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にんげんのこころ



私は銀縁のメガネをかけた理屈っぽい青年です



お笑いと青春パンクと
明太子とアンティークを愛しています
なけなしの金で友人と作ったちいさな酒場で
1日40人の人間に揉まれながら暮らしていますから
普段はどちらかと言うとひとりで過ごすことを好みます



私はにんげんのこころに興味があります
様々な感情がむき出しになる”酒場”の店主という職業が楽しくて仕方がありません
私が真剣に働いているのはそのためです




私は値の高い食事にあまり関心がない
職業柄朝5時に寝ても11時には起きます
太陽を浴びることは私にとって快楽の一種です




私は”新たな知を学ぶ”事が好きです
いつまでも正しい答えを求めています
日々の本能的な行動を「勉強」とは思いませんが
周りからよく言われるのでそうなのでしょう
多数派が言葉になります
私は「勉強」しない人には何も思いませんが
他の足を引っ張る人には反感をもっています




私には嫁も彼女も犬も猫もありませんが
特に焦りもありません
自分のような偏屈な人間に付き合わせるのは
傲慢だろうというのが本音です
都合のよい妄想にふけっていることがしばしばあります



時たまに店のお会計に不満そうな人がいます
私の営む店はぼったくりバーではないですが
店に値段分の価値がなかったのでしょう
毎月約1200人のお客さん全員に満足して帰ってもらうこと
夢を叶えたボクの新しい夢です



私はにんげんのこころに興味があります



私はお客さんについて考えていることが嫌いではありません
あの人はあの時どんな気持ちだっただろうか
そういったことです



前職の上司が店にきてくれました
当時とてもおっかなく苦手な人でした
口の悪い私は陰でこころない悪口を吐いたことがあります
可愛い後輩ではなかった僕が職場を去ってから
既に3年が経ちました


元上司は
朝から働き殆疲れているであろう仕事終わりに
家とはまったく別沿線の私の店に突然現れ
不自然なほど酒を沢山注文し
財布を空にして足元をフラつかせながら
9つ先の駅で乗り換えさらに2つ先の駅に帰って行きました



私はにんげんのこころに興味があります






こうして言葉にしてしまうとどこか嘘くさい






私の酒場には二度三度と通ってくれる人がいます



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