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(音楽話)102: Laufey “Christmas Dreaming” (2023)

【小さな幸せ】

年齢を重ねば重ねるほど、年月はあっという間に過ぎていく。それは私たちが、生きることに慣れ、日々の驚きや初めての体験、小さな発見を失っていくからかもしれません。無関心というか、既視感あるものはそのまま流してしまい、そこから何も得ようとしていない。
私たちは、すべてを当たり前と思ってしまいがちではないかと。

Laufey、本名Laufey Lín Jónsdóttir。日本語的には「レイヴェイ」と読みます。1999年、ジャズ大好きなアイスランド人の父と、ヴァイオリニストな中国人の母の間に中国・広州で誕生。
(双子の妹・Júníaもヴァイオリニスト&LaufeyのCreative Director)
4歳でピアノ、8歳でチェロを始め、並行して歌も習ったそう。15歳の頃にアイスランド版Britain's Got Talentでファイナルまで進むと注目を集めます。その後2021年にはバークリー音楽院をPresidential Scholars(大統領認可の奨学生。奨学金制度としては最高峰)で卒業。出来杉。

2020年、シングル"Street by Street"でデビュー。ラジオで火がつき、地道なライヴ活動が話題に。すると雑誌Rolling Stoneが取り上げ、Billie Eilishがお気に入りと発言したことで一気に注目を集め、2022年には有名TV番組「Jimmy Kimmel Live!」に出演、同年のBillboard Alternative New Artist Albumで1位を獲得しました。出来杉の出来杉。

2023年には2ndアルバム「Bewitched」をリリース。最初は配信のみのリリースだったので私的には困り果てましたが、CD化されたので無事私のプレイリストに入っています笑 ちなみにこのアルバム、先日発表された第66回グラミー賞「Best Traditional Pop Vocal Album」にノミネートされました。授賞式は2024年2月4日。さてどうなるか。もう、出来杉の出来杉の出来杉。

また、あのNorah Jonesとのデュエット・シングルを12/15に発売予定。クリスマス・ソング集のようですが、もう出来杉x4。

Norah Jones, Laufey "Have Yourself A Merry Little Christmas" (2023)

実際、Laufeyは天才なのだと思います。余りある才能がそのまま生かされ、楽曲を自作し、歌い、周りに評価され、様々な思惑と共に大きく膨れ上がり、確実にステップアップしている…普段の私なら悪態つきそうな眩し過ぎる存在です。

彼女を知ったのはInstagramでした。おすすめに出てきたのです。何気なく見たのですが、歌声の魅力さ、ギターもピアノもこなす器用さ、比較的に緩めな音楽ジャンルは、十分に興味をそそるものでした。そして、市井の人と同じような喜怒哀楽と無邪気にはしゃぐ様は、ごく普通の女の子。音楽な場面では一変する姿勢・空気感とのギャップに、要はヤラれたのです。
(2023年夏の来日公演、都合悪く観に行けなかったのが本当に残念)

意外と太めでまろやかな声はとても温かく、奥行きがあります。若干スモーキーな声質は特にジャズが似合いますし、バラードも魅力的。年齢を超えた説得感というか、見た目からは想像つかない大人で達観な声色は、聴く私たちをそっと包んでくれる。
音楽性は、アップテンポでもスローでも、ピアノ、ギター、ベース、ドラムスで最小限に奏でつつ、時々ストリングスが色をつけてくれる感じ。「時代を超越している」という評価を見かけますが、縦軸(時間)の超越よりも横軸(ジャンル)の超越の方が私は強く感じます。確かに彼女の根っこにあるのはジャズですが、それは鳴っている音色がそう感じさせるだけで、恐らく彼女の志向は音楽ジャンル全方位に向けられていると思います。

この曲も前述と同じようにクリスマス・ソング。まだ早いと言われそうですが、こんな愛らしい、温かい気持ちになる歌であれば、いつ聴いてもいいんじゃないでしょうか。

ほんの小さなことでも、人は幸せを感じるもの。大袈裟かもしれませんが、それは真実だと思います。但し、やり過ごしてしまいがちな「小さなこと」を大切に思えていればの話。年月を重ねることで、億劫になったり面倒に思ったりして、そんな視点を忘れてしまう私たちに、Laufeyの歌声は優しく諭してくれる気がします、「ハッピーなシーズンの到来よ」と。

今年はちょっと早めに クリスマスを夢見てる
今はまだ雪が降りそうじゃないし
近くでジングルベルが流れているわけでもない
でもそれはきっと あなたとの約束のせい
ハッピーなシーズンの到来よ
だから今年はちょっと早めに クリスマスを夢見てる

(Laufey "Christmas Dreaming" 意訳)

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