岡山ウェストゲートの気になる家

西口の椿

 岡山駅周辺の西口筋に面して、青い屋根の家が建っている。
店舗が並ぶエリアに埋もれるように建つ民家で、白くて高い壁に囲まれている。その異質な感じが昔から気になっていた。
 西口の再開発計画の影響か、2022年頃には隣にあったタバコ屋やカメラ屋の古いビルが取り壊され、さほど時間を置かず、裏に建っていた巨大な立体駐車場がせり出し始め、家の倍は高さのあるパーキングに抱え込まれるように存在することになった。日照権が守られているのかと心配になる。
 たぶん空き家なんだけど、庭の植栽が時々刈り込まれているので所有者はいるっぽい。パーキングが増設される時、売買の打診はあっただろうと想像する。それでもそこに立ち続ける家。存在し続けることへの強い意思を感じる。その家が咲かせる椿を見る度、ほっとした気持ちになる。


もう一つの青い屋根の家

 岡山駅西口再開発の目玉だったであろうビルの傍らに、もう一つの青い屋根の家がある。
ニ階建ての民家で、かなりの年季を感じる。
それほど大きな家ではないのにニ階には表に向かって窓が4つもある。出っ張ったり引っ込んだり、ちょっと不思議な造り。聖窓?もある。
一面は焼杉板の壁。屋根上に物干し台もある。和洋折衷な印象だ。
 軒先にたくさんの鉢植えがあり、夕方に高齢の女性がジョウロで水やりをしていたのを見かけたことがある。白髪で、水色のエプロンをしたおばあちゃんだった。夏にはノウゼンカツラっぽい赤い花が咲いている。
 昔は隣にも裏にも同じような家が建っていたが、今はコインパーキングになっている。
再開発により大きなビルやレンタカー、コインパーキングが建ち並ぶエリアで、これまた踏ん張っている民家だ。
夜に近くを通りかかった時には、明りが灯っていた。
夏になると鉢植えや植栽が元気に彩る。今年もそんな姿を目にしたい。


長屋


 長屋がちらほら残っているエリアだ。再開発目玉ビルを見上げる場所に、レトロもいいところ長屋が残っている。田舎の一軒家で生まれ育ち、大学時代はアパートだったので、長屋は未知の住宅パターン。ちょっと浅はかな憧れもある。
 平屋の5軒長屋。最初は倉庫かと思って通り過ぎた。でも後々、Googleマップで見返すと郵便受けもガスメーターもエアコン室外機もある。安普請って言葉が当てはまる外観。5間×5間くらいの面積。
 端っこの一軒は外壁をビビットな色に塗装してサッシも入れ替えて、引き戸に「◯◯スペース(仮)」ってペイントがしてあったので趣味部屋として借りてるっぽい。他には自転車が置いてあったり、暮らしを感じるお宅もあったし、空き家もあった。
 ある時から入居者募集の札が下げられた軒に、羊の形を模した素焼きの鉢植えが置かれていた。Welcomeの文字踊る土落としマットも置かれた。なんだかこの長屋に似つかわしくない、洒落たセンスの持ち主が入居したんだなと思った。
玄関にランタンっぽい門灯が設置され、すりガラス越しだけどレースのカーテンとワイヤーネットであろう飾り棚が見えた。公道との境の狭い狭いスペースにパンジーが植えられて、この年季の入った長屋で自分を満たすための生活を送っている人がいるのだと確信して、なんだか妙に嬉しい気持ちになった。

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