バッハを聴く 音楽の捧げもの&マイム
ミューザ川崎シンフォニーホール「音楽の捧げものBWV1079」のコンサートに行ってきました。
ホールアドバイザー松居直美 企画
音楽で魅せ、マイムで紡ぐフリードリヒ大王とJ.S.バッハの物語
言葉は音楽、音楽は言葉 Vol.5
音楽の捧げもの BWV1079
2024年2月17日
パイプオルガン:松居直美
バロック・フルート:前田りり子
バロック・ヴァイオリン:寺神戸 亮
ヴィオラ・ダ・ガンバ:上村かおり
チェンバロ:曽根麻矢子
マイム:マンガノマシップ
バロック界の第一人者たちによる演奏に加え、
バッハが『音楽の捧げもの』を作ったストーリーを、
マルセル・マルソーの薫陶を受けた
フランスのマイムユニット=マンガノマシップが表現する
「聴く」+「観る」コンサート。
今までにない企画です。
<プログラム>
3声のリチェルカーレ
王の主題による無カノン
王の主題による種々のカノン
2声の逆行カノン
2つのヴァイオリンによる同度のカノン
2声の反行カノン
2声の反行の拡大によるカノン
2声の螺旋カノン5度のフーガ・カノニカ
2声のカノン
4声のカノン
王の主題によるフルート、ヴァイオリン、通奏低音のためのトリオ・ソナタ
I ラルゴ
II アレグロ
Ⅲ アンダンテ
IV アレグロ無窮カノン
6声のリチェルカーレ
『音楽の捧げもの』が作曲されたストーリー
『音楽の捧げもの』は1747年、バッハが62歳の時、息子エマヌエルが仕えるフリードリッヒ大王の宮廷を訪問したことから生まれた最晩年の作品です。大王から即興演奏のための主題を与えられると、バッハは3声のフーガをフォルテピアノで演奏します。その演奏は大王やお抱えの楽士たちが息を呑むほど素晴らしいものでした。さらに、6声のフーガをリクエストされますが、その場での作曲はさすがに難しいので、ライプツィヒに宿題として持ち帰り、13曲からなる曲集に仕上げ、大王に献呈しました。それが『音楽の捧げもの』です。
マイムって何?
『パントマイム』は大道芸のイメージがありますが、ただの『マイム』というのはどういう意味なのでしょうか?
調べてみると、『パントマイム』は身振り手振りで物事を表現するもので、身体の中でも顔の表情がもっとも重要になリます。
一方、『マイム』は『パントマイム』の流れを受けて20世紀に成立したもので、顔の表情よりも体幹の動きを重視するとのことです。
例えば、「壁」を表現するとき、『パントマイム』はそこに「壁」があることを観客に伝えますが、
『マイム』では壁の「質感」、壁を「触ったときの感情」までも表現することを目指すのだそうです。
マイムユニット=マンガノマシップさんからのメッセージはこちらから
動画から一部抜粋:
音楽家がどのように音を奏で、遊び、楽しみ、アイディアを構築し、作品に感情を込め、自由な想像力に力を開くかー
私たちは音楽と即興という二つの寓話的なキャラクターを演じることで、創作する音楽家のうちなる動きを可視化したいと考えています。
楽譜からインスパイアされた白と黒のステージで、私たちは象徴的で遊び心に満ちた世界(言葉)を創作する予定です。
音符・楽譜の線、音楽の動きを、踊る”詩”として表現したいのです。
もちろん、歴史の舞台となる宮廷の”言葉”も同じくインスピレーションの源になっています。
今回は小道具として、楽譜や馬のマスク、目玉や鼻、白い大きな布、五線譜や音符をイメージするボールなどを使い、作曲ストーリーを表現していて、想像性に富んでいて、とても面白かったです。
器楽による音の波=曲線に加え、マイムによる空間に描かれる曲線がかけ合わさった時、曲そのものと作曲ストーリーが立体的に浮かび上がるという新しいアート体験でした。
さて、突然ですがアンクルバッハからクイズです。
Q: バッハが『音楽の捧げもの』を献呈したフリードリヒ大王が得意だった楽器は何でしょう?
1. バロックフルート
2. バロックヴァイオリン
答えは、このページの一番下をご覧ください。
アンコール BWV668a
バッハは目の病で2回の手術をするも失敗に終わり、高熱と炎症に苦しみながら視力を失います。
亡くなる10日前、死が間近に迫ったことをさとったバッハは、弟子を枕辺に呼びコラールの改訂を口述します。
その原曲となったコラールは「われら悩みの極みにありて(BWV641)」という歌詞で始まる曲ですが、これをバッハは死の床で深遠なオルガン曲に再編し、表題を「御身の御座に、今ぞわれ進み出で(BWV668)」に変更しました。
このようなエピソードは知りませんでしたが、厳かでとても美しい曲でした。
答えは 1. バロックフルート です。
バッハ自身は『音楽の捧げもの』で楽器指定をしていませんが、フリードリヒ大王がフルーティストだったので、今回の演奏会にもバロックフルートが登場しました。フリードリヒ大王は1日のうち4時間は音楽を研究、練習、演奏して過ごしたとされるほど、音楽とフルートを愛したとされています。
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