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東京生まれ東京育ちの私が好きな「東京」の曲

タイトルに「東京」が入ってる曲は名曲が多い。
私は東京生まれ東京育ちだ。それでも「東京」の曲は胸に響く。故郷はここなのに、なぜか寂しくてやるせない気持ちになる。
くるりや銀杏BOYZやきのこ帝国の曲の良さは、私が言うまでもないことだろう。
なのでここではもう少し知られてない(といっても音楽好きにとってはメジャーな曲ばかりだろう)「東京」の曲を紹介したいと思う。

東京/wacci

wacciは数年前に「別の人の彼女になったよ」、通称「別カノ」がバズり、12月には初めての有観客武道館ライブも決まっている。
私がwacciを知ったのは2016年。その頃は名前を知ってるだけで曲はあまり知らなかった。
wacciの曲を全部聴いてみて、私はこの「東京」という曲がとても好きになった。何度聴いても良さが薄れない。
作詞作曲はギターボーカルの橋口洋平さん。東京都青梅市出身。
橋口さんは渋谷の建物から、街を見下ろしながら作ったと言う。
ここに出てくる男の子と女の子は恋人同士なのか友達なのかわからないけど、支えあってるのにも関わらず、お互いがどうしようもなく独りに感じる。

ねぇ
どこかで出会って もう忘れた人達へ
僕が消えたらどんな気持ちになりますか?
驚いて 頷いて 数分後には元通り
悲しいけれど 僕もおそらく同じです

去年、有名な俳優さんが他界した。私はそのニュースが出たとき、職場の休憩室にいた。一人で座ってると、後ろの方から若い女の子たちが「え!〇〇死んじゃったって!」「嘘!?」「ショック!」と騒いでるのが聞こえてきて、私も携帯でネットニュースを見てその事実を知った。
その10分後には休憩が終わりでオフィスに戻ったのだが、さっきまでショックと騒いでた子たちは、まったく関係のない世界一どうでもいいようなくだらない話をしてゲラゲラ笑ってた。
私は憤りをじっと隠した。そのとき、私はこの歌詞を思い出した。
この歌詞の中では寂しくて辛いことがあっても「頑張ろうよ」とか「負けないで」など前向きな励ましの言葉はかけず、ただ寄り添って孤独を分かち合ってるように感じる。
ひとりぼっちでいるよりも人混みの中にいる方が孤独を感じる、それを上手く表してる名曲だと思う。
「別カノ」よりも何倍も好きな曲だ。

東京にて/ヒグチアイ

ヒグチアイさんは、香川県生まれ長野県育ち。
この曲は今度映画で公開される「ボクたちはみんな大人になれなかった」の予告編で流れている。
この映画の内容自体はほとんど90年代のサブカルチャーなどを交えた恋愛映画のようだが、歳を重ねた主人公のシーンも出てくるようだ。

渋谷も変わっていくね
オリンピックがひかえているから
張りぼての元気などを纏って
サラリーマンが肩をぶつける
ライブハウスができてはつぶれて
名前が変わってまた戻って
解散したバンドは友だちじゃないけど
わたしのこと 歌ってた

90年代のシーンではオザケンの曲がメインになってそうだが、予告編でこの曲を使ったのは上の歌詞のようにまさに今の東京を描いていて、今この映画が公開される意味が詰まってると感じる。
私はラジオを毎日聴くのだが、この曲は一時ラジオ局でプッシュされていて、よくCM中に流れていたように思う。だからサビくらいは知っていた。
この映画は主人公が私と同い歳で同じような趣味ということもあり注目してたので、ヒグチアイさんという歌手の曲を聴くきっかけになった。今しか書けない東京の曲だと思う。


東京絶景/吉澤嘉代子

吉澤嘉代子さんは埼玉県生まれ。
19歳の吉澤嘉代子さんが見つめた日常の風景を歌っている。
私はずっと彼女のことを天才だと思っている。歌手になるべきして生まれてきた人だと思う。逆に歌手にならなければどうなってしまっていたんだろうとも思う。
歌詞の紡ぎ方、曲の物語性、唯一無二の歌声には魂が震える。
この曲も上京してきたばかりの東京のことを歌っているが、とにかく歌詞が一つ一つうつくしすぎる。

東京はうつくしい 終わりのない欲望
むせるまで笑ったって 跡形もない昨日

歌詞はうつくしいだけでなく、東京のリアルをちゃんと描いている。
「むせるまで笑ったって 跡形もない」というのは、まさに東京を表してるなと思う。都会では物だけではなく感情さえすごいスピードで消費されていく。

私は東京で育ったから車の免許を持ってない。家族も誰一人持ってない。それで不便がないからだ。
映画館もライブハウスもクラブも美術館も劇場も、遠くても片道1時間あれば行ける。
広い駐車場のあるコンビニやイオンも、ほとんど見たことがない。
高校卒業したくらいから、友達と遊ぶのはだいたい渋谷か原宿だった。あの頃は裏原が流行ってたな。たまに新宿や下北にも行った。
20代半ばではよく渋谷のライブハウスに行った。神奈川にも出やすかったので、川崎や横浜やみなとみらいでも遊んだ。職場もだいたいその辺り。
何も不便がない。ここから出てほかの土地に住むことも考えられない。
しかし愛着があるのか?と聞かれたらよくわからない。ずっと育ってきた土地から離れることが想像できないだけかもしれない。
だけど一人一人が干渉し合わない街だなと思う。キラキラしてる面がある一方、とてもドライな街だ。それは楽でもあるのだけれど、とても乾いた街だなと思う。
この孤独感が、私が東京をモチーフとした曲に胸を打たれるゆえんなのかもしれない。私は自分のことを孤独だと思ってるし、家族がいようと友達がいようと恋人がいようと子どもがいようと、人間は平等に孤独という哲学を持ってるからだ。

そして今回紹介した3曲は、晴れた天気の良い東京を想像できない。どれも雨だったり曇りだったり、はたまた昼ではなく夜のシュチュエーションだったり。
やはり東京には明るさより、灰色でどんよりした空気が似合うと思う。
それが東京のうつくしさなのかもしれない。

あなたのたいせつな時間を使って見ていただき、ありがとうございます◡̈ ⋆* 私のnoteがあなたの心にやわらかく触れてくれたら嬉しいです𓂃𓈒𓏸