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優しい抜け道に甘えたっていいと思う。

「僕の講義はサボってもいい。
その代わり他の先生の講義はちゃんと出なさい。」

大学を辞めようと思っていた3年生の終わり。
4年生の授業の履修登録締切まえに、
その先生に、自分の授業を履修するように言われた。

私が大学を辞めようと思っていたのはずっと前からで
それまで授業にはほとんど出ていなかったし、
当然、単位も全然取れていなかった。

私の通っていた大学は、
後期入試でギリギリ合格した、全く思い入れのない大学だった。
学ぶ内容にも興味がなく、友人はアルバイト先でたくさんできたし
学校に行く理由が見つけられずにいた。

そんな時に言われた先生の言葉。
「僕の講義はサボっても、何とかしてあげるから。」

その後、言われた通り先生の講義は取れるだけとり、
月〜金の1限〜5限まで、必要単位取得に向けて
他の先生の授業も含め、ぎっしり履修登録した。

とはいえ、そんなハードな時間割をこなせるわけもなく、
甘えに甘えて、その先生の講義はサボれるだけサボった。
卒論も、コピペだらけのものを締切ギリギリに提出した。

それでも、先生はちゃんと単位をくれた。

真面目に授業を受けさせる、課題に取り組ませる、
そういう方向からの更生の方法ではなかったけれど、
それまで卒業単位の半分ほどしか取得していなかったのに
4年生の一年間で残りの全てを取得し、
私が無事に卒業できたのは、紛れもなく先生のおかげだ。

大学を卒業したからって、それを活かせるか、
その後なんてきっと私次第だし、
辞めていく学生が1人いたところで、
先生にとっては何の影響もなかったはずなのに、
甘い甘い手を差し伸べてくれた。

人は無意識に、がんじがらめの檻の中にいることがある。
自分の不甲斐なさや、前を向いている者への劣等感。
そういうものの自覚によって、
気がつけば、身動きが取れなくなっている。

そんな時は、こうあるべきだということがどうしてもできない。
だから、優しい抜け道に甘えてそこから脱することも
方法の一つとしてあっても良いと思う。

自分でも知らない間にそんな場所で、
もがいていたわたしを先生は見つけ、
抜け道を差し出してくれていたのだ。

世の中、正攻法だけが正解ではない。
そんなことを教えてくれたように思う。
そんな優しい甘さに、私は救われた。

先生、ありがとう。

#忘れられない先生


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