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ニルスロ・フグレン/1975

ニルス・ロフグレン/1975

1.ビー・グッド・トゥナイト
2.バック・イット・アップ
3.土曜の夜に
4.イッツ・ソー
5.知りたくないよ
6.キース・ドント・ゴー
7.最後のチャンス
8.デューティー
9.希望の日
10.ロックン・ロール・クルック
11.一人残されて
12.ゴーイン・バック

◆所感
ウェストコースト系の乾いたサウンド。
しかし、聴いていくうちにやけに「ギターがこだわっている」のが気になって仕方ない。フレーズの構築や録音の聴こえ方が他と違う独特の音楽観がある。
シンガーソングライターの作風なのに、そのこだわりから自然と「本気のバンドサウンド」仕様に変貌。
ギターの録音がどうれば良く鳴動するかわかってる。
歌が気負ってない。ギターと自作の曲にうまく融合している。※ギタリストのボーカルの典型パターン。

◆ソロアルバムなのにバンドサウンドなのはなぜか?
ニルスロフグレンの初ソロ作品。

ドラマーをエインズレー・ダンバーという人物を起用している。
ジャズ、ブルース、ロック、ハードロックまでできて、フランク・ザッパに在籍もした人物。
しかしこの有能なドラマーとどのようにして参加の交渉をしたのだろうか?
このドラミングが躍動感有る。収録曲を非常に理解しているし、作品の完成度を一段階上にも上げている。

ニルスのギターが躍動感と細部に渡るこだわりがバンドサウンドになっている。

◆ピアノ、アコーディオンとギターを幼少から習得
「楽器がわかっている」人の本質的な作品なので経歴をみると、クラシックもジャズも勉強していたようだ。
ピアノもこの作品ニルス本人が弾いてるが、技術もさることながらロックにおけるピアノの躍動感の配分というかエッセンスが非常に上手い。

◆収録曲評価
1.ビー・グッド・トゥナイト 
リトルフィート風コンプレッサーと空間系エフェクターを混ぜたスライドギターを冒頭に持ってくる秀逸なセンス。

2.バック・イット・アップ 
フェイザー(空間系エフェクター)が2本ギター重ねて録音ているがヘッドフォンで聴くとこの音の配置が非常に上手い。曲がギターのこと気になって入ってこない。

3.土曜の夜に 
アコースティックギターをフロントで鳴らし、さらに奥にシングルコイル系(ストラトでしょう)の音を配置して録音してるのが関心するし、両方の音が気持ちいい。気持ちいいついでにワウペダルのソロも途中から被せてくるが、フレーズもワウのクリーミーなトーン(音色)もギターがわかっている人の演奏だ。

4.イッツ・ソー 
ニールヤングっぽい曲。やはりここもストラトのトーン(音色)が際立つ。
詰め込んでるけど、歌が邪魔にならない絶妙なフレーズ展開が聴きどころ。

5.知りたくないよ 
エインズレー・ダンバーのドラム、単調なテンポだが音量もスネアの響きも気持ちよくて上手い。

6.キース・ドント・ゴー 
ローリング・ストーンズのキース・リチャーズへの曲。そのせいなのか考えすぎかもしれないけど開放弦フレーズが多用されてる。開放弦でのギターの弦が本当に良く鳴っている。ギターの鳴らし方がこの曲でも気になってしまう。

7.最後のチャンス 
ザ・バンド風と感じ取ったが、アコースティックギターと後ろで鳴るシングルコイル系のスライドギターの配分がここでも秀逸。

8.デューティー 
ずっと後ろでスライド・ギター弾いてるが歌に邪魔にならずに共存させてのが上手い。

9.希望の日 
エインズレー・ダンバーのドラムはここでもバンドサウンドになっている。ピアノも良く鳴らしている。

10.ロックン・ロール・クルック 
過去に関わったクレイジー・ホース風なバンドサウンド。短いけど、重ねたギターソロのフレーズが考えられて弾いてるのがよくわかる。終盤のギター・ソロの複数も歌を邪魔せず上手く共存。フレーズとタイム感や音数がここでも絶妙。

11.一人残されて 
アコースティックギターのソロもフィンガリングがしっかりしてるので音の粒立ちが良い。

12.ゴーイン・バック 
唯一のキャロ・ルキングカバー曲。オリジナルに比べて独自アレンジでピアノ主体でテンポ上げて疾走感にあるバンドサウンドに変身している。このカバー曲の独自アレンジやセンスも良い意味で想像を裏切る。あえて最後にするのも意図的な感じが伝わる。

◆総評
ソロ名義だが、シンガーソングライターとギタリストのこだわりの両方を追求した結果バンドサウンドの作品に変貌した。
バンドサウンドとしてが聴くと違った音の風景、作風を感じるだろう。
ギタリストはギターの鳴らし方やどこまで歌が邪魔せず弾きまくれるか。そういった加減が楽しめる作品。
アコースティックギターもエレキも重複録音が素晴らしい。どちらも音が埋もれていない共存の絶妙さを堪能できるのがこの作品の楽しみ方だ。

全米チャートでは141位だが隠れた名盤。


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