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【10クラ】第21回 めくるめく閃光

10分間のインターネット・ラジオ・クラシック【10クラ】
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第21回 めくるめく閃光

2021年10月8日配信

収録曲♫
オリヴィエ・メシアン:前奏曲集より第8曲《風の中の反射光》

オープニング…サティ:ジュ・トゥ・ヴ
エンディング…ラヴェル:『ソナチネ』より 第2楽章「メヌエット」

演奏&MC:深貝理紗子(ピアニスト)


プログラムノート

音楽が凶暴なバイオレンスを放つとき、社会に何かが起きている。
その攻撃性は個々人に向けられたものではなく、強引無慈悲な独裁者や、人権を強欲にも踏みにじる権力者へと向けられている。

他者への攻撃、暴力には断じて賛同することは無いが、前述のような「芸術におけるバイオレンス」が全ての個を救う、或いは意味を持って社会へ発する光となるならば、発信するのを躊躇うわけにはいかない。

20世紀最大級の輝きを見せるメシアンは第2次世界大戦を生き抜いた一人である。ドイツ軍の捕虜となりながら収容所で書いた《世の終わりのための四重奏曲》は現代に至るまで記念碑的な役割を持ち、「ヨハネの黙示録」に基づきイエスの不滅性を称えている。

レジスタンスとして命を落とした芸術家も多かった。
あまり知られていないが若くしてナチスの銃弾に散ったフランスの若き才能ジャン・アランは、もっと長く生きていたらいかなる素晴らしい作品を残してくれただろうか。痛々しくも力強い、これが魂からの祈りなのかと思わせられる《リタニ》はぜひとも多くの人に聴いていただきたい。
アランもまた、メシアンとアンドレ・ジョリヴェ率いる音楽グループ(且つ反ナチスの政治組織)【La jeune France(若きフランス)】のメンバーとして、実験的な音楽活動を行うひとりだった。

メシアンは敬虔なカトリックで、自然を賛美し続けた鳥類学者でもあった。
さまざまなカラーを持つその音楽は、常に全能者へ向けられている。獰猛な怒りも、異空間の神秘も、けたたましい叫びも、燦然と輝く光も、すべて神のもとでの音楽である。

本日の演奏曲はまだ若き頃、21歳の作品である。
既にその片鱗は見え隠れするが、ドビュッシーやラヴェルの流れも見受けられ、初期作品の爽やかさが残る。
吹き抜ける風、葉の陰から差し込む陽光、大地の底から轟くような、自然界の雄大さ。
音から具体的に色が見える共感覚の持ち主だったメシアンは、この作品を「緑色の木目模様の入ったオレンジ、時々黒い斑紋、ブルーとオレンジを経て、グリーンとオレンジに戻る」と述べている。

この巨大な作曲家について語るには、話の入り口を決めるだけで一苦労する。
神、自然、色、香り、神秘、空間、怒り、愛、宇宙、破壊、実験、構築…
今後少しずつ書いていこうと思う。
凶暴で獰猛になり得る音楽は、破壊を繰り返し、愛と智のもとで、人間の命を再建する。

クラシック音楽を届け、伝え続けていくことが夢です。これまで頂いたものは人道支援寄付金(ADRA、UNICEF、日本赤十字社)に充てさせて頂きました。今後とも宜しくお願いします。 深貝理紗子 https://risakofukagai-official.jimdofree.com/