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うまくいけばラッキー精神

高校の同級生がちょうど1年前に関東に引っ越しをしてきた。特別仲が良かったわけではないが、同じグループで時々飲む友達の1人だった。彼女も私と同じように特定のグループに属さないで、1人行動も平気、海外にも留学経験がありと何かと共通点はあった。そして私は彼女のクールな雰囲気が好きだった。人付き合いが上手だなって思う1人である。見た目もクールビューティーでエキゾチック、よくモテた。

そんな彼女は腐れ縁で高校から付き合っていた年下の彼と結婚したのはもう8~9年前になる。自由を好み、海外にも飛び出していた彼女にしては早い決断だったなと、結婚を選択したことに私は当時少し驚いていた。腐れ縁で嫁いだ相手は一人っ子の跡取り息子だった。2人は自由を愛すると言う意味では似ていたが、あまりに自由過ぎると夫婦でいる意味はないのではと思うようなことが多くあった。でも元旦那の浮気疑惑があると、身を乗り出していくなど、愛情はあったのだと思う。しかし、元旦那の会社を手伝うことになり、型にはめられた生活が続くようになった。追い打ちをかけるように姑との関係も悪化し、子供ができないプレッシャーやストレスにさらされ、昨年、ついに離婚した。私は驚かなかった。子供がいない、自由な2人が夫婦でいる意味とはと思うぐらいだったから。彼女は彼女でやりがいを感じる趣味を見つけていたことも大きい。

それでも彼女の結婚生活を近くで見て、彼女の性格を知っている私からすれば、よく耐えたなと思う。元旦那の会社のために資格まで取り、彼女なりに会社を支えようとしていた。彼女は多くは語らないが、まっすぐでとても根は真面目だった。それに甘えていた元旦那も言い分はもちろんあるだろうけど。あまり人とつるむのが好きではない印象の彼女だが、なぜか離婚を考えている話、悩んでいる話など、私に最初にしてくれたのは今でも少し不思議だ。でも振り返れば、留学する際も私に相談してきていたし、なんだかんだ彼女とは縁のある付き合いなのだと改めて思う。

そんな彼女が関東に引っ越しをしてきて、家探しや仕事探しの際は私の家に泊ったりと、また改めて彼女との時間が増えた。色々な場所に出かけたり、その他の友達と遊んだりすることも増え、その度に、やっぱり彼女の人付き合いは勉強になるなと思っていた。必要以上に言わない。人のことも滅多に言わない。かと言って、何か面白い話題があるわけではないのだけど、人の話、話題はさりげなくふってくる。あまり自分のことを言わないので、腹の底では何を想ってるか分からない節はあるが、私は実はそういう人に惹かれるところはある。自分があまりに単純で感情も素直に出てしまうタイプだからだろうか。

冒頭で述べた通り、よくモテる。かわいくあざといではなく、どこかクールでミステリアスでモテる感じだ。彼女といると必ずと言って男性に話しかけられたりするし、結婚していた時期はもちろん浮いた話はないが(知らないだけかもしれないが笑)、こちらに出てきて1年も経たないうちに、やはり浮いた話は2~3個すぐに出てきた。私には到底かなわないスキルだ。男性への対応も、さすがなのだ。良いポジションを自然と確立している。必要最低限に近づかないし、何なら冷たくない?というほど言い寄ってくる男性には冷たい。嫌な冷たさじゃない。そこが男の人はくすぐられるんじゃなかろうかと思う。でも楽しいことが大好きな彼女だから、その一面を見せればもういちころだろう。と、これが私の勝手な彼女の分析だ。そう、彼女が落とせない男はいない!なんて思う程、彼女の生き方や人の接し方は私にはとてもクールに映っていた。

しかし、その概念が少し覆される話を聞くことになった。先週末、2人で私の家で遅くまで飲んだ。彼女は酒豪だ。意外にも1人よりも誰かといることを好むことをここ最近になって知ったのだけど。そんな彼女が、今進行中の恋愛で悩んでいた。わ、悩むこともあるのか!と不謹慎ながらも新鮮な気持ちになってしまった。話はこうだ。

今年4月に飲み会の場で一緒になった人を軽く紹介された人がいた。同じ歳で同じく離婚したばかりの人がいて、何となく境遇も似ているしと親近感を覚えたそうだ。そこからご飯に誘われ2人でご飯に。そして、その彼はマンションを購入しているらしく、2度目ぐらいで彼の家で飲む流れになったそうだ。もちろん、泊りで。しかし、そこで男女の関係にはならなかった。彼女は期待していただけに、腑に落ちなかったそうだ。そう、彼女は性に対してはとてもオープンであった。セックスも相性が大事だから、まずは試したいと言うほど、その辺りもモテる要素のひとつかも知れないが、内心はとても肉食女子であった。

3度目でキスをされたが、その先へ進むことはなかった。4度目、ついにその流れになったが、彼女が生理だったため断念。彼女は思わず、前にチャンスあったのになんで今日なの~とタイミングの悪さを嘆いたらしい。その時、その相手はまだ早いかなと思ってと言ったそうだ。何歳やねん!と彼女は突っ込みたくなるほど、そのじれったさに悶々していた。そして5度目もセックスには至らなかったのだと嘆いていた。それは彼女がソファーで寝てしまったという失態もあるのだけども、イチャイチャはあるらしいのに、その先がないという。一体、これは何なんだと悶々を通り越して諦めモードになっていた。そして彼からの連絡の頻度は少ないと言う。さらに4月に出会って最初にご飯を行ってからもう11月がこようとしているが、まだ5回しか会えてない事実もじわじわと彼女に追い打ちをかけている様子であった。

そして私は詳しく彼のことを聞いた。彼は帰国子女で有名な大手企業に勤めている。聞くからに忙しいだろうなと分かる職業だ。国内外を飛び回っている。前の奥さんには浮気されて離婚、まだ1年も経っていない。一緒に住むはずだったマンションの部屋はとてもオシャレな仕上がりで、家具にもこだわりがあるのが分かり、かわいい猫もいる。寝室もシンプルな作りで間接照明。毎朝、コーヒーを豆から挽いて入れてくれて、野菜スムージーまで作ってくれるとのこと。彼は朝から外国のニュース記事を読んでいるそうだ。時間があればヨガにも行くという。そうか、そっちか。それはもう完全に意識高い系ハイスペック男子ではないか。

私の中のモテ女子の彼女が煮え切らない様子になり、もう何も考えず放置するとどこか投げやり気味になっている。セフレの1~2人も、付き合うのはね~とクールに交わす彼女が、もしかしたら他に女の子もいるんじゃないかとぼやいているではないか。あのクールでミステリアスな彼女をそこまでさせるには、それ相当の人なのだろうとは分かる。ただのチャラ男とか、かっこいいとかそんなのではない。ただのハイスペック男子でもない。プラス、意識高い系ときているのだ。一緒にいる時の彼が彼女に対する言動も、それが遊びだとしてもいいと思えるぐらい紳士で優しい。かつ、セックスや体の関係を無理やり持たなくてもいいと、余裕すら感じさせている。そりゃモテ女子も悶々するわな!!と私も一緒になって頭を抱えてしまった。

でも仕事柄、本当に忙しいと思うし、次のステップに行くには早いと思っているという部分では、ある意味で大事にしているのでは?と思うのだ。ただ、どれだけ忙しくても連絡ぐらいはできるやろという彼女の一言は重かった。2週間ぐらい連絡がないそうだ。それまではたぶんそこまで空いてなかったはず…?とそこらへんは曖昧なのは、彼女も別に連絡がマメなタイプではないから。そこもモテ女子の余裕があった…が、彼に対しては違うのだ…乙女心とは複雑ではある。だが、連絡がマメでも二股してるやつは現にいる。聞いてもない予定をベラベラ入れるのも逆に疑わしい。私の前の彼がそうだったのだから。だから本当にもう正解はないからこそ、悶々するのだ。

そして彼女は恋愛や好きとかってもうだいぶ前すぎて忘れた…と続けてきた。結婚、冷めた結婚生活、そして離婚を経験し、もう一度付き合うとか、好きですというのがまだ彼女の中でも取り戻せていないところはあるようだ。それはもしかしたら彼も同じではないかなぁなんて思いつつ、結婚もしたことない、かつ恋愛偏差値が低い私に最もらしいアドバイスなんてできるわけもなかったが…ただひとつ言えることだけ言った。

「私はうまくいけばラッキー!ぐらいでいんじゃないかなと思っている。」

実際、今の私もそんな気持ちだからだ。今やりとりしている彼とのことも。この歳になればこっちが必死で追いかけるのも、精神的にも、あとは本当に体力的にも(笑)きつくなってくるのだ。

彼女はその言葉に、いや、ほんまそれやな~ってすごく納得してくれた。そうだ、そう、腹八分目ぐらいでいこうではないかと。私たちはやるべきこと、生きていくための仕事やら付き合いが他にも色々向き合うべきことがたくさんあるのだ。100%恋愛、1人の人に注ぎ込む余裕は、物理的になくなっているのが現実だ。同じ地方から出て一人暮らしのしんどさも分かち合いながらしみじみと語った。しかしやっぱり彼女のことが好きだなと思ったのが、その悶々、悩み方もクールなのだ。なんていうか、私にはないクールさがあるのだ。例えばひどい仕打ちをされたとしても、悲劇のヒロインのように嘆き悲しむのではない、しっとりと、こんなことがあってさ~ってどこか自分で過去を消化しながら影を見せた言い方をする。見せ方と言うか、プレゼン力というか、その人の持つスタイルなのか。私はこの彼女のスタイルが好きだなと改めて思った。悩んでいるのに不謹慎なのは承知の上で。

だけど、そんな彼女も乙女であったのだ。煮え切らない関係、好きってなんだろうという恋愛に悩まされる乙女だった。やはりどんな女性もみんな乙女だ。だからこそ女性は魅力的だとも思った。クールすぎても、計算高くあざとい女子も、乙女だなと思える女性は女性らしくて良い。

男女平等やフェミニストな運動が昨今は盛んであるが、男性勝りな女性に私はあまり魅力は感じない。男性に負けるか勝つかと考える時点でナンセンスだ。生物学的に争う相手ではないだろうと私は思っている。だから、女性は女性にしかない強みや乙女な部分があるからこそ魅力的だなと思える方が良い。

夜中まで話をして結論は、彼との関係はとりあえず深く考えず、うまくいけばラッキーぐらいでいこうと最後には笑っていた。彼女にもやるべきことがあり、大事にしているやりたいこともある。きっとまた彼女も運命の人に巡り合うはずだ。その意識高い系のハイスペック男子かどうかはさておき。乙女である以上、きっとまた巡り合う気がしている。めぐり逢うべきだ。

私も私で、とりあえず今は目の前にあることを大事にしていこうと思えた。私も乙女である部分を忘れないように。時に悶々とし、切なくなり、そしてときめいたり、一喜一憂しながらいこう。

そう、うまくいけばラッキー精神で。

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