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【日本遺産・兵庫県】播但貫く、銀の馬車道 鉱石の道

以前書いた記事の後、世の中、外出がままならない状況だったので、つい後回しになり、2年も経ってしまいました。人もそろそろ動き始めたので、訪ねた日本遺産を仕事で書いた原稿や資料をもとに、まとめてみます。

日本遺産は、観光で日本にやってくる外国人に日本の良いところを知ってもらうことを目的に設けられたのですが、日本人にこそ訪ねてもらいたい場所がたくさんあります。

ほんの入り口を書きます。興味のある方はぜひ「日本遺産ポータルサイト」から、まずはネット旅行を楽しんでみてください。

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今回は【兵庫県】の日本遺産。
播但貫く、銀の馬車道 鉱石の道
~資源大国日本の記憶をたどる73kmの轍~

姫路港から兵庫県北部の生野いくの明延あけのべ鉱山へと続いていた鉱石運搬用の馬車専用道、通称「銀の馬車道」。その一帯は、鉱山開発を軸に近代化を目指す日本を牽引した地域でした。山陰地方にある世界遺産の銀山にも行ったことがありますが、生野、明延の圧勝。

◆日本の未来を動かした明治新政府によるビッグプロジェクト

兵庫県北部の播但地域には古くから多くの鉱山がありました。
生野銀山は「佐渡の金、生野の銀」と言われ、江戸時代には銀の生産量が日本一だったそうです。明治元年(1868)には日本初の官営鉱山となり、日本各地に開発された鉱山は生野を参考にして発展しました。

この播但地域で、江戸幕末から明治時代にかけて、日本の近代化を推し進める一大プロジェクトが行われました。産出された鉱石を運搬するための日本初の高速産業道路「生野鉱山寮馬車道」を造り、稼働させるという前代未聞の大工事。通称「銀の馬車道」。ネーミングがロマンチック。

全長49キロの鉱石運搬専用道路は、生野鉱山から飾磨津しかまつ物揚場(現在の姫路港)まで続き、今でいう高速道路のような役割でした。明治時代の人たちもびっくりだったでしょうね。沿道の町は物流の中継点として賑わったそうです。
今、「銀の馬車道」の大部分は県道や国道になっています。

西洋の最新技術で作られた馬車道。

◆かつて栄えた鉱山町と坑道を訪ねる

見どころはいろいろあるのですが、まず「銀を産出した生野鉱山とその町並み」です。明延より観光施設っぽく整備されている生野鉱山の坑内を見学したら、少し下った所にある生野の町を散策。鉱山町ならではの特徴が見られたり、土産店やカフェもあります。

生野の町を散策していると出会う風景。石垣の所に鉱石運搬用の鉄道が敷かれていました。

生野からさらに山の中に入っていくと、私が一番お勧めしたい神子畑みこばた選鉱場跡と明延あけのべ鉱山があります。
山の中に忽然と現れる神子畑選鉱場跡では、専用電車で運ばれてきた明延鉱山の鉱石が24時間稼働で選り分けられていました。遺構の規模の大きさに驚きます。
明治42年(1909)にすず鉱脈が発見され、昭和62年(1987)まで稼働していた明延鉱山では、70種類もの鉱石が採れていました。その一帯、最盛期には約4000人が暮らした鉱山町で、映画館や劇場、スーパーマーケット、公衆浴場など、当時、最先端の施設が山の中に広がっていました(今は一部の施設のみ残っています)。日本の鉱山の多くは昭和48年頃までに閉山したので、明延鉱山には全国から鉱員が集まって来ました。

明延鉱山の坑内には、鉱員を運んだエレベーターや今にも動き出しそうな削岩機などが当時のまま残されていて、迫力満点。
明治、大正、昭和初期のニッポンの底力を感じます。

現在も三菱マテリアル株式会社・生野事業所が操業中


JRの情報誌に日曜坑道見学会(予約不要)のお知らせを見つけました。

2023年11月5日までの日曜日

明延鉱山のサイトにも見学会の説明がありました☟

「日曜坑道見学会」実施日以外は、必ず3日前までの予約が必要です。
また、概ね10名を超えるグループの場合は、必ず予約してください。

と書いてあるのでご注意ください。

私ももう一度行きたいのですが、交通手段が・・・
取材の時はJR姫路駅でレンタカーを借りて「銀の馬車道」沿いに各地を訪ねました。最寄駅からバスも出ているようですが、本数が少ないので、時間が制約されますね。あちこち回るなら車です。

こんなツアーもあったんですね~
行きたい人、結構いると思うんですけど。もっとツアーすればいいのに。

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駆け足のご紹介でした。
そういえば、黒澤明監督の作品で知られる往年の名優・志村喬しむらたかしさんは、お父さんが生野鉱山の技師だったので、鉱山職員社宅で生まれ、育ったとか。社宅は生野に保存され、記念館になっています。
というような話題などもあり、楽しめました。

最新情報はサイトでご確認ください。写真もきれいです。

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次の2カ所についてはまた。
【徳島県】
藍のふるさと 阿波
〜日本中を染め上げた至高の青を訪ねて〜

https://japan-heritage.bunka.go.jp/ja/stories/story081/index.html
藍染めの青は「ジャパンブルー」と呼ばれ、海外でも人気。日本各地や海外で古くから続く染色法ですが、植物の藍を栽培・加工し、蒅(すくも)と呼ばれる染料を作っているのは徳島県と北海道の一部などに限られています。


【奈良県】
森に育まれ,森を育んだ人々の暮らしとこころ
~美林連なる造林発祥の地“吉野”~
 
https://japan-heritage.bunka.go.jp/ja/stories/story031/
奈良県の大峰奥駈道(おおみねおくがけみち)は山深い修験道の聖域。大自然の祈りのパワーをひしひしと感じます。聖域の中心地・吉野にある金峯山寺(きんぶせんじ)のご本尊は青く、大きく、荘厳で、圧巻でした。



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