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船を寄せる仕事 #漁師の娘が見た景色

漁が終わった船が港に返ってくると、陸に残っている家族が出迎える。
そこに子どもたちもついていく。

別に仕事をするわけではないけど、家に誰もいなくなるし、人がたくさんあつまる漁港はいるだけで楽しかった。

私と同じように親についてきた漁師の子どもたちはほかにもいて、自然とみんなで遊ぶ。
今思えば、名前も知らないお兄さんやお姉さんたちもたくさんいた気がする。

そんな港の思い出。

市場に行くと、大人たちはみーんな働いている。それを見て、なぜだろうか。子どもながら「私もなんか役に立ちたい」という欲が出てくる。

当然子どもにとっては危険な仕事が多い現場だが、そんな中でも大人たちは、私にもできることを見つけて仕事を与えてくれた。

数ある私にできる仕事の一つが、「船を寄せる」ことだった。

港に入って荷揚げ作業をする船は、太いロープを使って岸壁に係留される。
そのロープを陸から引き寄せ、船に乗っている父や母が陸に上がりやすいようにしてあげるのだ。

ロープは私一人で曳いていたのか、それともだれかほかの大人と曳いていたのか覚えていない。握りしめたロープの先に夢中だったから。

だって、あんなに大きな船が、私がロープを引っ張るとこっちに寄って来る(ようなきがしてただけかも)んだ。夢中。

大した仕事じゃないし、大人がやったほうが早いんだろうけど、ちゃんと私にも役割があるのが嬉しかった。


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