#82 ノラ・ジョーンズ『ヴィジョンズ』
ノラ・ジョーンズ『ヴィジョンズ』
オリジナル作品としては約4年ぶりになるが、この間ノラ・ジョーンズは、ポッドキャストでさまざまな人たちと共演し、セッションの一部を動画でも公開してきた。以前ここでも少し触れたけれど、その形式ばらず、自由に演奏を楽しみながらも音楽に対して真摯で、クリエイティヴなセッションに心惹かれた。その雰囲気をまさにまとったこの新作は、プロデューサーのリオン・マイケルズと2人だけでレコーディングされたという。
ノラがピアノとギター、リオンがドラムを叩き、さらにノラが多重録音でバックコーラスを担っているんだけれど、その甘くノスタルジックなハーモニーがすごくいいのだ。
ノラと言うと、もう20年以上も前なのにどうしても『ドント・ノー・ホワイ』をまだ期待してしまうからか、最初こそ明るい曲調の始まりに少し違和感があったけれど、終盤のまったりとした『アーロン・ウィズ・マイ・ソーツ』やエレガントな『ザッツ・ライフ』になってくると、あの独特の抑揚で歌う歌でどんどん心酔わせてくれる。
彼女自身は、「ガレージっぽい」と表現しているようだけれど、加工しない、ナチュラルで、もっと言えば、生きた音楽といった感じで、しっくり耳に馴染むし、ゆらゆらとゆりかごに揺られているような気持ちよさが続いて、肩の力が抜けていく。これがノラ・ジョーンズのマジックなんだと思う。
服部のり子
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