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泉屋のクッキー缶で、幼い私と大人の私が踊りだす

 記憶にあるかぎり初めて、泉屋東京店のクッキーを食した。百貨店の地下でよくお見かけする浮き輪のクッキーたちは、固いらしいという認識しかなく、少し気になる存在ではあるものの買ってみようとは思わずにいた。

 だが今回、西武・そごうのおかいものクマさんの30周年を記念して、泉屋東京店とコラボレーションした「おかいものクマクッキーズ」なるクッキー缶が登場。おかいものクマが大好きな私は、昔からそごうのディスプレイを眺めては、ぬいぐるみひとつもらえないかなと考えている。発売初日の開店直後に出向き、意気揚々と(缶ではあるが)クマさんを連れて帰ってきた。

 そんなことから思いがけず食す機会がやってきた泉屋のクッキー。夕方、1、2枚食べてみるかと缶を開ける。各クッキーの写真と名前が載っている小さな紙には、味の説明は書かれていない。とりあえず泉屋といえばの浮き輪(正式にはリングターツ)からと、皿にも出さずに齧ってみる。さくっとした食感に少々面食らった。あれ、固くない。想像よりも軽やかなのである。そして美味しい。なんというかシンプルに粉のおやつを食べたいという欲求を満たしてくれる。しかも、表面にちょこんと4つのっかったドライフルーツが、単調になりそうなクッキーのよいアクセントになっている。なんか色のついた砂糖なんだろうと思っていたが、とんだ失礼である。思いがけずおしゃれな味にとまどう。もしかして、ものすごく美味しいクッキーたちなんじゃないか…
 あわててホームページのクッキー紹介を開き、説明文を読みつつ、BSロックをつまむ。えー美味しい。あまり甘くない大人のお洒落な味がする。そうなると次々に試したくなる。クリームフィンガー。これが私的にかなりヒット。ジンジャーをほんのり効かせたおいしさという説明に幼い私が警戒するが、大人の私は、甘すぎずでもクッキーを食べたいという欲求を満たしてくれる、なんて素晴らしい、こんなクッキーがあるなんてと歓喜である。そしてチョコレートクッキーとピーナッツクッキーは、素朴なサクッとしたクッキーであり、これには幼い私も喜んでいる。
 ここまで夢中で食べてきたが、そろそろやめようと正気を取り戻し、最後に可愛らしい、ビターカフェオレとイチゴオレで締めるか…とつまむと、こちらは今までのクッキーとはまた違い、ホロッとしたお味。なんというか見た目や味に今風のクッキー要素がある。締めにふさわしい、クッキーを食べたという満足感。こういうクッキーもあるのか。泉屋恐るべしである。

 結局、缶の3分の1ほど食い尽くしてしまう。美味しかった。子供の頃から、こういうの素朴な味が好きだったなあと思い出した。そういえばマリービスケットも大好きだった。だが小さい頃にこのクッキーを出されたら、また違った感想だったと思う。子供の頃は、ドライフルーツやシナモン、ジンジャーなどは苦手だったのだ。だから、この缶丸ごと全部を美味しく食べられるのも、幼い私と大人の私が結びついているお陰である。これ美味しいね、これも美味しいね、と言い合えたような、2人が手を取り合ってダンスしているような感覚であった。

 まだ食べていない種類のクッキーもあるため、それはまたのお楽しみにとっておこう。次はきちんと飲み物を用意して、ホームページを参照しつつ、お皿に出して味わいたい。名前も素敵なのだ。というかもう一缶買いたい。まだ売っているだろうか。世の中は美味しいもので溢れており、まだ味わっていないものもたくさんあることを改めて実感した。なんという幸せだろう。

 だが今回は食べ過ぎた。夕食を美味しく味わうためにも、大人の私よ、一緒に踊っていないでストップをかけてくれ。

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