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2020年4月に観た映画で面白かったやつ5本

※敬称略

2020年4月に観た23本の映画の中から特筆したい5本を選んで感想などだらだら書いてこうと思います。あまりにも有名な作品は外してます。ホラー多め。

あまりネタバレはしないように心がけますが、作品が伝えたいことだったりある程度のあらすじだったりなど、余計な情報は遮断して観たいという人は読むのはお控えください。


グエムル 漢江の怪物 (2006)

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『パラサイト 半地下の家族』で第92回アカデミー賞で外国語作品としては初となる作品賞に輝いた功績でも記憶に新しいポン・ジュノ監督によるモンスター・パニック映画。突如現れた怪物に娘を攫われた父親が家族とともに娘を取り返そうとする話。

韓国映画の特色としてジャンルの枠にとらわれないことが挙げられますが、この『グエムル』も例外ではありません。モンスターが生まれた背景に化学物質の河川流出問題があったり攫われた娘を救うために奔走する主人公家族を強制隔離しようとする政府VS市民の構図だったりが、様々な社会問題を浮き彫りにするポン・ジュノ監督ならではの持ち味となってただのパニック映画ではない感慨を与えてくれます。
怪物を巡る韓国社会の情勢とアメリカ政府の傲慢さ、そして一貫して家族愛を描いているのが特徴で、ポン・ジュノ監督は本作以外でも『母なる証明』や『パラサイト 半地下の家族』でも家族愛を描いています。これは虐げられる立場にある社会的弱者が抵抗する手段として家族の存在を重視していると見ることもできるでしょう。娘を奪還する目的は一貫して絶対的なものとして描かれていますし、父親に追随する形で他の家族も各々のやり方で怪物を追い詰めていきます。
怪物だけではなく、政府まで相手にした攻防戦は手に汗握るものとなっていてどこに重きを置いて観たらいいのかわからないほどにおもしろい。映像のクオリティの高さに定評のある韓国映画なので心にクる描写もありますが、ぜひ観てみることをオススメします。


残穢 住んではいけない部屋 (2015)

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小野不由美による小説『残穢』を原作とするホラー映画。実話系ホラー作家が自分の部屋で奇妙な現象を経験した大学生とその謎を解明する話。中村義洋監督は『ゴールデンスランバー』や『チーム・バチスタの栄光』など小説原作のものを多く手掛けています。

おそらくこの映画を観た人のほとんどが和室の部屋が怖くなることでしょう。日本のホラー映画独特の湿っぽい雰囲気を醸しながらも、「なぜこの部屋で怪異が起こるのか?」を追求していくミステリー要素もあるのが本作の特徴で、Whyを追っていくと新たな事実が芋づる式で出てくるのが面白い。謎が解明できたと思ったら別の怪異が現れて、推理を見直さなきゃいけない……その連関の果てに現れる事実はどれだけ時を重ねても鎮まらない怨念となって現代の自分たちに呪いとして降りかかる、というのが妙なリアリティがあって背筋がゾクっとなります。


タクシードライバー (1976)

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マーティン・スコセッシ監督とロバート・デ・ニーロのタッグで描かれるドラマ映画。退役した軍人がタクシードライバーとして再出発する話。ある意味戦争映画と言えるかもしれません。

ある一人の男の物語なのですが、現代人の孤独を端的に表現した作品です。仕事も思うようにいかない、惚れた女性にもフラれる(初デートでポルノ映画はどうやったってアカン)、どうやってもうまくいかない人生をニューヨークの街並みとともに外連味あふれる映像で描き切っています。昼と夜でまったく異なる様相を見せるニューヨークの街並みだけでも一見の価値あり。成功と退廃という二項対立を同じ街で描き切るのはさすがスコセッシ監督と言わざるを得ません。特に主人公がタクシードライバーとして主に仕事へ繰り出す夜のニューヨークは排水溝から立ち昇るスモークすら街並みを美しく魅せる舞台装置として働いていて、焦燥に駆られる一人の男の心情をジャジーなBGMと共に表現しきっています。

冒頭で"現代人の孤独"と称したのは、今作が「無敵の人」を描いた作品だからです。秋葉原や新幹線内の事件などのたびたび世間を震撼させる事件は、何も失うものがない、いわゆる社会的制裁を加えられても痛くも痒くもない「無敵の人」が引き起こしたものとして社会問題になっていますが、この『タクシードライバー』ではそんな社会性が欠如しているにも関わらず日常生活にはかろうじて溶け込めているという潜在的な危うさを持った男の物語が主題に置かれています。鏡に向かってひとりごちるシーンは末恐ろしさを感じるほど。
そんな男の心情を反映してか、先ほども述べたニューヨークの街並みが主観的な映像として描かれているような感覚を覚えます。男の目を通した周りの景色がそのまま辛気臭いにおいとなって画面越しから伝わってきそうです。4DXだったらどんなにおいが来るのかなと想像してしまう。
そして特筆したいのは若き日のジョディ・フォスターがキュートすぎること!若干13歳でスレた街娼の役を見事に演じ切っています。


グリーン・インフェルノ (2013)

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『食人族』(1980)を原案としたイーライ・ロス監督によるホラー映画。学生活動家たちが飛行機事故により食人族の領地へ足を踏み入れてしまう話。直接的なグロ描写でたびたび俎上に乗る作品です。
かなり身構えて観たのですが、意外とグロ描写の場面はそんなにありません。ですが一つ一つのインパクトがエッグいので苦手な方は観ないほうが身のためです。

タイトルを直訳すれば「緑の地獄」。その名の通り未開のジャングル内で描かれる異文化民族との攻防が手に汗握ります。食人民族をモンスターに見立てたパニック映画とも見ることができるかもしれません。
フライヤーからでもわかるとおり、部族たちが赤いボディペイントをしているんですよね。これが周囲の木々の緑と合わさって奇妙なコントラストを為していて、否が応にもこれから激ヤバなことが起こるぞと不安感を煽ってきます。

ただ、この映画は単純に残虐的なものを描くのではなくて、様々な要素を孕んだ社会性のあるものとなっています。
食人を行う未開の部族たちは、ぱっと見は同じ人間の姿をしているのにその理解できない行為のせいで異形の存在のように見えてしまいます。そんな彼らを一言で"バケモノ"と断定することは簡単です。しかし、彼らにとってはそれがスタンダード。普通のことなのです。そこに他者がどう思うかなど関係ない、彼らなりの常識があるのです。
それはダイバーシティの普遍化が叫ばれて久しい昨今の社会情勢にも通じてきます。他者への理解、価値観の許容、アイデンティティの尊重。そんなミニマルな関係性に置き換えられる事由がこの映画では描かれています。とても直接的にね。そのため、食人をグロテスクだ野蛮だと決めつけること自体がナンセンスに見えてきてしまう。「これが彼らの文化です。それを否定する理由などありません」とお題目を目の前に突き付けられます。しかし、これだけで終わってしまうと自分とはただの相容れない存在を描くのみですが、そこであのオチですよ。異文化間の交流まで描き、決して断絶を描かなかったところにこの映画の肝があります。
その他にも懲悪要素(これはスプラッター映画ではお馴染み)だったり同調圧力の異様さなどが合わさり、ショッキングな描写以上に観る者の心へ投げかけてくる何かがあります。


ゲット・アウト (2017)

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黒人男性が交際相手である白人女性の実家へ挨拶へ行くことに端を発するホラー映画。監督は2019年に封切りされた『アス』でも話題をさらった、アリ・アスターと並んでホラー映画界の新鋭として名高いジョーダン・ピール。

黒人と白人という根深き差別問題を描きながら、最終的にはただの差別に留まらない予想外の展開になる、というエンタメとしても社会ドラマとしても一級品の作品です。
昨今、ジェンダーやセクシャルマイノリティへの偏見をなくそうという声が至るところで上がっており、やっと時代のターニングポイントが来たかと思っているのですが、この『ゲット・アウト』に関しては差別/被差別の関係性を逆手にとった、いわば"さらに根深き問題"をテーマに盛り込んでいるのが凄い。
冷静に考えれば「いやあり得ないでしょ」となることでも、潜在的レイシストの問題点はそれが絶対的正義であるかのように差別対象を断罪するところにあるので、作中の白人家庭のような行為に及んでしまうことが絶対にないと言い切れない。私は差別主義者じゃないよという人でも、日常生活においてある特定の事象にバイアスがかかっていない人など皆無に等しいので、特定の職業全体をイメージだけで決めつけたり容姿だけで人を判断してしまう。それが行き過ぎると、今現在、勇気を出して声を上げている人たちですら気づかないような、潜在的差別が罷り通ってしまう危険な世の中になってしまいます。

そんな差別意識にグッと切り込んだ映画ですが、そんな深いテーマを内包しながらも不安感を煽るBGMとカメラワークや狂気に満ちた白人家庭(特に家政婦の顔ドアップは怖すぎる!)などがホラーとしてちゃんと成立しているので、社会派映画として気負いして観なくても大丈夫。元々この監督はコメディアンとしての経験もあるので、プロットがブラックな笑いを基調としたコントっぽいんですよね。なので完全エンタメとしても見られるのが素晴らしい。


【2020年4月に観た映画】
ビーン
パシフィック・リム
インクレディブル・ハルク
グエムル 漢江の怪物
タクシードライバー
残穢 住んではいけない部屋
アイ・フィール・プリティ! 人生最高のハプニング
回路
スパイダーマン
スパイダーマン2
スパイダーマン3
スタンド・バイ・ミー
ハンコック
トータル・リコール
アバウト・タイム ~愛おしい時間について~
バック・トゥ・ザ・フューチャー
バック・トゥ・ザ・フューチャーPART2
バック・トゥ・ザ・フューチャーPART3
グリーン・インフェルノ
クリーピー 偽りの隣人
シャッターアイランド
ゲット・アウト
女神は二度微笑む

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