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感想 BIGTHINGSどデカイことを成し遂げたヤツらはなにをしたのか?  V・フリウビヤ 大規模プロジェクトはどうして予算超過するのかの謎を解説したのが本書、事例が多く丁寧に書かれています。

大阪万博の追加費用が膨大で驚くばかりなのですが、世界のこういう大規模プロジェクトは、ほぼ、すべて、予算が膨張しているとのことです。その原因や構造を専門家が解説したのが本書です。事例が多くなかなか面白い内容になっていました。

最初に大切なこと、本書の言いたいことを書きます。


ゆっくり考え、すばやく動く じっくり計画が成功の鍵


大阪万博のような大規模プロジェクトは期限があります。
だから、構想数十年というわけにはいかない。

十分に考えこまれる前に建設に入るという杜撰な計画が問題なのです。
たいていの大規模プロジェクトはそうなので失敗しています。

1910年から1998年までに実施されたプロジェクトのコストの見積もりは、最終コストを平均で28%も下回っていた。


たいていの大型プロジェクトは、大幅な予算超過が発生している。
大阪万博なんてましな方でした。中には予算の10倍なんてのもあります。

予算超過、工程遅延、便益縮小が常に起こっている。


失敗するプロジェクトはズルズル長引きがちだが、成功するプロジェクトはスイスイ進んで完了する。

工事が長引けば、それだけリストが上昇するとのことでした。

なら、どうして失敗するのかということになります。
そこには人の思考の癖が関係していると著者は言います。


人間は慎重に考えるより早く一つに決めたい 固定化への心理



固定化とは、ほかに選択肢があるかもしれないのに、それが唯一の選択肢であるかのようにふるまい、結果として予想以上のコストやリスクを負ってしまう、人や組織にありがちな傾向を言う。

私たちはいったんこうだと思い込むと、その判断をゆっくり徹底的に吟味することはほとんどない。

あらゆる判断が感覚的に行われている。


こういう人間の本質が、大規模プロジェクトの失敗に関係しています。

さらに、目的のためなら手段を選択しない役人たちという存在もいます


本当の見積もりを出したら、何も建てられやしない


案を通すだけの楽観的な見積もりが出されるケースも多いとのことです。


とにかく始動させることが肝心だ。地面を掘り始め巨大な穴を開ける。そうすれば穴を埋める金を用立てる他になくなる。


既成事実を作ってしまう。すると計画は止められない。

人は損を嫌う。初期費用を無駄にできない、失敗を認めたくないという心理から、その計画は続行されるというわけです。



これらからの教訓は、見たものがすべてだと、つまり必要な情報や知識がすべて手元にあるとは思いこんではいけないということです。


答えの前に問いがくる。


それを建てる前に、本当にそれは必要かを問いかけてみることが大切です。

プロジェクトはそれ自体が目的ではなく、目的を達成するための手段に過ぎない。


もう少し人の本質を見ていきましょう。

人間は工夫を重ねて学ぶことに慣れている。

思考錯誤し何度もトライとエラーを繰り返していくうちに、どんどん良くなっていく。上向きの学習曲線。



成功するには緻密な計画が鍵になります。

なのに、納期が早いと緻密な計画は作れません。


経験のパワーの大切さも言っています。


私の研究は市場や分野を最初に開拓することの危険性をはっきり示していた。


先行者利益はほぼ幻である。パイオニアとして市場に参入した企業の大半は倒産している。フォローワー企業倒産率は8%である。


が、人は最初に何かをすることにこだわる傾向がある。

計画が緻密でないのに走り出す。だから失敗する。


プロジェクトの失敗の根本原因は、実行以外の部分、実行が始まるずっと前の予測にあることが多い。



人は直近に見た数字に引っ張られる。つまり、アンカーの質が重要となる。その数字を数ある数字の一つという目で見る。自分は違う、今回は違うと思ってしまうと危険です。

計画段階でこそ創造的になれる。

行き当たりばったりでは良いものは作れないのです。


プロジェクトの賛否は、良い人達をバスに乗せ、良い席に座らせられることができるかどうかにかかっている。


熟練の棟梁や優れた大工の確保も大切なのです。

本書を読んで感じたのは、無駄な大規模プロジェクトが多いことでした。速さを求めるため、緻密な計画ができておらず、故にも工期に入ってから追加することも多く、さらに予算が増大し数十倍にもなるケースが多々あります。
その計画の杜撰さが原因だと感じました。
これは大規模プロジェクトだけのことではなく、色んなことにも応用できる経験値だと思います。
計画はじっくり緻密に、ただし行動は早く。
この考え方は色んな場面で使えそうです。




2024 4  27
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