名曲336 「サーキットの娘」【PUFFY】

ーーアンバランスとは芸術であるーー

【PUFFY 『サーキットの娘』】

 90年代ですら、もう古臭く感じられてしまう令和の今日この頃。今回は90年代後半で一世を風靡したPUFFYから。ちなみにこの曲が一番好きというわけではないので、後々また別の曲を紹介する予定である。

 「サーキットの娘」はぜひPVを見てほしい。いかにも90年代といった要素がこれでもかと詰め込まれているのである。2021年に当時の90年代をイメージして作ってみましたという映像かと思えるほど。電波少年みたいな切り抜き、特殊CG(これもいまじゃ雑コラと嘲笑されるレベルのクオリティ)、そして忘れてはいけないのが「注意書き」である。

「安全のため、ヘルメットの着用は義務付けられています」

「高速道路では、125CC以下の自動二輪車、原動機付自転車は通行できません」

 PVにはふさわしくない文字群が下部に。これがたまらない。昭和の時代なら間違いなく書かれていなかっただろう。平成になり、平成後期からとにかく注意喚起が増えた。テレビ番組がまさにそう。「テレビを見るときは部屋を明るくして離れてみてね」「良い子は真似しないでね」「このあとスタッフが美味しくいただきました」……etc。

 そういった要素が私の目についたのだがそれと別に曲もいい味が出ている。前回のワインレッドの心でもそうだが、キャッチーなタイトルは創造性のほかにアンバランスが求められるのである。サーキットと、娘は正直ピンとこない。

{サーキットでのはりつめてる空気を おだやかにするのが私の喜び}

{ねずみ色に輝くアスファルトが 男たちの戦いを待っている 誰より早く帰ってきてね 私の所へお願い}

 しかし歌詞を見て見るとなるほど。男たちの争いを傍で見ている私。誰が彼女をものにするのか。そういった想像も含ませている。

 作詞作曲は奥田民生。ははあと思った方も多いのではないか。確かに7割ふざけた感じが奥田節。それでいてメロディーはしっかり。さらに中毒性も高い。

 当時の時代背景も相まって、徐々に私は好きになっていった。PUFFYは本当にカリスマ性がある。ザ・90年代後半といった感じで、あのクレヨンしんちゃんにも出演していたほどだ。まあ、よくよく見ればただの若い女性二人組だし、抜群に歌がうまいわけでもない。それでもスターになれたのは、大衆が求めていた新しいアイドルだったのかもしれない。気だるく棒読みで堂々と歌い上げる姿は当時のギャルっぽくもある。巡り巡って、再評価されるのではないかと私はにらんでいる。

       【今日の名歌詞】

サーキットには魔物が住むから おとなしくさせるのは 私のミリョクで


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