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私だけの特捜最前線→95「殺人伝言板・それぞれのクリスマス!~人間ドラマを最後に束ねていく塙脚本の妙」

※このコラムはネタバレがあります。

今回紹介する「殺人伝言板・それぞれのクリスマス!」は、特捜最前線のメインライターの一人で、独特の人間ドラマを描く塙五郎氏の脚本。塙ワールド全開とも言えるような味のある作品です。

クリスマスイブの殺人事件

クリスマスイブの夜、デートに向かう滝刑事(桜木健一)の車に若い女が飛び込もうとしました。女は訳ありのようで、目を離せなくなった滝は、結局一晩中、女に付き合わされてしまうのです。

同じ頃、新宿駅地下道で中年男性が何者かに撲殺される事件が発生。近くには伝言板があり、事件前後に伝言板に書き込みをした人が目撃している可能性があるとして、特命課は伝言を一つずつ調べていきます。

一方、滝は女から「実は私もデートをすっぽかしたの」と打ち明けられます。女は前夜知り合ったトラック運転手と待ち合わせをしていました。滝は「きっと連絡が来るから」と、女を家に帰したのでした。

特命課の捜査で、伝言板の近くで若い男が誰かを待っていたことが判明。その男が書いたと思われる伝言を見て「今日も現れる可能性がある」とみた特命課は、現場周辺の張り込みを開始します。

そこに現れたのは、滝を連れまわした女・・・そして、女がデートをすっぽかしたトラック運転手こそが犯人だったのです。しかも運転手は、桜井刑事(藤岡弘、)が逮捕したことがあった青年だったとは・・・

青年は、酔ってぶつかってきた中年男性に女へのプレゼント用のケーキを落とされ、罵られたためにカッとなって撲殺してしまった・・・というのが、ドラマの本筋部分にあたるストーリーです。

「小ネタ」満載のストーリー

このドラマは本筋以外のところに小さなサイドストーリーがたくさん散りばめられています。それがゴチャゴチャにならず、一本の線としてクライマックスへとつながっていくのが塙脚本の妙と言えるでしょう。

桜井刑事と青年との関係では、青年が祖母と二人暮らしという設定とし、更生の道を歩き始めていた青年が再び犯罪を犯してしまい、桜井は新たな悲しみを抱えるであろう祖母へのやるせない思いを表情に浮かべています。

目撃者探しでも「小ネタ」を入れています。近くでおもちゃを売っていた男性は、橘刑事(本郷功次郎)らが事情を聞きに自宅を訪ねたら、孫を道連れに自宅に放火して無理心中を図ろうとしていました。

紅林刑事(横光克彦)が張り込んでいた連れ込み旅館にいた男は、警察手帳を見せた途端、逃げ出したので取り押さえられます。実は伝言板を使って、覚せい剤の取り引きをしていたのでした。

事件発覚前、自宅にいた津上刑事(荒木しげる)は、酔って帰ってきた妹に説教をし、妹と喧嘩になってしまいます。捜査中もつい、妹のことが気がかりで仕方なく、なかなか身が入りません。

唯一、ドラマで「滑稽役」となったのが吉野刑事(誠直也)。目撃者だと言い張る浮浪者に絡まれ、目撃者探しでは「メリーさん」という名の男性?にビックリさせられ・・・という感じです(笑)

特命課刑事たちの人間ドラマ

人間ドラマという点では、津上刑事と妹だけでなく、橘刑事や神代課長(二谷英明)の家族にも触れています。ドラマの本筋とは直接関係ありませんが、とても印象に残る場面が続きました。

事件発覚前に吉野刑事とスナックにいた橘は、手に息子の名前が刻まれた万年筆を持っていました。クリスマスプレゼントとして送ったものの、息子から送り返されてしまったのです。

この回想シーンで、橘と息子・信一とのすれ違いを描いた「死体番号 044の男!」の一場面が流れました。橘が信一と和解できるようになるのは、まだまだ先の話になります。

神代課長の回想・・・それは愛娘の夏子でした。神代は夏子からプレゼントをもらった思い出とともに、目の前で夏子が凶弾に倒れた場面も思い浮かべてしまいます。これも回想シーンで流されました。

津上刑事と妹では、事件解決後に笑顔で電話をするシーンが描かれました。実はこのドラマの3作後に津上刑事殉職編が放送されています。それを考えると、非常にせつないシーンを見せつけられた気がします。

そしてドラマで一応主役だった滝刑事。実は滝がすっぽかしたデートの相手とは、何とカンコこと高杉婦警(関谷ますみ)だったのです。ただし、下心があった滝とは違い、カンコは「美味しいもの目当て」でしたが。

事件を知らずに翌日の朝出勤した滝に対し、カンコはブンむくれで冷たい態度を取ります。しかも神代から「私も美味しいものを食べさせてもらいたいな」と言われる始末・・・カンコにチクられてしまったのでした(笑)


ドラマのBGMで使われていたのは、アリスの名曲「帰らざる日々」でした。「バイバイバイバイ・マイラブ」のメロディーが人間模様とマッチしていて、ドラマを一層印象深いものにしています。

ラストは街中でクリスマスツリーが片付けられ、特命課ではカンコが鏡餅を備えるシーン・・・辛い思い出ばかりのクリスマスよバイバイ、笑顔で新しい年を迎えましょうという演出。珍しく「後味がよかった」ですね。


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noteでは連載コラム、エッセイをほぼ毎日書いています。フリーランスのライターとして活動中ですが、お仕事が・・・ご支援よろしくお願いいたします!