愛が人に与え及ぼすこと

愛しています
愛しています
愛しています

 くりかえしくりかえし自分の内側で唱え続ける。靄の切れ間から道筋を見出せたような、暗闇で手元が幾分か照らされたような感覚がある。何より意味があるようでなかったその言葉が私の中で形を成しその存在を確かなものにしようとしていることが感じられる。完全な形などおそらくなく、いろんな色や姿に変化しつつ、私の内面を癒し浄化する。過去と現在の記憶から解放され、真新しい状態で目の前の世界と向き合うことができるように。私の核が悦びを享受できるように。

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 自分の仕事について考えることは続けている。

 職場でコミュニケーションの研修会があった。普段職場で人と話すことを制限されている私は終わったあとの疲労感が強く、久しぶりに頭と背中が痛くなったので、マッサージを念入りにして泥のように眠った。
研修はハラスメントの学習会もあり、侮辱されることと他の職員と隔離されていることはハラスメントと言ってよいのだと知ったけれど、被害者だと訴える気はない。ハラスメントなどきっとなくならない。人のことをどうこう言えるほど私は聖人でもなく、この場所から去ろうとしているのだ。もう、それでよい。
 たまたま学習会でペアになった人は管理職をしている年長の職員で私が困っている話をすると、職場環境について巡回している担当職員に相談してみたらと提案してくれた。その人は私が以前から気になっている人だった。「考えておきます」と伝えた。
 研修会場をあとにして、職場が開いているならば忘れ物を回収したいと敷地内に向かうと誰かが建物に入るのが見えた。急いで自転車を停めて鉄扉を開けると、その気になっている人がいた。こちらを向いて驚いた顔をしている。忘れ物のことを伝えると、やっぱりその人も忘れ物がと言っていた。
マスクを取った顔をまともに見たけれど、誰かに似ている。「誰だったっけな」と思いながら帰路についた。

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