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「TRICK」上田と山田の名前のない関係が愛おしい。

ステイホームで、好きなドラマを再度見返している。今回は、約20年前(こう書くと月日の流れにびっくりする)の名作ドラマ、「トリック」の話だ。放送時にリアルタイムでハマって楽しんでいたドラマなのだが、年月も経っているので、今見ると「あ、そんな話だった」と新鮮な気持ちになる。主役も脇役も、毎回登場する個性的な敵役も味わい深い人物ばかりだった。

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主人公 山田奈緒子は売れないマジシャンだ。長野の実家から出てきて、亡くなった父親のような一流マジシャンになることを夢見ている。父親は有名なマジジャンで、その腕から自称霊能力者と対決し、彼らの仕掛けやトリックを暴いていた。だが、奈緒子が子供の頃にマジックの練習中に事故死している。その山田が、超能力や超常現象に否定的(の割に騙されやすくてビビリ)な物理学者 上田次郎と出会う。2人は上田のところに持ち込まれるさまざまな自称・霊能力者絡みの厄介な事件や騒動に巻き込まれ、それを奇術のトリックの知識と物理学の知識を使って暴いていく。

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一期では、「自称霊能力者VS山田・上田コンビ」という図式で、毎回登場する自称霊能力者たちのインチキを暴くため、潜入し超能力対決をする。深夜枠だったこともあり、下ネタが多い。「貧乳」「巨根」という2人のコンプレックスが作中で明らかになり、それにまつわるネタが盛りだくさん。今思うと、20代若手女優だった仲間由紀恵に「貧乳」、元モデルの阿部寛に「巨根」という設定を付けてるのすごいなと思う(笑)。まぁでもこれで2人ともブレイクしただろうから結果オーライか。
シナリオ構成としては、基本的に霊能力者のインチキを暴いて終わるのだが、最後は真相を暴かれた霊能力者が自殺したり、事件は終わっても騙された人たちは救われなかったり…とちょっと後味が悪いのも特徴的だ。

そして、霊能力者達は去り際に必ず奈緒子に「本物の霊能力者は存在する」ことを仄めかして終わる。これも最終回に繋がる伏線なんだけれど。
最終回、奈緒子と霊能力者との関係が明らかになる。奈緒子の母親は、実は沖縄のとある島の霊能力者家系の出身であり、父親と駆け落ちしてきたこと。自分にも本物の霊能力者の血が流れており、父親の死には自分も関係しているかも知れないことが明らかになる。奈緒子は自分のアイデンティティが揺らぎ、島に帰って霊能力者として島の男と結婚することを選ぶ。
そんな奈緒子を見逃せず、島に乗り込んで助けにくる上田が最高にいい。こう書くとラブロマンスのようだけど、そうじゃない。
山田も上田も、立場や育ちは違うが、人間関係に不器用なコミュ障。友達のいないぼっち同士。似た者同士で、喧嘩しながらもお互いの知識や力を合わせて戦っていくうちに、絶妙なコンビネーションが生まれていく。
2人の間には確実に信頼関係が生まれているのに、本人たちは人間関係の経験値が低すぎて、それが何なのか理解できていない。本人たちが自覚していないため、上田も命を張って島まで奈緒子を助けにいくのに、そのまま何にもならず、事件解決後も、結局2人で仲良く喧嘩しながら終わる。その「言葉にならない関係」がたまらなく愛おしい。


友人でもない、恋人でもない。仕事というにはお金にならない。探偵と助手のようだけど2人とも別に正義感があるわけではない。それらを絶妙に行き来しながら、何にもカテゴライズされない微妙な関係の2人が、シリーズを通して少しずつお互いを大事な存在として認識していく様子が、焦ったくも愛おしい。

そうやって遅々として進まない2人の関係を愛でながら、随所に散らばる小ネタやギャグを拾いながら、脇役の味の濃さにやられながら、あまり救いのない結末を見てちょっとだけ心がギュってなるのが、トリックなのだ。

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(たぶん続く)




▼筆者はトリックもインチキもない占いをしていますよ。笑



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