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(音楽話)27: Janis Joplin “Raise Your Hand” (1970)

【削命】

Janis Joplin “Raise Your Hand” (1970)

あまりに有名なシンガー、Janis Joplin。近いところでは5年ほど前、Natalie Portmanが出演したDiorのCMに”Piece of My Heart”が使われました。この曲がCMのストーリーをより印象的なものにしたと思うのですが…ご記憶ありませんか?(ちなみに私Natalieの大ファンです←不要な情報)

Miss Dior (official director’s cut)

1941年米国テキサス州生まれ。ブルースを聴いて育ち、聖歌隊で歌の喜びを知った彼女は歌の世界にハマり、63年にサンフランシスコに移住しフォーク・シンガーとして活動し始めます。当時流行ったヒッピーに入り浸り仲間とバンド・Big Brother & the Holding Companyを結成、67年に同名アルバムをリリースしましたがほとんど売れませんでした。しかし彼女の激しいヴォーカルとパフォーマンスは徐々に注目され、67年に出演したMonterey Pop Festivalでの伝説的なライヴでその評価は一気に高まり、69年のWoodstock Festivalへの出演で決定的となります。その一方でサンフランシスコの頃から重度のドラッグとアルコール中毒だった彼女は、70年10月4日、宿泊先のハリウッドのホテルで遺体となって発見されます。公式では「致死量を超えるドラッグの使用による中毒死」。制作中だったアルバム「Pearl」は翌71年1月に遺作としてリリースされ大ヒットしました(Pearl=彼女の愛称)。

映像は70年、死去の数ヶ月前、The Ed Sullivan Show出演時のもの。Edが「ポピュラー・ロック・スター」と彼女を呼び込んでるのはどうかと思いますが…。”Raise Your Hand”は元々Eddie Floydの67年の曲で、それを彼女が好んで歌っていたものです(Woodstockでも披露。本映像はTVサイズなので短め)。
声を聴けば全てわかると思います。歌唱もフェイクも節回しも異常です。しかも誰でも分かるくらい、本能であるが故に歌っている側から削られていく魂…とても20代が出せるものではありません。歌の世界に入り込んで恍惚と歌っているように見えますが、私には彼女がどこか寂しそうに見えます。バック・バンドは楽しそうに演ってるのですが、彼女だけ目が虚ろというか…今にも暴発してしまいそうな気がするのです。
実際の彼女はとても内気で、周囲との人間関係は決して良好ではなかったそう。本当の自分を理解してくれる人を探し続けた過程として奔放な恋愛遍歴(男女問わず)があったのは有名な話で、結局のところそれが満たされることはなかった、ということなのかもしれません。

若くて亡くなったJanisですが、それで良かったなんてわけがない。「27 Club」、つまり27歳で死んでいった有能な若者を伝説に仕立てた括りがありますが、大嫌いです。かといって、生き続けることが正義だと言うつもりもありません。生きるも死ぬも、なるようにしかならない。ただ少なくとも、彼女が遺した歌の数々は時代を超えて途轍もなく胸に突き刺さるものであり、そんな彼女がその後も生きていたら…と考えると残念ではあります。

Janisの歌声は聴く者の心へダイレクトに何かを訴えてきます。あなたには何が聴こえますか?私は…ここでは止めておきます、皆引くだけなので笑

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