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[登壇レポート] 丸井グループが取り組むエンタープライズアジャイルとプロダクトマネージャーの役割

こんにちは!Mutureのあさいです。

2024/4/17(水曜)に開催されたPdM Night 2024に、Mutureからかねさんが登壇しました!
タイトルは、「丸井/イオン/LIFULLの事例から学ぶ、エンタープライズ組織におけるプロダクトマネジメントメソッド — プロダクトのために頑張るすべての人におくる PdM Night 2024 —」
イオン株式会社 CTO兼イオンスマートテクノロジー株式会社 CTO 山﨑さま、株式会社LIFULL CPO(Chief Product Officer) 大久保さまとの登壇という素敵な機会をいただきました。

当日の登壇内容から、かねさんのトークにスポットライトを当ててイベントで話した内容をお届けいたします!

Mutureオフィスでは一部メンバーが集まり応援上映をしてあたたかく見守っていました!


(2024/4/23追記)当日の資料はこちら!

パネルディスカッション

テーマ:プロダクトとビジネスの関係性(UXとKPI、プロダクト組織とビジネス組織など)において、直面した課題や解決策

大企業というと主語が大きいかもしれませんが、プロダクトというものを「資産」と捉える意識はそんなに高くないかなと感じています。
いわゆるP/LとB/Sの関係で例えると、P/Lのみに意識が向いてしまっており、開発の意思決定についても全てがP/Lに対する寄与度という単一の尺度によって行われています。
このような環境では、B/Sに寄与するプロダクトの資産性を高めるための開発を行いたくとも、この開発によって売上にはどういう効果が出るの?費用対効果は合うの?みたいな話を喧々諤々と問われる機会がすごく多いと思っていて、ここはとても難しい。

もう少し具体的に言うと、「先行指標」と「遅行指標 / 財務指標」という言葉を使うならば、プロダクト的には基本的に「先行指標」に対する打ち手を話している中で、決裁者的からは「財務指標」でどうなの?と問われ続けるシーンはとても多いです。
一方で「財務指標」に影響を与える「先行指標」を定義していくにも、なかなか全体で共通認識を持つのが難しく、また売上への距離感のある指標については理解されないことも多いです。
こんな感じで、いまいち「先行指標」への理解というのはまだまだ十分でないケースが多いのかなと想います。
このような感じなので、プロダクトは資産であり、そこから価値が生み出されていきます。今回の施策の先行指標はこの数字で、これが上がることでこういうビジネスインパクトが生まれます。ということを毎回毎回組み立てて説明することは、結構骨が折れる。
けどここから逃げると、プロダクトの考え方は一生理解されないと思っています。

ーー(モデレーターより)兼原さんがおっしゃっていた「先行指標」のところについて。ノーススターメトリクスを設定されながら丸井さんでもやっている?

NSM自体の必要性がそもそも理解されていないので、特に設定はしていません。
会社として追っているオフィシャルな指標はやはりIRで示している数値となります。丸井グループは実は結構細かく数字を出していて、もちろん財務指標もあるけど、先行指標に近い指標であったり、長期のインパクト指標みたいなものも定量化して出しています。
この外部向けの数字とプロダクト指標の接続点となる部分に絞って設計を行っています。逆にいえばプロダクトだけに閉じた指標については今のところは立てていません。まだまだ現時点では作ったとしても社内で理解されずに陳腐化してしまうと思います。
まとめると、会社としてオフィシャルに定めている指標への接続性を強く意識した設計を取っています。

テーマ:アジャイル開発/プロダクトマネジメントの実践において、市場変化への素早い対応やプロダクト進化に成功したケースとそれを実現するためのポイント

具体的な変化の事例としては、支援先のチームではユーザーリサーチを頻繁に行っています。
次スプリントでリサーチが計画されている場合は、今のスプリントではリサーチ設計と検証に必要となるプロトタイプの準備を行っていきます。そして実際にインタビューをしていくのですが、インタビューは基本的にチーム全員で一緒にオブザーブをします。このチーム全員には開発パートナーももちろん含まれていて、同じ状況を一緒に見て、インタビュー後に振り返り、みんなで仮説出しをしたうえで、次のインタビューに向けたプロトタイプの改善点の洗い出しを頻度高く回し続けています。これって今までは出来ていなかったことです。
開発といえば今までは丸投げに近い形で、要件定義をし、実装依頼をした後はできあがってくるまで1ヶ月くらい待って、仕様と違えばやり直し…いわゆるウォーターフォール型。
そうではなくユーザーの声を拾って、即座にプロトタイプに反映をして、それをビジネス的な数値と照らして、定性・定量で検証をしていく。このようなことをパートナー企業と一緒に半年くらい回し続けられている
ここは大きい変化だと思います。

テーマ:エンタープライズ組織だからこそ難しい、「組織をデジタル化して自走させる」ためのメソッド

「エンタープライズ組織だからこそ」のような話はなくて、スタートアップであれどこであれ変わらないと思います。ビジネスサイド、開発サイドみたいに、どんな組織でも割れる時は割れる。でもこれはお互いの守っているものや見ているものが違うだけだと思っている。
「組織をデジタル化して自走させる」ためのメソッドについては、あるなら自分もすごい知りたくはあるのですが、一つ挙げるとしたらやっぱりお客さま・ユーザー中心の考え方に戻していくことかなと思っています。
丸井グループのケースでいうと、新卒で入社するとまずは店頭に立つところから始まり、そこから各部門へと異動していきます。つまり、社員全員が必ず接客を経てきています。
店舗ではプライベートブランドとしてパンプスなどの商品開発もしていて、接客を通じてお客さまの声を聞き、フィードバックを元により良いものにしていくという改善サイクルを回していました。
これ自体が今でいうところのアジャイルだなと。ただこれがデジタルプロダクトになると途端にやり方がわからなくなってしまうというだけの話だと思っています。
このような経験を全員が持っているからこそ、「お客様にはこういうニーズがあるんです」という事実を集め伝えていくことで、それならばこうした方がいいんじゃない?という前向きな話になっていきます。加えて、このようなお客様は全体のおおよそこれくらいの割合で、まずはこの層から対応方針を検討していきませんか?というとちゃんと話を聞いてもらえる。いいものを作っていこうっていう雰囲気になる。
お客様像をはっきり洗い出し、それを見せて共感してもらう。 あとはビジネスとの接合部分を丁寧に埋め合わせていくことで、みんなで前に進んでいける。
このような流れを作っていくことが大事になるのかなと思っています。

Q&A

(他にもたくさんのご質問が集まりましたが、かねさんが回答したご質問をピックアップ!)

大企業DXは時間がかかる、険しい道のりである、ということが大変よくわかりました。
そのためわかりやすい進捗を示しづらく、一見コストだけがかかっているように見えてしまうフェーズがあるように感じましたが、ステイクホルダーへの理解をどのように得ているのでしょうか。

“人の変化” みたいなところは意識的に押し出していると思います。
ステークホルダーが誰かにもよるのですが、経営層の場合はあまり短期的な視点ではそもそもみていない。一方で、中長期にわたってどういう変化が生まれていくのかという点にはすごい関心がある。
僕らで言うとnoteやpodcastなどを自社でやっているのですが、この変化をステークホルダー含めて伝える場として活用しています。数字からは伝わってこない人の変化なども、これらの媒体であればリアリティが伝わりやすい。また、時には社内メディアにインタビュー記事を載せるときもある。
人が変化し、チームが変化する。お客さまのことを知り、楽しそうに働いているその雰囲気や変化を大切に見てくれたりするので、こういう定性的な部分こそ丁寧に伝えていくことは意識的にやっています。

もし社内人材をPdMへ転換させることになる場合、エンジニアサイドから選出するべきか、ビジネスサイドから選出するべきか、それとも両方か、どうお考えでしょうか?

職種は正直あまり関係ないかなと思っています。どちらかというとプロダクトを愛する熱量をどれだけ持っているか。やりたいことがあったんだけどやれなかったというような一種のフラストレーションを持っている人こそ向いていると思う。やっぱりハードシングスは多いし、言われたことをそのままやるのはすごく簡単だけど、ここに対して意思を持てるかどうか。
なので、プロダクトに理解があって愛があって努力ができる資質を持っている人がなるべきかなと。それさえあれば、スキル面はいくらでもサポートできる領域だと思います。

クロージング

「変革のための唯一のソリューションはないよね」という話があったと思います。結局は胆力、情熱、向き合っていく力が大事であると。
今回のイベントはプロダクトマネジメントがテーマだったのでここに寄せたお話をしましたが、これまでの話にもあったように変化を推進するのに職種はあまり関係はなかったとも思います。
少しでも変えたい!という想いを持つ方がいらっしゃれば、この難しい問題に対して一緒に取り組んで行きたいと思っていますし、今後もこのようなナレッジを共有していけるような場も作っていければと思います。ありがとうございました。

最後に

いかがでしたでしょうか。
Mutureがプロダクトマネジメントにおいて大切にしていることが少しでも伝わる内容となっていれば幸いです。

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✍️この記事を書いた人:あさい/Corporate

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