからお馴染みの「バク転と言えば山口さん」がバク転しているのでびっくり。

三人で中車さんに絡んでいて、バク転の速度はまわりに合わせて毎日違うそう。進化しているので注目です。私は澤瀉屋の芝居でBOSの立廻りが今後も観たいです。ずっとともにあってほしいと願っています。

さて、昨日の話の続きです。二幕目からは猿弥さん笑也さん、そして壱太郎さんがいよいよ登場です。


星五郎の妻(定九郎)、笑也さん演じる加古川は病に伏せっています。お世話をしているのが、定九郎に仕えている与五郎。与五郎は大抜擢の歌之助くん。第一幕から登場していて、塩冶家の家宝の短刀は与五郎の刀とすり替えられ、そうとは知らず持ち歩いていたのでした。その刀に気づくのが加古川。

笑也さんの美しさはもちろん、とても重厚感あります。若い二人を相手に貫禄を感じます。品の良さが光ってました。

歌之助くんの与五郎はここまでが良い人。チャキチャキした感じもいいです。

この後、隣人 おとら(京蔵さん)の登場で与五郎の持っていたお守りで高野師直の実子だと判明し、本人もびっくり。心の悪の部分が目覚めてしまう。高野家の再興を果たすよう即すおとらも上手い(笑)

与五郎は塩冶側の人でしたが、血縁として高野家再興を果たすことを決意し、加古川を殺して塩冶家家宝の刀を奪っていきます。もともと良い人だから、初めての殺人で手が震え、布団にくるんだ加古川の遺体を肩に乗せて歩く足ももつれます。歌之助くん、大健闘です。

その場に偶然やってきたのが猿弥さん演じる浮橋の兄で高野家家臣の養子、権兵衛です。そして闇夜の中、高野家の証である与五郎のお守りが権兵衛の手にわたってしまいます。


ある夜、権兵衛は妹の浮橋を殺してしまいます。高野家側の人間なのに、塩冶縫之助の子供を身ごもったことが原因です。駆けつけた縫之助にも襲いかかりますが、命は助かります。猿弥さんの手堅い芝居が場をギュッとしてくれます。笑也さん同様に心強い存在で、いるだけで話が面白くなるから不思議。

ここで、金笄のおかるの壱太郎さんが登場です。おかるの父は、この直前に直助(与五郎が名を変えて悪人に!)に殺されています。父の死体を見つけてしまう。以前から おかるが好きだった猿弥権兵衛は、敵討ちの助太刀をするから夫婦になろう!とプロポーズ(笑)でも、おかるは想い人がいます。仮の夫婦ならOKということに。

このくだりの猿弥さんが男らしいけど可愛くて(笑)女伊達の壱太郎さんはかっこいい。仮面夫婦になるのが面白い。

猿弥さん男寅さん兄妹の場面、猿弥さん壱太郎さんの場面はともに仮名手本の七段目のパロディです。観ながら猿弥さんの平右衛門や由良之助も本役で観てみたいと思いました。

怪我を負った縫之助は、星五郎の家で養生しています。縫之助を治すには辰揃いに生まれた人の血が必要。そこに妻の加古川の幽霊が現れて、自分が辰年辰月生まれと話し、自分の血を役立ててほしいと言います。すると家の前の水辺に加古川の死体が流れ着きます。星五郎が血を薬とともに縫之助に飲ませると怪我が完治しました。

幸薄い女性は天下一品ですね、笑也さんは。儚くて切なくて。中車さんも熱演で見応えありました。


そして、二幕ラストの両国橋の場が最高にワクワクしました。星五郎を囲む大勢の捕手たち。歌舞伎美人にも写真があったと思うのですが、幕が開くとセンターに中車さん。そのまわりに円を描くように「おもだかや」の文字が入った傘が。これにはテンション上がりました。泣けます。

しかも浴衣に猿之助さんの三つ猿紋。一緒に舞台にいるんだと思ったらまた泣けてくる。大勢の立廻りは中車さんが大健闘だし、澤瀉屋らしい。

あ、角兵衛獅子が出てくるのですよ。竹松さん。揚幕から本舞台に進み上手へ。ここは仮名手本の五段目パロディ。猪が駆けていくのを角兵衛獅子にしちゃった南北(笑)しかも名前が猪之松って笑いました。

猿之助さんがインスタライブで角兵衛獅子のくだりが面白いと言っていましたよね。思い出して観ていました。

そして「ドドンっ!」と大きな音ともにプロジェクションマッピングの花火が上がります。これは本当なら猪が鉄砲に撃たれる音なのですけど(笑)花火にしたのがすごい。

この映像技術は現代だからこそ。ちなみに三十数年前の写真が雑誌 演劇界にあります。↓

演劇界2021年12月号より

写真がモノクロでわからないのですが電飾でしょうか?これはこれで風情があっていいなと思うのですが、澤瀉屋の派手さは現代ではこんなものではありません。今日のnote記事のヘッダーのような華やかさなのです。

この時間になると二階の照明室にPCを操作する人が現れたので、そこから操作しているのだと思います。派手派手な花火はきっと猿之助さんも満足だったはず(笑)

モノクロの写真の’遠見の加古川’は猿之助さん(当時 亀治郎)です。舞台上を上手から下手へ移動です。お客の上ではないから怒っていたと段之さんが教えてくれました。

今回は子役さんではなく、笑也さんが翔んでます。この場面も歌舞伎美人か何かで写真が公表されていました。絵のようなとても素敵な場面でした。

お客からも歓声が起き、花火大会会場のような(笑)夏らしい演出に盛り上がりました。最高!


幕間になるとまたざわつく。これが澤瀉屋の芝居。余韻がいいのですよね。このまま三幕の宙乗りまで一気に話が進んでいきます。


aya


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