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【2019シーズン】ヤクルトスワローズ観戦記

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ヤクルト観戦記、2019年シーズンはこちらにまとめて入れていきます。(オープン戦含む) 勝った日も、負けた日も、試合のある日は毎日更新しています。
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#神宮球場

「やくるとがよわいんじゃなくてあいてがつよいんだよ」とむすめが言う【8/23阪神戦●】

エラーをして走者を出したおっくんは、真っ先にマウンド五十嵐さんのところへ向かった。五十嵐さんは、おっくんに大きく頷いたように見えた。 まだ若いおっくんがそこに立ち、五十嵐さんが投げる時、少なからず緊張だってすると思うのだ。大先輩が投げる時にミスをしてしまったら(もちろん誰が投げる時だって同じなのだけれど、それでも心情的に)気まずいだろうし、「やっちまった感」は大きいだろうと思う。 だけどもちろん(それはもちろんと言える)、おっくんはいつものように、五十嵐さんの待つマウンド

チームの勝利と、個人の記録と。【8/18中日戦◯】

ブキャナンのヒロインを見ていると、いつも泣いてしまう。そしていつも、良い時も、悪い時も、応援していこう、と、思う。誰しも良い時も、悪い時もあるのだから。 だけど今日のブキャナンを奮い立たせたのは、もちろん家族と、そして後ろの守備も大きかったのだろうなと思う。 何度も言うけれども良いピッチャーというのは、ピンチを招かないというよりは、招いたピンチをしっかり乗り切ることのできるピッチャーだ、と、基本的には思っている。 ランナーを出しても乗り切ることができる、そして、エラーが

スマートじゃなくていい。そこで掴み取る一勝に拍手を【8/17中日戦】

情報量が少数精鋭の神宮バックスクリーンに、「B7」の文字が輝く。そうつまりヤクルトは、四球を7個与えていた。とても味わい深い。 与えた四球7個とヒットの9本分くらいはとにかく、生きた心地のしない試合であった。満塁の(文字通りの)ピンチを招くたびに、私は軽く絶望し「こりゃだめだわ…」とつぶやいた。だけどそのたびにヤクルトは、もはやよくわからないけれどもそのピンチを何とかかんとか息も絶え絶え乗り越えた。 「ブルペンデー」とあらかじめ決められた日だった。平井くんは、プロ10年で

いつだってそこが転機になるのだと信じて【8/16中日戦●】

スーパーカツオさんのスーパー好投の余韻は、まだ神宮全体に残っていた。だけどまあ、どんな時も、新しい試合はやってくるのだ。良い時も、悪い時も。 ライアンは、初回に2ランを2本打たれ、4失点をした。いつだって現実は、向こうから急にやってくる。 結局その4失点のみで、ヤクルトは今日も負けた。4回表、たいしのホームランから始まった攻撃で、ここからまた反撃開始か、と、思ったものの、無死満塁の好機は今日も生かしきれず、そのあともタイムリーが出ず、エラーもあり(失点はしなかったけれど)

「誰かのため」と心から思えるそんな日に【8/14横浜戦◯(はなまる)】

8回表、カツオさんが伊藤裕季也からホームランを打たれた時、一塁側からは、今日一番の大声援と拍手が送られた。それはとてもとても、あたたかい拍手だった。 ノーノーを達成した瞬間じゃない。ノーノーが破られた瞬間だ。だけどヤクルトファンは、その瞬間に、大きな大きな拍手を、小さな大エースに送った。 そういうところだ、と、私は思った。ヤクルトファンの、そういうところが大好きだ。 その拍手に応えるかのように、カツオさんは、そのあとの打者をしっかりと打ち取った。カツオさんは8回を投げき

それぞれの1本には、黙々とバットを振り続けた時間がある【8/13横浜戦◯】

ツーアウトからランナーをためる、相手のためたランナーはもれなく返す、それはいつものことだ、今さら驚くことでもない。と、思いつつ、大きなため息とともにビールを飲む。上田はピッチャーの登板前にもちゅーした方がいいんじゃないのと思う。それくらいのことしかもう考えられない。 サヨナラの余韻が残る中、迎えた試合だった。だけどまあ、そうなのだ、なんだってそううまく行くわけじゃない。だけど一つのミスからなかなか立ち直れないピッチャーを見るのは、なかなかに辛い。 なっしーが5失点をした後

どうか19歳の人生が「野球をやっていてよかった」と思えるものでありますように【8/12横浜戦◯】

その打球は、私たちが座っているライトスタンドの方めがけて、すっと飛び込んできた。まるで、ライトスタンドが打球を呼び込んだみたいに。村上くんのタオルを掲げていた熊本出身のオットが、大喜びではしゃいでいる隣で、私は目の前で起こったことがなかなか理解できなかった。 いつもそうだ、私はどんなことも、ストンと自分の中に落ちるまでに時間がかかる。 それが、村上くんのプロ初打席だった。新井さんが神宮での最終戦を迎えたその日、村上くんは、プロ初打席で、ホームランを放った。 あれからもう

だけどベテランにしかできない仕事がきっとある【8/8阪神戦●】

(※ベテランというのはきよしのことではありません、念のため) 阪神ファンの「あと一球!」コールが神宮に響く。ライトスタンドからは負けじと「奥村コール」がかかる。だけど阪神ファンの声に、ヤクルトファンの声はかき消されそうになる。昨日と一昨日は気づかなかったけれど、球場は結構な黄色に染まっていた。広島戦の赤ほどではないけれども、まあこれは、結構、黄色だ。 友人の息子くんが夏休みの自由研究に各球場の特徴について調べていて、神宮の特徴について聞かれたけれど、「多くの場合、ビジター

188cmの19歳と、167cmの39歳と。【8/7阪神戦◯】

「カツオさんを「生きる見本」だと言う、田畑さんのコメントを見かけて、そうだよなあ、生きる見本だよなあ、と、改めて思う。 打ち込まれる日もあった。イニングの途中でマウンドを降りることもある。でもそれでも、何度も何度もそこに戻ってくる。その度に、少しずつ、あらゆる調整をして、考えて、考え抜いて。 その小さな身体で、それを短所ではなく、長所にでもするかのように。みんなが持っているものはないかもしれない。でもだからこそ、みんなができないことが、できるのだ。ないものを長所にする方法

おっくんの笑顔が「本当に」チームを救う、それは優しい一勝だ【8/6阪神戦◯】

半月ぶりに戻ってきた東京には、ようやく夏が来ていた。暑いねえ、と、言いながら、ビールを飲む。神宮には、夜の風が吹き抜けていく。 どれだけ負けている試合でも、この空気があればなんとなく、救われるような気がしていた。それは、去年も、一昨年も。 だから5回裏、花火が上がるのを見上げながら、「まあ、良いか、負けても。花火は今年もきれいだし」と、私は思った。久々の神宮は、目の前の試合が負けていてもやっぱり、私の好きな場所だった。 だけど今日のヤクルトは、久々に、「花火の時間を過ぎ

勝つことだってある、という希望を胸に【7/17巨人戦○】

ツーランを打たれた山田大樹さんを、ベンチのみんなが拍手で迎え入れた。監督とコーチはじっと、グラウンドの方を見ている。 元サラリーマンとしてはなんとなく胃がきゅっとしながら、同僚のあたたかさにほっとした。みんないつだって、必死で前を向こうとしているのだ。それは16連敗中のベンチからでだって感じたことだ。 待ちわびた夏の日差しが、少しだけ注いでいた。私の思う「夏!」にはまだほど遠いのだけれど(そしてその季節はあまりに短いと知ってしまったのだけど)それでも夏の始まりの空気をよう

あの日11号館で「愚直であれ」と学んだように【7/16巨人戦●】

それは結局、恋と同じなのだ。 基本的にはうまくいかないことも、求めれば求めるほど指の間をすりぬけていくことも、本当の気持ちは口には出せないことも。 報われぬ恋なのだと知っている。どれだけ笑っても、例えば同じ時間を過ごしても、その恋が、求めるままの結末を迎えることは決してない。 だけど、それは私の人生にかすかな痛みを伴いながら、ささやかな彩りをもたらす。 誰かにとってそれは、生きているなぁ、と感じられるものかもしれない。それはほぼ痛みで形作られたものだけれど、でも雨に打

たいしのバントと、雄平の代打と、それぞれの役割と。【7/10横浜戦◯】

あのスクイズが決まらなかった時のことを、今でも何かあるたび思い出す。あの日、たいしはどんな気持ちでベンチに戻ったのだろう。そして、どんな気持ちで戸田へ向かったのだろう。 今日、たいしは、8回裏、1アウト1塁の場面でバントの構えを見せた。 あの日と同じことを私は思った。いや待って、たいしには打たせてあげて、と。 たいしは、1球目で失敗し、2球目は見送った。あの日のスクイズ失敗が頭をよぎる。でもたいしは3球目でしっかり、見事にバントを成功させた。 ベンチでみんなに笑顔で迎

その離脱の経験だって、糧にして 【7/8横浜戦◯】

神宮へ向かう電車の中で、なおみちがいる打順を、子ども達と予想しまくった。 なおみちを1番にしても面白いかもしれないし何なら2番でもいいしもちろん6番とか7番とかでもいい。なんといっても、なおみちがショートに入ってたいしと一緒に内野を守ることだってできるわけで夢が広がりまくる。 なおみちが一人いることでこんなに可能性が広がるよどうするよ!!と、私たちははしゃぎまくっていた。それはあの、希望だらけのオフのワクワク感に似ていた。 *** プロ野球という厳しい世界に身を置く選