西部戦線異常無し(最近観た映画の話)

超長距離移動があったのでネトフリで映画を見る事にした。
移動時間が2時間越えなんて中々無いので丁度良い機会だった。

特に何か見たいものがあった訳じゃないのでネトフリのおすすめ映画から
西部戦線異常無しをチョイス、あの国とかその国とか最近戦争のニュースが多いからかな?ドイツの戦争映画を進めてくるネトフリ君に若干の政治色を感じながら名前だけ知ってる映画を潰すのもいいなと思って再生開始。

オープニングはある青年兵士が命令によって塹壕を出て突撃する所から、初っ端から悲惨な塹壕スタートでこの映画は戦争をネガティブに描写しますよと宣言される。青年兵士は無茶な突撃によって死に、死体はドックタグを集めて支給品の軍服を剥いで荼毘にふされる。
そして、工場制手工業のシーン、産業革命を象徴する工場で女たちが等間隔に並んだミシンに向かって縫い物をしている。軍服を作る工場のようだ沢山の軍服が職人によって丁寧に縫われるのではなく、工場で量産されていく。

序盤は学生っぽい4人組の悪ふざけから始まる。
徴兵への応募用紙を持って勿論参戦する、英雄になるんだと笑い合う3人と暗い顔をした1人、「親がサインしてくれないよ」「勝手に書いても筆跡でバレるよ」と戦争に行けない理由を並べるが、友達に「ママの言い成りかよ」「軍がお前のパパの筆跡を知ってるって?」と囃し立てられてとうとう自分で親のサインを偽造。軍への志願をしてしまう。

オープニングで悲惨な戦場を描写されているだけに、楽観的な3人(普通の学生)が政府のプロパガンダによって名誉欲を刺激されて盲目になっている様子と理性的な親によって家庭で教育されている主人公(パウロ君)の葛藤が見ていて辛い。
心の中では戦争が怖いし、友達にも戦場へは行って欲しくないけど、世論がその発言を許さない。言って友達に腰抜けと揶揄われるのが嫌で、仲間はずれが怖くてついにサインしてしまう。
10代の頃はこういうのあるよね。。。タバコも風俗もパチスロも親に止められててもこういうふうに初めてハマってくんだよね。。。

なんて思っていると、次は入隊のシーン。
ここで軍の偉い人が新兵に向かって演説をかますんだけど、これが熱い。
演説シーンだけ切り取って視聴したら私も熱狂して帽子を放り投げたかもしれない。映画的なカメラワークと役者の演技によって時代の熱にやられてなくてもついつい入隊しそうになるくらい熱い。
作中でも聴取者達は手元の資料を放り投げて大喝采しながら入隊手続きに続く。

志願書を出して、名前を登録してもらって、軍服を受け取ったら完了。
面接とは呼べないような面接。まぁ兵隊を増やしたくて募集してるんで一応上半身裸に向いてるから見るからに貧弱な奴は落とすんだろうね。
面接官から「祖国の為に尽くす、両親は誇りに思うだろう」と言われて言葉に詰まるパウロ君、そうだね、両親は勝手に志願したことを悲しみ、怒っているだろうからね。。。
そして、受け取った軍服を見るとそこにネームタグが付いていた、「これは僕のじゃない」と言って返却しようとするが、面接官は「あぁ、サイズが合わなかったんだろうね、良くある事さ」と言ってネームタグを切り取って足元に捨てる。
そこに書かれていた名前はオープニングで突撃して死んだ青年の名前だった」薄々察していたけど、工場で縫われている軍服は死体から剥ぎ取った服のリサイクルだったのだ。
塹壕しっかり掘ってあったし既に疲弊し始めてるんだよね。

そして沢山の人に見送られながら陽気に歌いながら戦場に向かう新兵たち。
トラックの荷台で先輩からありがたい話を聞きながら俺たちは英雄になるとにこにこしている。
が、戦場に近づくにつれて様子がおかしくなってくる。
手前のキャンプで白衣の男性によってトラックが止められる。
運転手がなんだ!と怒鳴ると「重病人が居るからトラックが必要だ」と
医者と指導官がトラックの取り合いを始めて、結局は新兵たちはそこから徒歩で戦場を目指すことになる。
車両も足りてないのかよ、、、

戦場に近づけば砲弾が近くに着弾、慌ててガスマスクを装着。このへんは訓練してから来ていて一安心。

この後はもう戦場の描写に入ってめちゃくちゃだ。
不衛生で狭くて暗い塹壕をうろつき、死んだ仲間のドックタグを集め友達の死体を前に絶句する。
泥だらけになりながら携帯食を口に押し込む。
「無理やり誘ってゴメン、こんな筈じゃなかった」と謝られる。きっとパウロは「止めなくてゴメン」と思っていたに違いない、だって彼は戦場に来る前から悲惨な現実を聞かされてたんだから。謝られながら何も言えなパウロを見てるだけでこっちまで泣きそうになる。

そのあとは塹壕戦と後方待機の繰り返し。
戦場では敵を殺し、仲間が死に
後方では碌な物資の無い場所でなんとか娯楽を探して楽しく過ごす。
そんな繰り返しの中で徐々に戦場に慣れて、だんだんおかしくなっていく。

この辺で観ている私もだいぶ疲弊してきて心を守るための現実逃避を始める。塹壕戦で仲間が倒れるシーンが映る度に「メタルスラッグ」で3000回見た光景だなぁとか思ってた。カーキ色丸ヘルメット=メタルスラッグな民。
フランス兵と窪地で1vs1やってるシーンはもう見てられない。
情報をシャットダウンする為に心の中で\(・ω・\)SAN値!(/・ω・)/ピンチ!してた。

終盤はドイツが降参する形で停戦協定を結ぶ、首脳部は戦線で兵士が死ぬのを停める為に一日でも早い停戦を望んでいるけれど、軍部はそれを売国奴と罵りながら停戦直前まで戦闘行為を継続して突撃せよと命令。
停戦の事実を知っている兵士達はもう嫌だ!戦いたくないと抵抗するが見せしめに何人かが督戦隊に射殺されて戦場へと駆り立てられる。

歴戦の兵士となったパウロは戦場で上手く立ち回るものの逃げ込んだ小部屋で背後から刺されて致命傷を受けてしまう。
そして、刺された瞬間に部屋の外ではラッパが鳴る。条約が効力を発揮する終戦の時間だ。
フランス兵は血を流すパウロを一瞥して何処かへと去っていく。
終戦のお祝いムードだったフランス陣地に奇襲突撃をしかけたのはドイツ側だ。終戦のラッパが鳴ってもわざわざ手当してやる義理なんて無い。

ふらふらしながら何とか外に出たパウロだったが、帰国することなく倒れてしまう。

最期の突撃のあと、新兵の一人がパウロのドッグタグを拾っていく。
数年前、あるいは1時間半前のパウロのように。

映像が途切れるとこの戦争で~~~人の兵士が死んだ。~~年続いた戦争で国境はたったの~~メートルしか動かなかった。
と戦争が悲惨でありながら意味の無いものだったと字幕が表示されてED。

いやぁ、いい映画だったけど思想が見え隠れするのは気になってしまう。
人に勧められるかと言うと絶対にNO。
移動中で時間ぴったりって状況だったからちゃんと最期まで見れたけど、部屋で見てたら多分途中で止めてただろうな。それくらい戦争描写がきつかった。

あと、農家からガチョウを盗むシーンで一度目は成功するんだけど、二度目で農家の復讐で兵士が死ぬシーンは説教臭いけど好きな展開だった。
悪人が幸せになるのは良くないよね。(思想全開)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?