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書評:予見的SF、あるいは変わらぬ人類|小松左京『見知らぬ明日』ハルキ文庫/1998.

体調が少しだけマシになったので、土曜日は久々に長編小説を読んだ。「読もう!」と意気込んで挑んだ訳ではなく、本棚に積んであったものを何気なく手にとって読み始めたら、休憩を入れながらも最後まで読んでしまった、という感じ。

小説のタイトルは『見知らぬ明日』。小松左京が1968年に発表した長編SFだ。

小松左京『見知らぬ明日』

なんと予見的なSFだろうか。人類の危機を迎えても、国際政治のロジックやしがらみ、利害、思惑に振り回されて、後手後手に回っていく描写は、最近現実の世界で嫌という程見せられているものだ。読み終えてからTwitterでパブサをしてみると、多くの人が同じように考えていた。

私が手にとった版には、1989年(平成元年)に記された、著者による「まえがき」が掲載されている。そこでは、1968年の時代背景を踏まえて読んでほしい、と書かれており、確かに1989年の段階で読んでいたら、「古臭い設定」に思えたかもしれない。

しかし、2022年の今読むと、逆に時代背景を抜きにした普遍性、あるいは1968年から世界は本質的なところは何も変わっていないという現実を、突きつけてくるかのようだ。

古びないSFというのはこういうものなのだろう。

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