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感想 スカル・ブレーカー 森 博嗣 ゼンが将軍の弟?。母なる方との会合。そして、大軍との戦い。今回も面白い。シリーズ第三作目。

知らないうちに夢中になっている。面白い。
シリーズ三作目。

今回はある領主の治める国に滞在する、そこでの不正、理不尽を目撃する。
そして、はじめての敗北。戦わずして負ける。

「逃げるのは卑怯じゃない。作戦のうち。つまり逃げるのも、戦い方の一つだ。生きてさえいれば、いずれ仕返しができる。無駄に死ぬよりは、ずっと勇気がいる」


多数の犠牲者を出すより、負けたと認めたほうが良いこともある。
これをゼンが出来たのは、ゼンが武士ではなかったからだと思う。

今回は、一見無力と思えたヤナギとの出会いも良かった。
そこに強さの別次元を見たのだと思う。

出生の秘密、母との会合、大軍に包囲され突破するゼンたち。
最後はかなり盛り上がった。
楽しい、続きが気になる展開です。

今回も哲学的な思考が多い、ヤナギという話し相手を得たことも良かった。


鎧ってのはな、有利不利というよりも安心して戦える。つまり、気持ちに着せるものだ。



これを身につけることで動きが遅くなる。闘いには不利なのだが、武具屋の哲学は傾聴に値する。
一見、無意味と思えるものにも、実は意味があるということをゼンは気づいたのだ。



「理屈とは、人間が考えたものだ。人間が考えて、人間に教え、人間の間で広まったものだ。…正しいものを決め、あるべき生き方として、理屈を作ったのだ。」


理屈は否定すべきではない。しかし、理屈に支配され人の情を無視しては良くない。
それを、この問いは突き詰めている。
これも深い問答だった。


戦さで敵陣に攻め込む時、兵たちはいずれが正しいかなど考えない。だから、ときどき理不尽なことが起きようともそこにはそれぞれのただしさのズレがあるだけだ。誰でも自分がいい思いがしたい・・・ここまでは正しい。しかし、それが行き過ぎて、人の物をだまし取ったり力でねじ伏せて無理を通すとそこに害を受ける者が出る。


正義は見る角度によって変化すると、この問答は言っている。
しかし、それが行き過ぎた場合、誰かに害が生じた場合は、そこにはもう正義などありはしないのだ。

本書の楽しさは、こういう問答にあると思う。




2024 3 6
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