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『思い出』『刷り込み』『思い込み』

しぶとくも愛おしい音の記憶━久しぶりのJEUGIAに、音への思いが湧き上がる


子どもの頃、旅行やお出かけは父の運転する車での移動がほとんどで、車中ではいつも音楽が流れていた

憶えている限りではいつかの旅行で、何を思ったか父が『それぞれの好きなCD持ってき』と提案してきて姉や母は好きなものを持ち込んだ

ひとたび音楽が流れると、さっそく雲行きが怪しい

『こんなチンタラした曲聴いてたら眠たなるわ!』

『何や、何言うてるかわからん曲聴いてたらいらいらしてくるわ!』

父の運転のストレスや渋滞のいらだちがいつにも増して大きく、我々は提案にのって自爆したのだ

それ以来、それまで通り車中は父の好む音楽、ジャズ一択となる

その時よくかかっていたのが『Take Five』

今では聴くとテンションぶち上がりの大好きな1曲だが、ひどい車酔いをする私は子どもの頃これを聴くといつでもどこでも“オエェッ”となったものだった

色々なところに連れて行ってもらったはずなのに、いちばんに思い出すのは息の詰まるようなこんな状況か、罪深き無邪気な私の姿か

恥ずかしながら、5拍子だから『テイク・ファイブ』と思っていたが『少し(5分)休憩しましょうよ』という意味だと最近知った


百貨店で流れる曲も勤めていた人いわく『売上達成』『雨が降ってきた』(雨除けカバーの有無を確認するため)などを皆が周知できるようにしているのだそう

いまどき(この言い方好きではないけれど)の小学校の運動会なんかでは『威風堂々』『クシコスの郵便馬車』『天国と地獄』なんかがかかることは無いらしく、流行りの音楽(ポップスというのか歌謡曲というのか)がかかるそうなので、いまどきの子どもたちとは『急かされる、テンション上がる』をイメージする音楽も違うのかな

そういう私も光GENJI『パラダイス銀河』、小泉今日子『あなたに会えて良かった』、米米CLUB『君がいるだけで』などを聴くと、小学生の時の運動会の入場行進でバトントワリング部の先導で行進したことを思い出す

ま、これは学校によっても違うし、教職員の選曲担当にもよるな

小学生のときは掃除の時間にポール・モーリア『恋はみずいろ』とかリチャードクレイダーマン『渚のアデリーヌ』が流れていたので、これを聴くとホコリ臭い教室や机を全部教室にさげた中でいつまでも泣きながら給食を食べていた同級生なんかを思い出す

何でこの曲やったんやろ

私は名作だと言われる『レオン』を観ていないのでピンとこないが、同僚はSting『Shape of my Heart』がかかると、曲の最後の方に『家にあるあの鉢、そろそろ地植えせなあかん、と思うわ』という

そんな曲ちゃうと思うけど

楽しい思い出だけではなく、聴くと胸を灼かれるような切なくて悲しいものもあるけれど、良いものは良いとまた心地よく耳にする事ができる日を気長に待つという類のものもある

時の翼に悲しみをのせてその時を待とう

あ、しんみりしちゃった

季節や天気、本や映画にとどまらず、記憶には音がしっかりと刻み込まれているし、音からはあらゆる記憶が溢れ出す

ひじをついてしばし休憩
文字の骨格だけを書くの、スキ









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