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(音楽話)76: Simon & Garfunkel “April Come She Will” (1981)

4月になれば】

Simon & Garfunkel “April Come She Will” (1981)

日本でも特に、50代半ば以上の方々にファンの多いPaul SimonとArt Garfunkel

1964年にデビュー・アルバムをリリースしましたが、ほぼ売れず。しかしアレンジされた”The Sound of Silence”が66年に大ヒット、一気に人気フォーク・デュオの仲間入りを果たします。その後”Homeward Bound/早く家に帰りたい””Scarborough Fair/スカボロー・フェア””Mrs. Robinson””The Boxer”などが次々とヒットしました。しかし超有名曲”Bridge over Troubled Water/明日に架ける橋”(1970)において2人の仲違いが表面化、同年デュオは解散しました。

70年代の各々のソロ活動を経て、彼らは突然81年9月19日、米国ニューヨークのセントラル・パークで、当時のNY経済不況軽減を目的とした無料チャリティ・ライヴを開催します。50万人以上の観客を集めたその模様はライヴ・アルバムとしてリリースされヒット、S&Pの再評価ブームが巻き起こりました。
勢いづいたレコード会社の説得もあって彼らは再結成ツアーに出ますが、実は仲が悪いままだった彼らはツアー中、お互い話すことはなかったそうです。さらにアルバム制作まで着手するものの頓挫(83年にPaulのソロ・アルバム「Hearts and Bones」として形になります)、以降何度か共演はあるものの新曲は制作されることなく、現在に至ります

この映像は件のセントラル・パークでのライヴから。”April Come She Will/4月になれば彼女は”は彼ら2枚目のアルバム「Sounds of Silence」(1966)収録。Artieの純朴な少年のような声とPaulの優しいアコギの音色が響く中、純愛、美しさ、健気さなどがふわーっと心の中に漂ってくるような、穏やかで温かい曲です。
彼女が死んでしまう歌に思えますがそれは比喩表現。その自由さに翻弄されながらも主人公がどこまでも彼女を愛していることを表したもの。彼らの歌詞の文法構成や表現は、通常の英語歌詞のそれとは少し違ってとても文学的。この曲でも、倒置法で言葉を印象付けながら、時系列で主人公の気持ちの変化(しかも文字面だけでは汲み取れない機微な心模様)を表現。そしてしっかり韻も踏んでいる。
邦題「4月になれば彼女は」は名訳。余韻があってとても文学的)

歌詞をじっくり眺めるだけでも一興です。
4月。皆様に素晴らしい日々がやってきますように。

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四月、彼女はやって来る
川の流れが豊かになって 雨で満たされる頃
五月、彼女はそばにいてくれる
また僕の腕の中で 休むんだ

六月、彼女は様子が変わってしまう
フラフラとあてもなく 夜を彷徨う
七月、彼女は飛び立っていく
突然の旅立ちを 知らせてくれないまま

八月、彼女はきっと死んでしまう
秋風が寂しく寒く 吹いてくる
九月、僕は思い出すんだ
最初は眩しかった愛も 萎れていくんだって

(Simon & Garfunkel “April Come She Will” 意訳)

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