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ジャーニー グレイテスト・ヒッツ 1989 リマスター・バージョン / Journey Greatest Hits (2024Remastered)

全ての音楽ファン必聴の2024年リマスター作品

アメリカの巨大ブランドのロック・バンドのジャーニー。
1989年にリリースされたグレイテスト・ヒッツを2024年1月、元ボーカルのスティーブ・ペリーが監修した新規のリマスター・バージョンがリリース。

アメリカの歴代ベストセラー・アルバムのトップ15、アマゾン・ミュージックのロック・チャート27位のグレイテスト・ヒッツ・アルバム。

アマゾン・ミュージック、YOU TUBEで視聴可能。

再定義されたリマスター

各曲で異なるスタジオやサウンド・プロダクション、流行のセッティングの統一化。
1970年代末期と1980年代前半から1986年までの1年単位で進化する録音技術や時間軸のバラつきを現代の価値観で今回再定義した。

微細な楽器の鳴動や分離、また立体的な自然な空間の心地良さなど念頭に置いたリメイク作品となっている。

曲目

1.Only the Young
2.Don’t Stop Believin’
3. Wheel in the Sky
4.Faithfully
5.I'll Be Alright Without You
6.Anyway You Want It
7.Ask the Lonely
8.Who's Crying Now
9.Separate Ways (Worlds Apart)
10.Lights
11.Lovin', Touchin', Squeezin'
12.Open Arms
13.Girl Can’t Help It
14.Send Her My Love
15.Be Good to Yourself
16.When You Love a Woman

曲目感想

1.Only the Young
映画のサウンドトラックのスポット曲で発表されバンドのアルバム作品に収録が無い曲。

抽象的な表現だが、揮発性ワインがスパークするような、1985年でしか録音できないゴージャスなジャーニー・サウンドが詰まっている。
スティーブ・ペリーのボーカルの位置も気持ち前面とエコーの空間とコーラスのさり気ない強調が心地良くリミックスされている。

80年代特有の重低音のスネアのドラムが今回奥に抑え、流麗なアルペジオのアコースティック・ギターを少し前面に強調した仕上がりになっている。


2.Don't Stop Believin'
イントロのピアノがここも気持ち程度に前に来ていて、それに沿った形にボーカルが再配置されている。ギターのハーモニクスと高音のグリッサンドも星のように煌びやかだ。

さして何よりボーカルのスティーブ・ペリーの魅力が凝縮。ハイトーンの少し苦しい箇所などはロックを感じる。前の曲との流れがすんなりと聴けてしまう。

3.Wheel in the Sky
イントロのアコースティック・ギターのポジションを移動する微細な音も鮮明で目の前で鳴動している。
そこからすかさず入るエレキ・ギターのディストーションがよりクリアで激しく生々しい。
生ピアノやアコースティック・ギターのアルペジオや複数のエレキ・ギターのバッキング音など、元々精緻に重ねられた数々のトラックをより自然で奥行もより感じられる。

4.Faithfully
ここも前の曲と生ピアノのイントロに繋がれる流れが心地良い。そんなピアノの音がクリアでライブ会場にいるかのような仕上がりにペン&モバイル・ライトを振ってしまいたくなる。

スティーブ・ペリーの孤高のボーカルが近年録音されたのかとつい錯覚してしまう鮮明さだ。贅沢な奥行具合などマスタリングに執念を感じる。

この曲の終盤の流れ。。何て美しいのだろう。。

5.I’ll Be Alright Without You
そうした前の曲の余韻を損なうことなくAOR的ミディアムテンポのナンバーに繋げていく。1986年の「Raised on Radio」のボブ・クリアマウンテンのミキシングは未だ陳腐化していない。


6.Anyway You Want It
ポップでアッパーなナンバーで、タイトル名のコーラスとハーモニーが綺麗だ。スティーブ・ペリーのボーカルとニール・ショーンのギターが絶妙に組合って、2人にしか無し得ない磁場を放っている。

ライブ会場でオーディエンスがフルで合唱してるのが手に取るようにイメージできる。

7.Ask the Lonely
1983年のアルバム「Frontiers」と同時期で映画のサウンドトラック用の単独シングル曲。
映画の作風に合わせたのか、シンセサイザーがことさら強調されている。1980年代中盤にしかないキラキラした空気が凝縮されている。


8.Who's Crying Now
1981年「Escape」からのファースト・シングルとしてリリース。
アクティブ・ピックアップ(かもしれない)装飾したベースの音が曲のキー・ポイントになっている。ベースのサスティンが長く強調しており、それがスティーブのボーカルと対峙しつつ引き立ててもいる。

後半のニール・ショーンのギターもフレーズを詰め込まずに抑制し、トーンを味わうソロ。ボズ・スキャッグスとTOTOのエッセンスを感じさせるAORナンバー。

9.Separate Ways (Worlds Apart)
ジャーニーの中でも1、2位を争う有名な曲だが、荘厳で緊迫感のある構成などバンド全盛期の曲だけあって説得力がある。

シンセサイザーを少しクリア、ドラムの音圧強めの少し前に出たリミックスに感じる。このことから作中で一番ハイライトで強調、アピールしたかったナンバーかもしれない。
各メンバー全員の長所を均等に表現できているのも特筆すべき点だ。

10.Lights
激しいナンバーを受けてからのミディアム・テンポ。「Faithfully」同様ペン&モバイルライトの全員合唱に流れていく。
スティーブのハイトーンのボーカルとオルガン、ピアノの音の配置と配分が良い。
フロント・ピックアップにセッティングした甘めなトーンのニール・ショーンの後半のギター・ソロはインフィンティのアルバム・ジャケットを象徴するかのような炎が飛翔している。

11.Lovin', Touchin', Squeezin'
多様な側面を見せるためか異色の初期ブルース・ナンバーを収録。
しかし歌のメロディがキャッチーだ。ピアノとギターのミックスを少しクリアにして前面に来ている。
1970年代後半から1980年代前半のジャーニーは、ロイ・トーマスベイカーがプロデューサーを手掛けている。音の構築が同時期手掛けていた初期のカーズと似ている。なんというか気持ち怪しい空間や質感がロックなのである。

12.Open Arms
一転してスローのブルースナンバーからの本命バラードがようやくここで登場。ピアノがかなり前に来て、生音に生命感がある。
そこからスティーブ・ペリーのボーカルが目の前で歌っているようにリミックスしている。
本家の手から解き放たれ、これからも歌い継がれるであろうスタンダード・ナンバーだ。「様式美の極み」とはこの事だ。

13.Girl Can’t Help It
Open Armsからの綺麗な余韻を残しつつ、自然に橋渡ししている。
一区切りをつける最終アルバムからの収録曲のせいか、最後の気力の炎が燃え尽きる一歩手前のようなグループの終末感がほのかに漂っている。


14.Send Her My Love
前曲の余韻から徐々に上がるドラムのリムショットの残響音の流れが曲を引き立たせている。
アクティブ・ピックアップのベースのハーモニクスの残響が強調されて聴こえる。わざと一番奥にギターを配置し、ボーカルは気持ち前面になったサウンド構築とリミックスになっている。
本作品の赤い羽根の鳥のジャケット・イメージに一番近い感じがする。


15.Be Good to Yourself

1986年「Raisedon Radio」からのナンバー。作品中で一番パワフルなナンバーを敢えて最後にしている。エンドロールの雰囲気がどこか根底に流れている。本作品の有終の美を飾っている。


※16は1989年以降の作品なので割愛


総論


バンド絶頂期から厳選された超入門編で単独の作品として聴ける

このバンドが何たるか、1980年代の時代を牽引する絶頂期のパワー、考え抜かれた選曲と納得の行く曲順や構成など制作側の意図を堪能できる。


陽のニール・ショーンのギターと陰のスティーブ・ペリーのボーカル

この2人の相関バランスこそが、それぞれの魅力を倍増させている。それが強大なバンドのエネルギーとなっている。


ジャーニーの一貫した「音楽の美学」を余すことなく享受できる作品。


終わり


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