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ピアノ伴奏に関しての備忘録

先日、コンクールで4人伴奏した翌日、別のコンクールを聴きに行くという、ピアノ伴奏について考えるのにもってこいの機会があったため、改めて思うところを記しておく。

コンクールというのは、往々にして、出場者の曲が被る。これは、いわゆるコンクール映えする、上位を狙える曲というのが、ある程度限られているということもあるし、存分にテクニックや表現力を披露できる曲を選ぶと、どうしても同じような曲になってしまうという、仕方のない面もある。

こういった状況から、コンクールでは同じ曲を、続け様に、違う伴奏者で聴く機会が多い。そのため伴奏を分析するには、打ってつけの機会である。様々な伴奏を聴くと、参考になる点が多々あり、自分自身の勉強にもなる。

1、楽器の邪魔になるような伴奏は論外だが、平坦な伴奏も同じくらい良くない。せっかくソロ演奏者が素晴らしい表現をしていても、無表情な伴奏はそれを殺してしまう。上手い伴奏者は、とりわけコンクールでは硬くなりがちなソリストを煽るように、表現力を引き出していく。

2、伴奏のダイナミクスの幅が狭いと、ソリストの演奏が引き立たない。よく伴奏で言われるのが、cresc.は楽器より遅れて、dim.は逆に早めにかけると、音楽が魅力的に聴こえるということである。上手い伴奏は、この2つのタイミングが絶妙であり、例えソロ楽器がほとんど強弱をつけなくても、あたかも一緒にcresc. / dim. しているように聴かせる。

3、互いの呼吸が合っていない演奏は、ちぐはぐな印象になる。通常、伴奏者がソリストの呼吸を読んで、合わせる必要がある。いくらテクニックが完璧でも、勝手に弾いているだけでは、伴奏とは言えない。伴奏者は、常に、ブレスやボーイングを感じながら演奏することが要求される。音楽が一体化しているかどうかが、アンサンブルの魅力を左右する。これは、両者の信頼関係も影響していると思う。長年一緒に演奏しているような場合、例え本番で少し違うrit.をかけたりしても、違和感なく息が合う。

4、管弦楽器の伴奏では、往々にして、ペダルを使い過ぎている印象を受ける。管弦楽器は、音色を操作しながら持続出来るので、ペダルは控えめの方が、ソロ楽器を生き生きと聴かせることが出来るように思う。2つの楽器の音が重なるため、ペダルを使い過ぎると、アーティキュレーションも曖昧に聞こえやすい。特に音響の良いホールは要注意である。

5、通常、伴奏者は周辺視野でソリストを捉えつつ、楽譜を見てピアノを弾くが、ポイントとなる部分では必ずソリストの動作を見て音を合わせ、またソリストは伴奏者に分かるよう動作で合図を送る。これを全くしないと、絶対合わせるべき部分が合わず、音楽が崩壊する。少しコツが要る場合もあるので、慣れていない場合、指導者がポイントを教えてあげるのが良いと思う。

6、伴奏は最初から最後までずっと伴奏という訳ではない。コンチェルトの伴奏などだと、ピアノが長いソロを弾くような場合もある。そういった箇所は遠慮せず、音量を出して弾いた方が良い。ソリストもそれを聴いて、気分が盛り上がるというものだ。伴奏者に必要なのは、引くところは引き、出すところは出す、絶妙なバランス感覚である。

7、伴奏は、ピアノソロで弾く時よりも、アーティキュレーションをはっきりつけた方が、全体の演奏が聴きやすくなる。2つの楽器が同時に音を出すため、曖昧なアーティキュレーションは、ただ背後でピアノが鳴っているだけのような、散漫な印象に聴こえてしまう。フレージングも然り。そもそもピアノは音を構築するだけの楽器なので、伴奏は工夫して弾かないと、まとまりがない感じになり易い。

8、楽器音以外の雑音は控える。ピアノを弾く際、足を振り上げたり下げたりする癖のある人を時々見かけるが、床を踏むたびに雑音が生じるので、伴奏する際は極力やめた方がいい。ホールは思った以上に音響が良いので、小さな音でも響く。これはソリストの演奏の邪魔になる。

以上今回の分析と感想でした。

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