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「レディ・オア・ノット」ネタバレあらすじ感想

0.基本情報

2019年の作品

監督: マット・ベティネッリ=オルピン、タイラー・ジレット

時間:1時間35分


1,予告編


2,あらすじ

大富豪一族に嫁ぐことになり、幸せの絶頂にいたグレース。だが、結婚式の日の夜、彼女はファミリーとして認めてもらうための伝統儀式に参加することになる――それは、一族総出で行われる“かくれんぼ”だった。夜明けまで逃げ続けるように告げられ戸惑う彼女だったが、まもなくゲームがスタート。やがて、彼女は全員が武器を手に自分の命を狙っていることを知るのだった…。一体何が起こっているのか!?絶体絶命の状況の中、恐怖に怯えながらも戦うことを決意し立ち上がるグレース。果たして、彼女の運命は?そして一族に隠された恐ろしい秘密とは!?



3,感想(ネタバレ有)

ジャンルとしてはおそらくホラー。だが、恐怖を煽る演出以外の充実度が高かったように感じた。


サバイバルやグレース目線のスリルなど楽しい要素はいくつかあると考えられるが、なんと言っても本作は作品を通しての主人公グレースの変化が面白い。彼女が着ていたから話を始めると、冒頭、グレースは結婚式で着るドレスを着ているが、作品を通してドレスが幅の広い華やかなものから普段着に近いものへと変化する。死のかくれんぼが行われていると気づいたときにドレスの裾?を破って走りやすくし、ヒールの高い靴から走りやすい靴へと履き替えた。さらに、子どもに銃で撃たれ、釘?が刺さって広がった傷口を塞ぐために、左の袖を破った。そして、ル・ドマス家から脱出しようとした際にドレスのどこか(背中?)の部分が破れた。脱出のためであり、皮膚が傷つきながらも柵からの脱出を試みていたので、これを意図的なものと私は判断した。そして最後にはドレス全体の色であった白の布が、ル・ドマス家の制約で皆の体がはじけ飛び、血が飛び散ることで赤く染まった。女性は清く清楚な人間というものをアレックスと同時に爆散させたのであろうか。グレースは自分でプリンセスの殻を破り、最後にル・ドマス家の制約が女=プリンセスという概念を破壊するお膳立てをしたのである。


過去からの脱却、それが本作のテーマだろう。


死のサバイバルと行動という観点からみてもそのテーマを感じることができる。はじめ、彼女は死のかくれんぼが行われる中で「逃げる側」であり家族に怯えていたが、サバイバルの中で殺らなければ殺られるという考えが目覚め、対峙した家族と鬼の形相で戦い、殺していく。殺し方も変化しており、中盤までは後ろから銃殺、後ろからキックなど不意打ちを狙っていたが、終盤は正面戦闘が中心になっているように思われる。アレックスが拘束されたこともあり、アレックスに守られる女性から一人で戦う強い女性へと変化していた。作品を通して、怯えて怖がっているような表情から、ありったけの憎しみを込めた本物の殺人犯のような表情に変化しているところからも強い女性像がうかがえる。グレース自身の心の変化を見ても、はじめはアレックスと2人きりと場所でしか喫煙している様子を見せず、新しい家族に嘘までついたグレースが、フィナーレでは駆けつけた警察や消防隊員の前で堂々と喫煙しており、先述した女性は清く清楚な人間というものという考え/捉え方/偏見をたばこと共に灰にしている。

また、しきたりを疑わず信じていた一家を古い人間像や価値観から脱却したグレースが終わらせるというのも、敵と味方の区別が明白で展開的に見事である。作中にて、アレックスに対して家族の一人が「家族と妻どっちが大事なの?」というニュアンスのセリフがったが、これは結婚はどちらかの家族に入るものだという考えが含まれているように思われる。アレックスも結局最後にはダニエルの死を見てグレースを裏切る古い考え方を支持する人間だった。グレースが夜明けまで生き残ることによって爆散させたのは、夫の肉体だけではなく、グレースと結ばれることによって、「家族第一、家族の他の人間がやっていたり、それを許すなら自分もやっていい」というようないきすぎた古い考え方から脱却できそうでできなかった固定観念も含まれていたのである。


終わり方も見事で、古いしきたりや言い伝えを信じ、それに囚われていたル・ドマン家の一族は皮肉にもそのしきたりによって破滅し、グレースはアレックスに婚約指輪を投げつけ離婚宣言をしてアレックスは爆散、名家と婚約を象徴した大豪邸は火に包まれた。名家は大きい豪邸を建てるというのもまた古いしきたりだったりするのだろうか?2人の結婚とそれを取り巻く祝い人たちという環境で始まった物語は、一人と赤の他人達という構図で終わりを迎えた。絵(映像)的に魅力的である。


まとめると本作は、サバイバルを通して女性像が変化しており、それを1時間半という決して長くはない尺のなかで実行している点が素晴らしいと感じた作品だった。


引用/画像元:ディズニー公式

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