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特急「ひたち」に乗って、15年越しの夢が叶いました【後編】

↑前編はこちら


出雲旅行の帰りに羽田まで飛行機に乗り、上野から仙台まで新幹線に乗るつもりが、長年の憧れだった特急列車に出くわしてしまい、1時間40分で帰れる新幹線をキャンセルして4時間半の旅を突然決行してしまった私です。


大学生の時、乗りたかったけど色々あってどうしても乗れなかった特急「スーパーひたち」


その後、東日本大震災でいったん廃止になったり、私自身も子どもが生まれたりして、もう乗れることなんてないんじゃないかと諦めていたのですが、


チャンスって突然やってくるものですね。


ちなみに座席は、新幹線よりどうやっても安いのでグリーン車にしました。



というわけで、今回は後編です。


みんな仙台まで行くんじゃないの?


水戸駅を過ぎると、「ひたち」は茨城県内の主要駅に次々と停車していきます。


その途中で、なんと私の隣に座っていた男性が降りていきました。


その方は駅弁っぽいものを持っていたので、私はてっきり車内で食べながらのんびり行くのだと思いました。


そしたら違ったから、拍子抜けしてしまいました。


しかし隣の方が降りていったことで、私は自分の足の前に置いていた大量の荷物をようやく荷台に乗せることができました。


実は急いで列車に乗り込み、車内も混雑していたため、窮屈な思いをして自分の前に荷物を置いているしかなかったのです。


それをようやく片付けて広々と座ることができ、一気に快適になりました。


ちなみに、4時間以上も列車に乗り続けなければならないのに、夕飯を買う余裕もなかったわけですが、


実は出雲に一緒に行った友達から、「家で余ってた」というお菓子をもらっていたのです!!


私はこれを少しずつ食べながら凌ぐことにしました。


まさか、これがこんな形で役に立つとは友達も思わなかったはずです(笑)


最初は飲まず食わずの覚悟もしていましたが、いわきまで車内販売があったので、飲み物も確保できました。


人がだんだん減っていく…


列車はだんだん、福島に近づいていきます。


すると、同じ車両にいた人がいろんな駅で降り始めました。


そして、新しく乗ってくる人はいませんでした。


上野で「ひたち」に乗った時、車内はほぼ満席だったのですが…


いわきを過ぎると、私の車両にはほとんど人がいなくなってしまいました。



そして何回目かにトイレに立った時、私以外誰もこの車両にいないということに気づきました。


これには驚きました…


というか、この時ようやく私は気づいたのです。


「ひたち」に乗っているのは、鉄道好きの人だけではないということに。


私は「鉄道が好きだから」という気持ちだけでひたちに乗ることを夢見ていたけど、ひたちを生活の足として使っている人もたくさんいるのだと。


単純に上野から仙台に行くんだったら、新幹線に乗ればいいのです。


どれも、当たり前すぎることです。


なんだか突然、私は自分がとんでもないことをしているように思えてきてしまいました。

外は真っ暗、同じ車両には誰もいない。


そして激しく暇です。


実は旅行に行く前、「古い音楽プレイヤーがあったはず」と家の中を探したのですが見つけられず、持ってくることができませんでした。


それは結局、出発した日の夜に息子のおもちゃ箱の付近から発見されたらしいのですが…

(そういえば、息子がリモコン類にハマっていた頃に家の中を持ち歩いていたのを見た)



私はスマホの通信量や充電が気になるし、今は電車移動などもほとんどしないので、外出中にスマホで音楽を聴く習慣はありません。


でもやはり、いざという時の暇つぶしアイテムとして音楽を聴けるツールを整えておけばよかったと後悔しました。



まさに「後悔先に立たず」


やがて列車は、広野・富岡・双葉など、原発事故の影響で特に復旧が難しかったエリアの駅に停車していきます。

外の様子が真っ暗で、全くわからないのが残念です。

各駅舎や、駅前の駐車場などは新しく整備されているように見えました。



この10年で、街並みがどのくらい変わったのかわからないけど、やっぱり震災前に一度乗って、窓からの景色を目に焼き付けておきたかったなと思いました。


今、ようやく「ひたち」に乗る夢は叶って、それはすごく幸せなことだけど、私が最初に憧れた頃と何もかもが同じではありません。


もう二度と見ることのできない景色が、約15年前(私が大学生だった頃)にはたくさんあったはずなのです。


過去に戻れないことを、こんなにも悔しいと思うことがあるでしょうか?


だけど、まさかあんな震災が起きるなんて誰も思っていなかったのも確かです。

(※一部の預言者とか研究者を除く)


もし、大学生の自分に何か伝えられるとしたら、「とにかくスーパーひたちに乗れ」と言いたいです。


今あるものが、明日も当たり前に存在しているなんて思うな、とも。


だからやっぱり、どんなことでも「今だ」と思ったら、そのチャンスを逃してはならないのだと思います。


鉄道好きには忍耐が必要だ

列車は原ノ町や相馬など、福島の中でもだいぶ宮城に近い方に差し掛かってきました。


それでも時計を見ると、まだ仙台まで1時間くらいかかります。



そういえば高校の時、そのあたりから毎日通っているという子が同じクラスにいましたが、毎朝5時半とか6時の電車に乗ってきていると言っていた気がします…


だから、まぁなんとか行き来できるけれども、すごく近いわけではないのです。


私のメンタルは限界でした。

暇すぎるし、「旅行が終わって寂しい」とか「日常に戻りたくない」とか、暗いことばかり考えてしまう。


あらためて、鉄道好きって忍耐力が必要だと思いました。


よく、運行初日やラストランの車両があると、早朝でも夜中でも、どんなに寒くてもホームで待っている撮り鉄の方々がいますが、あれはやっぱり相当大変なことです。


たった4時間半の列車の旅を「暇だ、まだ全然着かねぇ」って感じてしまうようでは、やはり鉄道好きは簡単に名乗れないと思いました。


「好き」を追い求めるのは、大変なことを大変だと思わないからできるのです。


暇すぎて限界になった私は列車内のWi-Fiを利用し(実はあった)、スマホのradikoアプリでラジオを聴き始めました。



出雲から約1,000キロ…ようやく宮城県へ!!


そうしていると、まもなく相馬駅に到着するというアナウンスがかかりました。


そして、

「相馬の次は亘理、亘理に停まります」と。


ついに宮城県に入れる!!!


私は「亘理」という地名を聞いて、思わず小さく拍手をしてしまいました。


相馬駅を出発してからは、スマホの地図アプリを開いて現在地を追いました。


県境を越えるのは、一瞬でした。


宮城県に帰ってきたー!!!


とはいえ、ここからもまだ30分近くあるのですが、自分の住む県に入れたというだけで、かなり希望が湧きました。



亘理、岩沼と、最後の停車駅を過ぎて、次はようやく仙台駅です。


少しずつ、市街地が増えて窓の外が明るくなってきました。


そしてようやく、仙台市内の見慣れた景色が見えてきました。


私は荷物をもう少しコンパクトにできる気がしたので、荷台からバッグを下ろし、お土産などを整理しました。


そうしていると、ついに「ひたち」は仙台駅に到着しました。


同じ車両には誰もいないし、「この車両は車庫に入ります」とアナウンスがあったので、私は不安になり、列車が完全に停車する前に通路へ向かいました。


すると隣の車両からも、降りようとする人が来ました。


よかった…他にも人がいた…!!


そして列車を降りると、列車全体から降りてきた人が何十人もいて安心しました。


みんな、どこから乗ってきたのかはわからないけど…(笑)


ありがとう、ひたち19号


ホームを歩き始めると、「ああ、終わってしまった…」という寂しさと、「上野から仙台まで全部乗れたー!」という達成感が入り混じりました。



夢を叶えた36歳の自分と、大学生の自分

できることなら、明るい時に乗って景色もしっかり見たかった。


はっきり言って、乗っている途中で飽きてしまった大きな原因はそれです。


けど、とにかく私は特急「ひたち」に乗れた!!


常磐線を、全線通過した!!


今回は、その事実ができただけで良しとしようと思いました。


ていうか、一度はもう叶わないと思った夢です。

なんとありがたいことなのでしょう。

本当に最高の気分です。


ちなみに翌日、「ひたち」から見える街並みを見たくて動画を検索したら、ひたちという特急列車の存在意義について非常に詳しく解説しているものがありました。↓



震災からの復興はもちろんのこと、東北新幹線や東北本線のバイパス的な役割、新幹線が遠い沿岸部と首都圏をつなぐ重要な役割も担っていることなど…


実際に「ひたち」に乗ったあとに見ると、感動で涙が出る内容でした(ほんとに)


「ひたち」にまた乗れるチャンスはあるのかなー。


いつか、2回目のチャンスができたらうれしいけど、もし今後チャンスに恵まれなくても今回の経験があるから、それだけでも私は生きていけます(大げさ)。


やっぱり、一回でも経験があるのとないのとでは、全く違います。


今回の出雲旅行(←そもそも遠出した目的はこれです!!笑)と同様、特急「ひたち」に乗れた思い出も、大事にしようと思います。


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