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(音楽話)88: Raul Midón “Spain” (2021)

【情熱】

Raul Midón “Spain” (2021)

2021年2月9日、79歳で亡くなったChick Corea。彼については最近ご紹介したことがあるので、よろしければ以下を。

Chickのキャリアにおいて、クロスオーヴァーの名プロジェクトReturn To Foreverは、彼の名声を確固たるものにしたばかりか、その音楽性の汎用性、野心、追究心が無尽蔵であることを世界に知らしめた、非常に恐ろしいグループでした。
Spain”はそのRTFのアルバム「Light as a Feather」(1972)に収録。スペインの作曲家Joaquín Rodrigo Vidreが1939年に発表した「Concierto de Aranjuez/アランフエス協奏曲」(ギターと管弦楽)に着想を得て、全編動き回るコード展開とフレーズの速さ=感情の迸りを表現した、Chick Corea代表作。この曲は特に多くのギタリストに愛され、そのうちAl Jarreauが歌詞を付けて歌うと大勢のシンガーもカヴァーするに至ります。ご存知の方が多いかもしれませんね。

そんな”Spain”を歌い、今回彼を偲んだのはRaul Midón

2005年の彼のデビューは、それはそれは衝撃的でした。CD屋で試聴したデビュー作「State of Mind」の1曲目=同名曲は私を混乱させました。ど、どうやって弾いてんだよ…!?スパニッシュ・ギターのように聴こえますが、どう考えてもナイロン弦じゃない。金属的なトーン音の響き、ピックでは出ないまろやかな高速カッティングに愕然。そしてヴォーカルの力強さ、ファルセットのクリア感、節回しの手練感…CD持って即レジに向かったのは言うまでもありません。

Raul Midón “State of Mind” (2005)

66年米国ニューメキシコ州生まれ。音楽の才がずば抜けていたようで、マイアミ大学でジャズコース専攻、卒業後はセッション・ミュージシャンとして活動し始めます。ニューヨークに居を移してシンガーとしてのキャリアを追求、前述「State of Mind」で2005年デビューしました。ヴォーカルとしての力量だけでなく独特のギター奏法とテクニックは話題となり、Stevie Wonderの再来と言われたこともありました(Raulは生まれた直後の医療ミスで全盲。ちなみに双子で、兄?弟?も同じく目が見えないんだそう)。以降数々のアルバムをリリースし、特に同業者の間でファンの多い印象です。

歌詞云々は置いておいて、まずはこの音を目を閉じて味わってみてください。熱い演奏、熱い歌唱はメリハリが効いていて快感。軽快なギター・カッティング、この曲の特徴であるメイン・メロディ(歌メロ)をギターが単音でユニゾンする様の澱み無さ間奏部分のトランペットはRaulが口で華麗に代用…ポイントだらけです。
そしてもう一度、今度は映像を楽しんでください。部屋のインテリア、色味、雰囲気、なんか嫉妬してしまうくらいの美しさ…は置いておいて、ギターの弾き方、思わず引くはずです笑 なんでその構えでギターずり落ちないの?デカい手でコードを余裕で制覇右手のピッキングの仕組みは…よくわかりません…

超情熱的。カッコいい…昇天モノです。

Raul、歌詞を一部間違えて歌ってますが、そんなのどうでもいいです。「僕らの愛はセピアに染まった」けど、「あの歌が流れるたびに 僕の心は燃え上が」って、「僕らの季節を また始める時が来たんだ」。そして「君は今 僕の腕の中にいる」。永遠の愛というテーマですが、メロディのクセが強烈で実はあまり歌詞が頭に入ってきません…Al、歌詞無理矢理作ったかい?笑

この曲は流石に、歌唱もひとつの音要素として捉えた方が良いみたい。色んなヴァージョンが存在するので、皆様も是非探してみてください。

5月も始まり、皆様いかがお過ごしですか?
素敵な日々が来ますように。

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