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ブラチスラバ世界絵本原画展2022-2023「絵本でひらく アジアの扉」-①うみだす

ブラチスラバ世界絵本原画展2022-2023
「絵本でひらく アジアの扉」
以下、BIB展と略します。

BIBでは「うみだす」「そだてる」「とどける」「ひろがる」の
4つを軸に展示が構成され、
出版社、書店、美術館、作家自身の取り組みが紹介されていました。

今回のわたしの目線

実際のBIBは世界各国から出展された絵本が展示・受賞されていますが、
今回は展示の軸となっている「日本と韓国」に注目して
感想や所感を残しておきたいと思います。

まずは自分の立ち位置ですが

絵本の世界を勉強中!
イラストレーターで絵を描いているといっても
絵本の世界は全くベツモノ。

今は色々な絵本に触れながら自分でも制作をおこなっているところです。(作家仲間でもあり絵本作家として活躍されているぬまのうまきさんと、意見交換しながら、いろんなことを教わりながら)

韓国が好き
共著で出版した本(イラスト映えBOOK)を韓国の出版社さんが刊行してくださったことをきっかけに、韓国の出版事情や、絵本の世界に興味をもつようになりました。

昨年末、弾丸で渡韓。

ソウルにある国立中央博物館から見た南山と南山タワー


冬の韓国を一日中、散歩したり、本屋さんや博物館などを巡って一気に韓国への興味が加速。
ろくに韓国語をしゃべれない自分に、出会う方みんなが親切にしてくださったことで、韓国がとても好きになりました。


BIB展で私が感じた日本と韓国の絵本の違い

前置きはこのへんで
まずは、展示にあわせて「うみだす」というテーマで私も感想を残しますね。

私が一番印象的だったのは、
日本と韓国の「絵本」の捉え方や成り立ちの違いでした。

歴史と伝統のある日本の絵本

日本の絵本の歴史は、大正期以来100年以上の歩みがあり、
中でも絵本黄金期と呼ばれる1970年台の作品は今も重版されて
世代を越えて多くの子供たちに読み継がれています。


例えば、
・『おふろでちゃぷちゃぷ』 文:松谷みよ子 絵:いわさきちひろ
 ⇨わたしもボロボロになるまで読みました!

・『てぶくろをかいに』 文:新美南吉絵 絵:若山 憲定

・『モチモチの木』 作:斉藤 隆介 絵:滝平 二郎
 ⇨小学生の時、クラスのブームになって図書室の本が順番待ちになっていました!

・『しろくまちゃんのほっとけーき』 作:わかやま けん

・『からすのパンやさん』 作・絵:かこ さとし

・『ねずみくんのチョッキ』 作:なかえ よしを 絵:上野 紀子

・『はじめてのおつかい』 作:筒井 頼子 絵:林 明子
 ⇨大人になってからも大好きなドキドキする気持ちで読んでしまう定番の一冊!

あげたらキリがありませんが、
皆さんも読んだことがある!という絵本が1冊はあるのではないでしょうか?
今も書店に必ずといっていいほど並んでいるような本ばかりです。


日本の絵本は古い歴史から伝統的に受け継がれているようなものがあって、
ストーリーの展開がしっかり在り、
誰が読んでもほっとするような「安心感」を感じるものが多いように感じます。

そうした中で近年は、子供だけをターゲットにしていない芸術性に注目した絵本というのが作られるようになってきたような印象を私は持っています。

表現方法としての韓国の絵本


一方韓国は、初の絵本が出版されたのは1989年のこと。
1988年のソウルオリンピックの頃に海外の絵本が流入されたことがきっかけで、国内の絵本も発展してきたのだそうです。

溢れ出してくるクリエイティビティ


展示されていた作品からは絵本という媒体が、
クリエイターの「表現方法」として捉えられていることを強く感じました。

抽象表現、ピクトグラムなどの表現、
それから環境問題、人間を見つめる観葉植物の目線など、
どこか社会を冷静に見つめたような作品が多く、そこには作者の痛烈な批判や芯のある意志の強さのようなものが滲み出ているようでした。

ひとつ象徴的な作品をあげてみます。
コ・ジョンスンさんの「63日」という作品。
家族として受け入れられるペットの犬が、人間の欲望を満たすために量産されている「もの」として表現されています。

胸をえぐられるような衝撃がありました。

韓国旅行をした時に、どのガイド本にも書いてあったことですが、
韓国という街も人も、とても変化が激しいのだそうです。

新しくできたお店が1〜2年でなくなることも当たり前。
そのことを、チャレンジ精神のある人が多く、挑戦してだめならまたチャレンジしようという前向きな意識を持っている人が多いのだと解説している本もありました。

絵本の世界にも、このチャレンジ精神のようなものが強くでているかもしれません。

表現として社会問題をとりあげる絵本があるのも納得だなと感じますし、
今後きっと韓国の社会変化にともなって、絵本もどんどん変化していくんじゃないのかなと思いました。
これから刊行される絵本にもますます目を向けていきたくなります。

こんなことを言いつつ、感じつつも

昔から日本にだってチャレンジングな絵本はたくさんあるし、
韓国にだって、ほっとできる絵本はたくさんあります。

ただ、この展示作品の中からは、歴史や成り立ちの違いを感じざるをえなかったです。

日本のエリアを見た後の感覚と、韓国のエリアを見た後の感覚は
違う展示を見にいったのかなと思うくらい違いました。


余談ですが、私が絵や物語を描こうとするたびに悩むのは
「今この瞬間を生きている人に、ちゃんと届ける価値があるんだろうか」
と、いうこと。

時に尻込みしてしまうことがあるんです。

今回の展示を見て、まさに「普遍性」と「現在、今まさに届くか」
のような両極を感じて
改めて、私が本当に届けたいことってなんだろう。と考えました。

私がいる制作の大海原は
「自分は本当に何を届けたいの?」という
内観の大海原でもあるんだろうと思います。


話がそれましたが、いったん記事はこの辺りで。
次回も、この展示にちなんだお話しを続けますね。

やまぐちまりこ


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