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無痛分娩と自然分娩

こんにちは、助産師Suiです。

産院選びをする際に自然分娩か無痛分娩にするか‥とても悩まれる方も多いと思います。

恐らく私も助産師でなければ‥

「陣痛ってすごく痛いって聞くし、友達もすごいしんどかったって言ってた。自分には耐えきれないはず!無理!!!痛みを軽減できるなら無痛がいいな。安全だから日本全国こんなに無痛分娩も普及しているんだろうし。無痛にしたいな~」

と考えるのは当然かなと思います。

実際に自然分娩オンリーの病院だけでなく、無痛分娩も自然分娩も対応している病院にも勤務し、患者さんの声でちょこちょこ頂くのは「(無痛も自然分娩も)想像していたのと違った」という意見です。

臨月間際でバースプランを確認する際にも「無痛か自然で悩んでいる」という声も耳にします。

出産という大きなイベントは人生で数回しか経験できないもの、悩むのも当然です。

むしろお産に対して真剣に向かい合っていらっしゃるからこそ悩まれている証拠です。

「まだ決めれないの?」とご自身を追い込む必要も焦ることもありません。

しかし、自然分娩と無痛分娩それぞれのメリット・デメリットを知る機会も少ない現状があるということも病院で働いていると痛感します。

実際に助産師外来で無痛分娩か自然分娩どっちにするか悩んでいる妊婦さんとお話することも多いですが、それぞれのメリット・デメリットについてお話すると・・・

「Suiさんの話を聞くまでは漠然と無痛分娩にしようと思ってたけど、1番優先したいものが何か考えることができた。自然分娩でトライしてみようかな」

「無痛分娩で亡くなった方の話も聞いたから無痛はやめようと思ったけど、無痛分娩も前向きに考えたい」

こんなお声を頂くことも少なくありません。

そしてこのお話をするときに私は決して「あなたには無痛が良い」「自然分娩が合う」などと発言することはありません。

出産方法をどっちにするか選択するのは妊婦さんだからです。

改めてメリット、デメリットという面からもこれら2つの分娩方法の違いを知り、ご自身のイメージや価値観、理想に沿う出産ができることの道案内ができればと思います。



・自然分娩のメリット・デメリット

まずは自然分娩のメリットから見ていきましょう。

上記のようなものが挙げられます。
一方、どのようなデメリットが考えられるか、こちらも見ていきましょう。

上記のようなものが挙げられます。

メリット・デメリットについて、細かく見ていきましょう。


<自然分娩のメリット>


・分娩第1期、体勢の自由もある

 (分娩第1期:陣痛がきてから子宮口が10cmまで全開大するまでの間)

→モニター(赤ちゃんの心拍と陣痛計)をつけているため完全に自由ではないですが、分娩台やベッドの上で四つん這いやあぐらをかいたり、踏み台昇降をしたり、病棟内を歩き回ったりシャワー浴ができたりと動くことができます(これは産院により出来る範囲が異なりますので、分娩を予定している産院に確認しましょう。

赤ちゃんの下がり具合によっても痛みの部位は変わってきて、どんどん強くなってきます。自分が楽に感じる姿勢で過ごせたり、痛みが軽減できる姿勢で過ごせることは分娩期の過ごし方としては重要です。

なぜ重要かというと、お産を進ませるためには産婦さん自身が適宜姿勢を変えたり動いた方がずっと寝た体勢で過ごすよりも良いのです。

例えばトイレに行くのは膀胱にたまっている尿を出すことで赤ちゃんの下降を促すだけではなく「歩く、座る、立つ」という動きが基本的な動きが必要です。
この日常的な動作はお産中も積極的にとりたい動きです。

また、自然分娩の産婦さんには「その時その時で楽な姿勢は変わるので、色んな姿勢を試してみましょう」と提案して一緒に模索します。

また、「立ったりまたは歩行、動くこと」と「横になることや仰向け」との比較では、「立ったりまたは歩行、動くこと」の方が分娩第1期の所要時間が1時間22分短縮したという結果もあります1)

実際にそのように積極的に姿勢を変えたり、身体を動かしている方はお産の進行が順調な傾向があります。

私も基本的にずっと動いてました(動けるうちに動く、大事です)
子宮口が4㎝だった時は座った姿勢が良くて横になる方が辛かったけど8-9cmの時はむしろ横になった方が楽だったということもあります。

大体の産院はクッションもあると思うのでクッションを借りて楽なポジショニングを見つけるのも良いでしょう。

この姿勢に関しては話すと長くなるため、いつか別の記事で取り上げたいと思います。

・歩行ができる

→産院にもよりますが子宮口が1~4,5cmの場合などモニターを装着していない時期にお産の進行を促進するために歩行してもOKな産院もあります。
歩行ができることでトイレに自力でも行けます。

歩行する自分でトイレをする、これらは何気ない日常動作ですがお産を進ませる上ではとても大事な動きです。

ただし無痛分娩や誘発分娩、リスクがある産婦さんや赤ちゃん等 赤ちゃんと産婦さんの状況からみてモニターを継続的に確認する必要がある場合は歩けません。

・無痛分娩よりも分娩所要時間は少ない

→分娩第2期(子宮口全開大~赤ちゃんが出生するまで)は無痛分娩よりも自然分娩の方が早いという結果はあります。

思いっきりいきむことができることは自然分娩の最大の長所です。

肛門に差し迫っている便(下痢)があって、もう今すぐにトイレに行きたい!踏ん張りたい!あんな感じです。

・無痛分娩よりも鉗子・吸引分娩のリスクが低い

→自然分娩の場合、産婦さん自身のいきみも強いため共圧陣痛(陣痛+いきみの2つの力が合わさったもの)で赤ちゃんが下がってきやすいので、鉗子や吸引分娩を用いずに出生するケースが多いです(産婦さんの状態や赤ちゃんの状況からすぐにでも出産させた方がいい場合はこの限りではありません)鉗子分娩・吸引分娩は赤ちゃんの頭にカップをはめたり、鉗子を嵌める必要があります。

そのため、お傷ができたり(殆どが残らない傷・跡です)頭に血腫ができた関係で黄疸が出やすかったりすることもあります。

吸引・鉗子分娩も1回で成功すれば良いのですが、複数回行うことで赤ちゃんの状態が悪くなることも懸念されます

また鉗子・吸引分娩が必要な場合、会陰切開をされるケースも多いです。
赤ちゃんの下降状態にもよりますが、会陰裂傷だけでなく膣壁も裂傷することも。

結果、出産時の出血が増えたり縫う時間が長くなることもあります。

・分娩第2期になってからは思いっきりいきめる

いきみたいのにいきめないのが辛かったという産婦さんも多くいます。
子宮口10cm開大したらようやくいきめる時期!

いきみに意識が集中できる分いきめない時期よりも辛くなかったという声は多いです。

イメージとしては胃腸炎で強い下痢なのにトイレに行くなと言われているような状態です(非常に残酷)

そして私自身、この「いきみ」が思いっきりできるから自然分娩を選んだといっても過言ではありません。

・硬膜穿刺に関連した合併症のリスクがない


・飲食はとれる。

→基本的に飲食は摂取できるので余裕がある時にしっかり摂取しましょう!


・フリースタイル分娩ができる(一部の産院に限られる)

→一般的には生まれる間際の体勢が仰向けがスタンダードです。
しかしフリースタイル分娩にも対応している産院の場合は横向きや四つん這い、立った体勢など選ぶことができます。

無痛分娩の場合はフリースタイル分娩はできないです。

「こんな風にお産をしたい」という産婦さんの気持ちに寄り添い、医師や助産師がサポートさせていただきます。

フリースタイル出産では痛みを逃しやすい体勢をとることで、できるだけいきまずに赤ちゃんのペースでお産を進めます。

そのため、会陰がしっかりと伸びるため会陰裂傷がなかったり会陰裂傷が軽度だったりします。

ただし母児の状況によってはフリースタイル分娩ができないこともあります(赤ちゃんを早く出産させた方が良い場合など)


<自然分娩のデメリット>


・分娩中は基本的につらい

→個人差が大きい部分ですが平均的に5-6cmからは深呼吸しないと痛みを逃せなくなる方が殆どで陣痛がきている間は苦悶の表情になってきます。
正直、私も辛かったです・・・

しかし出産が終わるとエンドルフィンというホルモンが分泌されて陣痛の痛みを忘れさせてくれます‥(辛かったという記憶は鮮明に残りますが痛みの記憶は薄らぐのです)


・痛みに対しパニックや恐怖に陥り、過呼吸になることがある

→陣痛が「怖い」「不安」などの思いが強くなりすぎてしまうと恐怖が勝ち、落ち着いて深呼吸ができず過呼吸になることもあります。

スタッフをすぐにナースコールで呼びつけてください‥!
自分ひとりで呼吸を整えることは困難です!


・無痛分娩のメリット・デメリット

まずは無痛分娩のメリットを挙げていきましょう。



続いて、デメリットを挙げてみましょう。

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